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136.初めての講師のお仕事(1)

 ショッピングを終えて、また授業の日々がやってくる。

 まぁ、私はそんな中で大名出勤ってわけじゃないけど、朝をのんびり過ごしてから寮を出る。

 で、理事長であるシオンさんに、午後一で魔法と魔術の講師の時間を取りますって伝えた。

 うん、まさかそんなに慌てるとは思わなかったよ。

 なんでも、私の授業を受けたいって教師陣がほとんどで、急遽スケジュールを組みなおしたり、泣いて我慢する先生が居たとか。

 いやその、急に言った私もあれだけど、そこまで楽しみにしてるとは思わなかったというか……。

 話す内容なんて、母さんから教わった事をちょっと簡単に説明するかなってくらいなのに。

 まぁ授業内容聞いてて、無駄が多すぎるって思ってたので、そこら辺の手助けになれば良いかなぁと。

 そうそう、授業内容が魔法と魔術だったので、それを受け持ってた先生方が予定キャンセル組なんだって。

 先生方と、その授業を選択していた生徒達がそのまま私の授業に来る事になるんだそうで。

 今回は私だけじゃなくノルンも居るし、実演とかも簡単そうだ。

 何かあっても、周りが優秀だし、なんとかしてくれるでしょ。

 これぞ人任せってうるさいですよ?

 今はその打ち合わせというか、何を話す予定なのかを皆に伝えてる。


「私と蓮華は魔術使えないから、実演の方は会長とアリシアにしてもらうってのはどう?」


「おー、俺は良いぜ。ってか、俺は参加側だから当ててくれ」


「私も構いませんよ。ちなみに私も参加側の予定ですので、当ててくれて構いません」


「うん、それってサクラってやつですよね……」


 その言葉に笑うアーネストとタカヒロさん。

 二人にはやはり伝わったか。

 他の皆は何を言っているのか分かっていない感じだけど、当たり前だよね。


「授業では一つ一つの属性について、何ができるとかこういう効果があるとかを長々と説明してるんだけど、あれだと全属性のそういった説明するだけで卒業までかかっちゃいそうだからなぁ」


「あー、俺も最初受けてからは休憩時間だったぜ」


「会長、どこで休んでるのかと思えば、授業で寝てたんですか」


「ああ。全部覚えてたしさ、眠いだけなんだよあの授業」


 分かる。

 私も数回受けただけだけど、眠くて仕方なかった。

 子守歌にしか聞こえなかったもん。

 あ、私は寝てないよ念の為。

 一度寝かけた時に、皆が私の方を見てるのをアリス姉さんが教えてくれて、恥ずかしい思いをしたからね。

 先生も注意してこないし、授業中話してるだけで誰も当てないから、寝やすい環境だと思う。

 ふふり、私は当てまくる予定だよ。

 緊張感って大事だよね、いつ当たるかもしれないって考えたら、割と真剣に聞くものだよ。

 誰だって、恥ずかしい思いはしたくないもんね。


「じゃぁ会長、これからはサボって私と仕事を片付けましょうね?」


「なんでだよっ!?それなら授業真面目に聞いてる方がマシだからな!?」


 アーネストが本気で嫌がっている。

 いつも通り私とタカヒロさんが苦笑して……と思ったら、ノルンまで苦笑してる。

 あれ、もしかしてノルンも気づいたのかな。

 アリシアさん、あれから結構攻めてると思うけど、アーネストには効果がなくて、不憫な……。

 ちなみに、私はアーネストに恋愛感情は全くないので、早く誰かと引っ付けと思ってたりする。

 私にとって、アーネストに大切な人が増えるという事は、私にとってもそうなので、歓迎だ。

 家族が増えるって事だからね。

 そして、子供ができたら良いよね。

 母さんや兄さんが取り合う未来が容易く想像できる。

 ちょっと話が飛躍しすぎかな。

 私には子を為す事はできないと最初に聞いているし、まぁ男を好きになるってない気がするんだよね。

 かと言って女性を好きになっても結ばれる事はできないし、私はずっと独りだろうな。

 いや、違うな。

 確かにそういった繋がりはなくても、私には大切な家族がもう居る。

 大切な友達だって居る。

 うん、そう考えたら、全然寂しくないや。


「蓮華さん、急に黙り込んじゃってどうしたの?」


 アリス姉さんが下から覗き込んでくる。

 うぅ、可愛いアリス姉さんにそういう事をされると、未だにドキッとするから困る。

 決してロリペドフィンというわけじゃないよ。

 いやそこまで幼くないけどね、アリス姉さんは。


「ううん、なんでもないよ」


 そう苦笑して言ったら、首を傾げながらも離れてくれる。

 うぅ、そんな仕草も可愛らしいです。


「ま、そういうわけだから、今日は初めだし、そんな難しい所は話さずに、おさらいみたいな感じでサラッと行こうと思うよ」


「おう、楽しみにしてるぜ蓮華、ノルン」


「私は司会進行は蓮華に任せるけどね」


「うわー、丸投げだよノルン」


「ちょっとは手伝うから安心しなさい。アンタのお手並み拝見させて貰うからね」


 軽くプレッシャーをかけてくるノルンに苦笑してしまう。


「蓮華さんとノルンの講師か、俺も参加してみるかな」


 とタカヒロさんが言う。


「え!?タカヒロも来るつもりなの!?」


「そりゃ気になるしな、教え子がちゃんと出来てるか見るのも先生の務めだろ?」


 なんて笑って言うタカヒロさんに、ノルンはうーって唸ってる。

 分かるよ、家族参観だもんね、恥ずかしいよね。

 私やアーネストからしたら、兄さんが見てるのと同じわけだ。

 うわ、そう考えたら凄く恥ずかしいな!

 私とアーネストは同じ事を考えたのか、ノルンの肩に手をポンと置いて頷く。

 ノルンはなんとも言えない表情をして、アリシアさんはなんか苦笑してた。


「教科書とかは使わないつもりだけど、記録媒体とか使った方が良いのかな?」


「ああ、蓮華さんの授業を受けたかった講師陣も居るだろうし、そうしてあげた方が喜ぶだろうけどな……あのマーガリンさんから学んだ内容なんだろ?学園の生徒達以外の魔導士や魔術師達だって喉から手が出るくらい欲しい知識だと思うしな……革命が起こるかもしれんから、受けた人だけの特権にしておくべきだな」


 そういう物なのか。

 でもタカヒロさんがそう言うなら、そうなんだろうな。


「そっか、なら基本内容は残さない方向で行こうかな。でも生徒の皆が自主的にするのは見逃して良いよね?」


「そうだな、あくまで困るのは教師側だけだ。主にこれからのカリキュラムがだけど。多分蓮華さんの教える内容は、数回でこの学園で学ぶ全ての内容を超えちまう気がするしな」


 そう笑って言うタカヒロさんに苦笑する。

 でも、これで皆の実力が上がるのなら、良いと思う。

 魔物は私にとって脅威じゃなかったけど、他の生徒達にとってはやはり、脅威なのだから。

 少しでも身を守る力を身につけてほしいと思う。

 顔見知り程度でも、もう知ってしまった人達が傷つくのは見たくないからね。


「それじゃ、打ち合わせはこれくらいで良いかな。ご飯食べたら、ここにまた集合って事で良い?」


「あー、俺は先に席とっとくわ。じゃないと、前の方の席なんて合戦だろ?」


「それは確かに。会長、早めに行っておいた方が良いかもしれませんね」


「だよな」


 なんて二人が言うけど……。


「最初から一列場所をとっておいたらダメなの……?」


 と言ったんだけど。


「そういうのは無しだ蓮華。皆同じようにお前の授業受けたいんだからな」


「ふふ、そうですね」


 そっか、なら私から言う事はないね。


「それじゃ、アリス姉さんとセルシウス、それにノルンとで集まるだけだから……女子寮にギリギリまで居て良いね」


「そうね、私が蓮華達の部屋に行くわ」


「うん、よろしくねノルン」


「アーネストさん、俺達も一緒に行くか?」


「お、良いね。そうしようぜタカヒロさん」


「ああ」


「えぇー、私と行きましょうよ会長」


「何言ってんだ、お前も行くんだから当たり前だろ」


「そ、そうですよね」


 ……この二人、そういう目で見たら凄く面白いな。

 タカヒロさんがバツの悪そうな顔をしてる。


「あー……アーネストさん、俺はそういや、行く前に用事があってな。アリシアと先に行って席を取っといてもらっても良いか?今度、何か礼はするからさ」


 なんてタカヒロさんがアーネストに言った。

 そっか、アリシアさんと二人にさせてあげようとしたんだね。

 気遣いができる人だなぁ本当に。


「そうなのか?分かったよタカヒロさん。ま、礼なんていらねぇから、授業終わったら話に付き合ってくれよ」


「ああ、分かった」


 そう微笑む二人。

 アリシアさんが唖然としてるけど、何かタカヒロさんに言ってるのが見えた。

 聞こえなかったけど、お礼でも言ったのかなって思ったら、タカヒロさんの顔が青くなった。

 何を言ったんだろう……。


「それじゃ皆、また後でね」


 そう言って、この場は解散する事にした。

 さて、午後からは初の講師のお仕事だし、緊張するな。




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