133.学園街・フォルテス(2) ☆
凄くたくさんの中から、これだと思えた物を買った。
どうせなら包装したかったので、そういうのしてくれるサービスセンターみたいな所ないかな?と思ったら、中央にあった。
カレンには情熱の赤っていうか、ルビーのイヤリングを。
アニスには爽やかな青、サファイアのイヤリングを、それぞれ贈る事にした。
「カレンちゃんにアニスちゃん、蓮華さんからプレゼントなんて良いなぁ……」
なんて言うので、ちょっと皆と離れてから、アリス姉さんとセルシウスとついでにアーネストの分。
それから母さんや兄さん、ミレニアにシャルロッテ、あと大精霊の皆の分も色々と買って、ちょっと気恥ずかしいけどノルンの分も買って、アイテムポーチに入れておいた。
包装したら流石にバレるので、そのままなのは許してほしい。
そして皆の所に戻ってから、プレゼントした。
「蓮華さん、何しに離れたのかと思ったら……嬉しいよぅ……。私、これ絶対大切にするからね!」
そう言って、手首の所に早速身に着けるアリス姉さん。
アリス姉さんに贈ったのは、ブレスレット。
綺麗な何の効果もない装飾品なんだけど、壊れないように私の魔力でコーティングしておいた。
まぁ、私の魔力でもアリス姉さんの力にどこまで耐えられるか分からないけれど……。
「ありがとうレンゲ。私の分まで……気を使わせてしまったわね」
そう言いながらも、嬉しそうに身に着けてくれる。
セルシウスに贈ったのはネックレス。
チェーンの色がピンクゴールドで、ダイヤモンドだったから綺麗だったので。
値段?そんなの見てないよ、これに限らず。
「うぉ、俺のまで買ってくれたのか。さんきゅな蓮華」
アーネストにプレゼントしたのは、足首につけるアンクレットだ。
まぁ手首が異様に太い人なら手首でも可能だろうけど……。
これも、そのままだと何の効果もなかったので、私の魔力で以下略。
アリス姉さんと違って、壊れないようにじゃなく、風の加護を付加しておいた。
周りのマナを吸収して、常時発動するパッシヴ型の加護だ。
多分、これから歩くのも楽になるだろう。
あれ、それ自分に付加したいような。
とりあえず、それで私のしたい買い物は終わったので、皆に尋ねる。
「これで私の買いたい物は終わりだけど、皆は何かある?」
って言ったら、三人が顔を見合わせて、言った。
「「「蓮華 (さん)の服!!」」」
「えぇ!?」
「いやだってお前、普段一張羅だし、そうかと思ったらずっと制服だし……」
「だよねアーくん!私は蓮華さんの色んな服着た姿見たい!」
「そうね、レンゲに似合う服はきっとたくさんあるわ。女の子なんだから、もっと着飾りなさい。素材は最高なんだから、何着ても似合うわよ」
なんて三人がまくし立ててくる。
いやその、私は服なんて別になんでも……とか思っていたら、両腕をアリス姉さんとセルシウスにホールドされる。
「アーくん、服売り場は?」
「任せろ、3Fだ」
「それじゃ、行くよー!」
「「おー!」」
なんだこの三人の一体感。
逆らえる雰囲気じゃないので、諦めて連行される私。
そして3Fについた。
うぅ、元の世界でも服なんて兄さんのお古ばっかりだったから、買った事なんてなかった。
それで別に良かったし、服なんてなんでも良かったんだけど……。
「色々あるねぇ……よーし、片っ端から良いの探そう!」
なんてアリス姉さんが言って服を探しに行く。
えっと、服はカード通さなくていいの?と思ったら、服になんかついてる。
「ああ、服は試着いるだろ?だから、買う時にその魔道具が外れるんだ。その魔道具をつけたままこの階から離れようとしたら、滅茶苦茶うるさい音がなって知らせてくれるぜ」
成程ね。
それで、私は試着する事が確定しているんだろうか。
「なぁアーネスト、お前はいかないのか?」
「俺は服とか分かんねぇし。アリスとセルシウスに任せた方が良いだろ」
あぁ、まぁそうだよね。
「はぁ、お前も自分の選んでもらったらどうだ?」
「俺は良いよ。それに、男の服を選ぶよりか、やっぱ女の子のだろ!」
くぅ、全力で同意したいのに、今回対象が自分のせいで素直に同意できない。
「はぁ、今だけはお前が羨ましいアーネスト……」
「ははっ!まぁ諦めるんだな蓮華」
なんて笑ってるアーネスト。
くそぅ、どうにかしてなんかアーネストにも嫌がる事を……あっ!思いついた。
定番のあれを。
「ふっふっふっ……アーネスト、ちょっとこっちについてこい」
「ん?良いけどなんだよ?」
「良いから良いから」
そう言って連れてきた、下着売り場へ。
「……おい蓮華」
「どうしたアーネスト」
「仕返しか?」
「うん」
凄く良い笑顔で言えたと思う。
「お前な!男の俺を女性の下着売り場に連れてくんじゃねぇよ!?」
「私の気持ちのほんの少しでも味合わせてやろうと思って。私はこれ着るんだぞ」
「お前は女の子じゃねぇか!?」
「心は違うんだいっ!!」
そう言い合う私達に、周りからクスクスとした声が聞こえ始める。
「良いわねぇ、彼氏彼女かしら」
「男の子の彼、焦りすぎてて可愛い」
「初心で良いわぁ」
等々。
流石に恥ずかしくなった私達は、元の場所へ戻る事にした。
「すまんアーネスト」
「いや、うん、お前の辛さは分かるけど、俺にはどうしようもねぇからな……」
「うん……分かってるよ」
なんて言いながら元の場所に戻ったら、そこには両手一杯に服を抱えたアリス姉さんと、セルシウスが居た。
「もぅ、どこ行ってたの蓮華さん!」
「ご、ごめん。その、まさかその手に抱えてるの、全部……?」
「もちろん!」
「い」
「「「い?」」」
「嫌だぁぁぁぁっ!!」
私は逃げ出した!
しかし回り込まれてしまった!
「逃がさないよー?蓮華さん!」
んひぃぃぃっ!?
魔物から逃げようとした主人公達が、敵に回り込まれた時ってこんな絶望感を味わっていたんだろうか。
ずりずりと引きずられていく私。
アーネストが腹を抱えて笑ってる、畜生!他人事だと思って!
それからしばらく。
私は、アリス姉さんとセルシウスの着せ替え人形と化した。
つか、れた……。
もうね、体力じゃなくて精神的なものがゴリゴリと削れていくこの感じ。
最終的に、着たの全部買った。
私がじゃないよ念の為。
まぁうん、出所一緒だけどね。
そして、お昼も近くなったので、どこかで食べる事にした。