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143.目が覚めて

「ん……んぅ?」


「「バニラおばぁちゃん!!」」


 少し経って、バニラおばぁちゃんが目を覚ました。


「あらぁ、レンちゃんにアーネスト君がいるぅ?そっかぁ、まだ夢ねぇ……おやすみなさぁい……」


「ちょ、ちょっと待って!夢の中で更に寝ないで!?」


「これ現実!現実だから!!」


 慌ててアーネストと共に言う。


「レンちゃんまーくら♪」


「おぅっ!?」


 いきなりバニラおばぁちゃんに引き寄せられる。

 む、胸がぁっ!息がぁっ!?


「……蓮華、助けた方が良いのか、そのままの方が良いのか、どっちだ?」


 なんてアーネストが冷静に聞いてくる。


「むぐぅー!!」


「あははっ!レンちゃんくすぐったいわぁ~」


「いや分かんねぇよ」


 という騒動があったんだけど、今はこちらの話を伝え終わった所だ。


「そっかぁ、ネセルちゃんは無事にアーネスト君と契約できたのねぇ」


「「え?」」


「その子、すっごく気分屋だからぁ。アタシの事も気に入ってくれなかったけど、アーネスト君ならって思ったのぉ。大成功ねぇ」


「ちょっと待ってバニラおばぁちゃん。も、もしかして、体奪われたのって……」


「わ・ざ・と♪」


 その言葉に一気に脱力する私達。


「ほらぁ、レンちゃんはソウルイーターを持ってるし、アーネスト君も魔剣欲しいって言ってたじゃなぁい?」


「確かにそう言った事あるけど、覚えててくれたのかバニラおばぁちゃん」


「当たり前じゃなぁい。レンちゃんとアーネスト君は、アタシの孫みたいなものなんだからぁ」


 アーネストが感激してるけど……どう見ても綺麗なお姉さんに、孫って言われるこの違和感が拭えない。


「バニラおばぁちゃん、ネセルはどこで見つけてきたの?」


 そう、純粋に気になった。

 ソウルこと、ソウルイーターは誰も踏み込めないユグドラシル領に封印されていた。

 それだけ人の手に渡らないようにされていたんだ。

 魔剣ってくらいだから、厳重に封印されて……


「街を食べ歩きしてたのを偶々見つけたのぉ。話をしたら、気に入ったら考えるって言うからぁ」


 考えてる途中で言われて、内容が内容だったのでガクっときた。


「なんでそれで体まで貸すんですかね……」


「だってぇ、人型になってるとずっと魔力消費するって言うんですものぉ。それじゃ、アーネスト君と戦う前に魔力が尽きちゃうでしょぉ?」


 それでも人型で食べ歩きしてたのか。

 もしかしてネセルはアホなのか。


"ちょっと!誤解しないでよね!?アタシが食べてたのは、魔力を回復させる為なんだからね!?"


 ああ、そういえば大精霊も食べたら魔力回復するって言ってた気がする。

 そういう事か。


「人型なってるだけで魔力消費すんなら、どっこいどっこいじゃねぇの?」


 なんてアーネストが突っ込む。

 まぁ、食べて回復する方が消費より多いんだろう。


"そうなのよねぇ、むしろ減りのが速いから困ったわ"


 ただのアホでした。


「つーか、自然回復はしねぇの?俺魔力ないから分かんねぇけどさ」


"するわよ。でも、人型に成るってだけでも結構消費するものなのよ、アタシ達魔剣はね"


「そういうもんか」


 成程、だからソウルは人型に成らないのかな。

 どんな姿なのか見てみたい気もするけど、まぁいつか時が来たらでいっか。


「それでバニラおばぁちゃん、経緯は分かったからこの話はもう良いんだけどね。このまま学園に向かっても大丈夫?」


 そう、本来の依頼はバニラおばぁちゃんを学園に連れていく事。

 まさかこんな展開になるなんて予想もしてなかったけど。


「あ!」


 驚いた顔をするバニラおばぁちゃん。

 何かあったのかな?


「ど、どうしたの?」


「荷物、宿に置きっぱなしだわぁ」


「「ネセルー!!」」


 私とアーネストは叫んだ。


"ご、ごめんってば"


 そう謝るネセル。

 はぁ、それじゃまた一度フォルテスに向かわないとだね。

 私とアーネストが歩き出そうとしたら、バニラおばぁちゃんに引き留められる。


「バニラおばぁちゃん?」


「レンちゃん、『ワープ』は使えるんでしょーぅ?」


 あ、忘れてた。


「おい、蓮華」


 いや、そんな呆れた目で見られましても。

 というかアーネストだって忘れてたよな!?


「えっと、フォルテスが見えてきたら使えるよ。『ポータル』もそろそろ練習しないとだね……」


 って言ったら、アーネストはやれやれと言った感じで先を歩き出す。

 バニラおばぁちゃんは微笑みながら、お散歩ねぇなんて言ってる。

 まぁ、こういう日も良いよね。

 そう思いながら、今度は三人で歩く。

 温かい日差しが心地良かった。



-その頃学園では-



「蓮華さんが遅い……ねぇセルシウス、これはアレだよね!?きっと厄介な事に巻き込まれてるよね!?」


「落ち着きなさい。ただ迎えに行くだけでしょう?しかも、まっすぐの街道を」


「そうだけど、あの蓮華さんだよ!?」


 その言葉に、うっ……と言葉を詰まらせるセルシウス。

 なんだかんだで、セルシウスも心配はしているのだ。


「アーネストだって居るんでしょう?」


「アーくんは確かに強いけど、蓮華さんと同じで天然だよ!?」


 その言葉に、更にうっ……と言葉を詰まらせた。

 もはや、アリスティアを引き留める言葉が浮かばなくなってきた。


「えぇと……そ、それじゃ……行きましょうか」


 ついに根負けしてしまうセルシウス。


「そうこなくっちゃ!!」


 嬉しそうにするアリスティアに、セルシウスはつい微笑んでしまう。

 昔、自分達の上位存在であったアリスティア。

 今とは違い大人の姿をしており、神聖さすら感じた彼女が脳裏に浮かぶ。

 セルシウスは、アリスティアを慕っていた。

 それは、今の幼い姿になったアリスティアに対しても変わらない。

 だから、基本的にセルシウスはアリスティアの言う事を強く止められないのだ。

 こうして、アリスティアとセルシウスもフォルテスへと向かう。

 蓮華とアーネストを迎えに行く為に。



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