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135.恋バナ?

 ここは学園寮、ノルンが住む一室。

 最初はノルン一人だったが、今ではアリシアも一緒に住んでいる。


「ねぇアリシア、蓮華達は出かけたみたいだけど、ついていかなくて良かったの?」


「その言葉、そっくりそのままお返ししましょうかノルン?」


「良いのよ私は。こうやってのんびり本を読むのが好きだから」


 ブラックコーヒーを飲みながら、視線を本に戻す。

 口に含んだ瞬間、ゲホゴホとむせているノルンを見て、微笑むアリシア。

 タカヒロが飲んでいるので真似しているのをアリシアは知っているので、何も言わないのだ。


「私は会長から渡された仕事が溜まってるのを、少し片づけないとだから」


 そう言って、机の上に溜まった書類をトントンと整えるアリシア。

 ノルンはそんなアリシアを見て、気になっていた事を聞く事にした。


「ねぇアリシア。アンタは会長の事が好きなのよね。その、何がきっかけだったの?少なくとも、最初から好きだったわけじゃないわよね?」


 その言葉に、苦笑を返すアリシア。


「そうね、最初の印象は凄くぶっ飛んだ人、だったかしら。何をするにも一直線で、する事全部私の予想を超えてたわ。その癖任された事は放り出さずにちゃんと終わらせるんだけどね」


 微笑みながら話すアリシアを、不思議そうに見つめるノルン。

 アリシアは続ける。


「きっかけはあの闘技大会。私は普段、そんなぶっ飛んだ会長しか見てこなかった。何をするにも自信満々で、失敗なんて全然考えてなくて、楽しそうに日々過ごす会長を」


 ノルンもあの時を思い出す。

 そう、イグドラシルに支配されていた時だ。


「蓮華さんを救う為に、なりふり構わずに向かって行った会長。蓮華さんが倒れた時の、あの絶望に染まった会長を見て、良いっ!て思っちゃったの」


「うん、うん?ちょっと待ちなさいよ、前半は同意できるんだけど、後半おかしくない?」


「そう?なんて言うんでしたか……そうそう、ギャップ萌えというやつですよノルン」


 その言葉に唖然とするノルン。


「普段強気で、元気一杯な会長が打ちひしがれる姿……もうですね、キュンと来ちゃったわけですよ」


 ノルンはもはや二の句が継げなかった。


「あぁ、会長に私もこんな風に想われたい、そう思ったのがきっかけでしょうかね」


「そ、そう。アンタの性癖、歪んでるわよね……」


「ふふ、それに打算もあるんですよ?」


 書類をトンと置いて、椅子に座ったまま姿勢をノルンに向けるアリシア。


「打算って何よ」


「それはですね、会長に好かれれば、もれなくロキさんの助力が得られる事です」


「へ?」


「良いですかノルン。ロキさんはこの世界全体で考えても、五指に入るほどの強さの持ち主です。彼を味方にできたら、怖いものなんてなくなります。私が直接力を借りられなくても、会長と相思相愛なら、彼は必ず手を貸してくれる、それが分かったからです」


「んな……」


「それに、会長と親しくなるという事は、蓮華さんともそうなれるという事です。ゆくゆくは家族ですよ?そうなったら、ノルンは私の妹になっちゃいますし、蓮華さんとも姉妹になれますよ?」


「れ、蓮華と姉妹!?」


「ね、良いと思いませんか?それに、権力も財力も言う事なし、むしろこれ以上を望める人なんて居ないでしょう?」


「……アンタ、腹黒すぎるでしょ……」


「ふふ、悪魔ですから」


 そう笑って言うアリシア。

 ノルンは溜息をついた。


「はぁ、まぁ良いけど、傷つけないようにしなさいよね……」


 そう零すノルンに、アリシアは答える。


「ええ、それは大丈夫です。それにねノルン、権力も財力も、私はすでに持ってます。ずっと独り身だって構わない、そう思っていたんですよ、本当に」


「アリシア……」


 その言葉が、決して偽りではない事を、ノルンは感じた。


「だけど、会長と蓮華さんを見て、家族って良いなぁって思ったんです」


「そう、ね……」


 そう同意を返そうとしたノルンに、アリシアから爆弾が投げ返された。


「ノルンだってタカヒロの事好きなんでしょ?」


「ぶふぅっ!!ゲホッゴホッ!んな、なっ!?」


 慌てふためくノルンを見て、微笑むアリシア。


「まぁ、今は単なる親愛の情かもしれないけど」


「そ、そうよ!それに、タカヒロだってそうとしか思ってないわよ!」


 その言葉に妖艶に微笑むアリシア。

 その表情はどこか、アスモデウスに戻ったように見える。


「そうね、今はそうかもしれない。だけど、ノルンが想いを告げたら、変わると思うわよ?」


「うぐっ……」


 言葉に詰まるノルンに、アリシアは続けた。


「ま、私よりは可能性が高いんだから、気が向いたら頑張りなさいノルン。私は応援してるわよ?」


 そう言って、また正面に向き直るアリシア。

 その後ろ姿を見て、ノルンは言う。


「私は、これがまだ恋慕の情か分かんないわ。それに、今のままだって良いって思ってる。アリシアは、違うの?」


「そうね、同じ時を生きれるのなら、それでも良いかもしれない。けれど、会長は多分人間だから……私より先に逝ってしまうでしょう?後悔は、したくないから」


 その言葉に、黙り込むノルン。

 色々な想いが浮かんでは消え、アリシアに言うべき言葉が見つからかった。


「ふふ、しんみりしちゃったわね。大丈夫、時間はまだまだたっぷりあるから、焦る必要はないわ。それに、さっきも言ったけど、ロキさんが会長をそのまま死なせるなんて思えないのよねぇ。あのマーガリンさんもいらっしゃるし……」


「あー……」


 なんて同意をしかけて、つい笑ってしまうノルン。

 いつのまにか、空気は温かいものに変わっていた。


「私は、しばらくは良いわ。今の関係で良い。でもアリシアが会長にアタックするなら、直接何かはしないけど応援はするわよ」


 その言葉に笑うアリシア。


「ありがと。大丈夫、少しづつ好きになってもらうから。誠心誠意尽くすって伝えたもの」


「それ、そこまで深い意味で言ってたの!?」


「いいえ?だけど、思い出は美化されるものだから」


 なんておちゃらけて言うアリシアに、どこまでが本意なのか分からず、頭を悩ませる事になったノルン。

 そうして、考える事をやめて、また読書に没頭する事にした。

 アリシアもまた、アーネストに頼まれている仕事を片付けていく。

 蓮華達が買い物に出かけた同日、彼女達の時間もまた、ゆっくりと流れていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 流石悪魔、考えることが黒い黒い。  でも腹黒な人は大好きなのでアリシアさんもっとアーネストと絡んでくださいww  それにしてもロキさんがこの話を知ったらどうなるんでしょうね。 間違いなく怒…
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