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12.王都・オーガスト

 ポータルから一瞬で、王都・オーガストの門のすぐ傍の石牌の前に着いた。

 私が向かう王都は、12ある国のうちの3つ。

 オーガスト、フォース、エイランドだ。

 そのうちの1つである、オーガストに来た。

 地図を見て気付いたのだが、世界樹を中心に、時計のように国があった。

 時計の一番上、12の位置がオーガスト。

 1の位置がイングストン、2の位置がツゥエルヴといった具合だ。

 私が行く残りの2つの王都の位置は、フォースが時計で言えば4の位置で、エイランドが8の位置になる。

 アーネストの向かう、オーブの入れ替えの為に行く王都はツゥエルヴ、シックガウン、テンコーガの3つ。

 それぞれシックガウンは6の位置、テンコーガは10の位置にある。

 それとなく地図上で線を引くと、私の行く所が三角形、アーネストの行く所に逆三角形が出来て、六芒星が出来上がる。

 何か意味がありそうだなと思いつつ、まぁ思いつかないので置いておく事にした。

 門番がいるみたいなので、話しかける。


「すいません、レンゲ=フォン=ユグドラシルですが、話は通っていますか?」


 と聞いてみたら。


「はっ!お話は伺っております!どうぞ、こちらへ!」


 と最敬礼をされて案内される。

 関所なのかな?その中でも凄く品の良さそうな部屋へ案内される。


「こちらで少しお待ちください。担当の者を呼びに行かせておりますので!」


「あ、うん、ありがとう」


 そう言ったら、何故か赤面したその人が答える。


「い、いえ!仕事ですので!何かあればすぐにお呼びください!」


 駆け足で出て行ってしまった。

 なんなんだ。

 ソファーがあったので、そこにちょこんと座って待つ事にした。

 お菓子も置いてあるのだが、流石に手をつけるような真似はしない。

 少しして息を切らした女性がきた。

 鎧を着ているから、騎士なのかな?にしてもすっごい美人だ。

 鎧姿なのに、その美しさがまったく損なわれていない。


「お待たせして大変申し訳ありません。私は王国親衛隊・ロイヤルガードの一人、シリウス=ローランドと申します。願わくば、シリウスとお呼びください」


 おいおい、ロイヤルガードって、王様警護する最重要人物だよね?そんな人が一緒に行ってくれるの?

っと、こちらも名乗らないとね。


「えっと、初めまして。私は蓮華、レンゲ=フォン=ユグドラシルです。蓮華と呼んでください。あまり礼儀に明るくないので、ご容赦願えればと思います」


 そう答えたら、優しい笑顔を浮かべて。


「蓮華様は、ロイヤルガードが女性である事を不思議に思われないのですね」


 そう、言われてしまった。

 だけど、別に変な所などあるのだろうか?


「え?だって実力を認められてその地位に成ったんですよね?なら、普通なんじゃないですか?あぁいや、その努力が普通って言ってるわけじゃないですよ?その地位に着くには、凄い努力が必要だったと思います。凄いですよ、頑張ったんですね」


 ちょっと失礼だったろうか。

 頑張ったんですねとか、初対面の人に何が分かるって話だよね。

 その言葉に。


「……ありがとうございます。私は、貴女のような人と知り合えた事を嬉しく思います」


 なんて返してくれた。

 よく分からないけれど、少しは警戒を解いてくれたと思いたい。

 なんせ、これから数日は一緒に旅をする事になる人だし、嫌なムードで居たくないってのが本音だ。


「それじゃ、早速で悪いんですけど、オーブのある場所まで案内して貰っても良いですか?」


「ハッ!我がローランド家の家名に賭けて、貴女様をお守り致します!」


 と最敬礼してくれた。

 なんか固い、もっと気楽にしてほしいと思うのは、ダメなんだろうか。

 まぁいいや、道中仲良くなれるかもしれないからね。



 なんて考えていた時期が私にもありました。

 いやね、この人すっごい気さくだよ。

 少し前の固いとか思ってた私、今のこの人見て同じ事絶対言えないぞ。


「ほらほら蓮華様!あそこに見える木は、魔物が擬態してるんですよ!」


 なんて色々喋りまくってくれる。

 なんというか、姉御な人だった。


「シリウス、魔物なら放っておいて良いの?」


 最初はシリウスさんって呼んだんだけど、呼びすててほしいと言われたのだ。

 なら私も呼びすてて良いと言ったんだけど、聞き入れてもらえなかった。

 なんでだよ。


「大丈夫です。こちらが擬態を見破っていると思ってもいないので、通り過ぎるだけなら何もしてきませんから」


「成程」


「蓮華様が邪魔だと仰るのであれば、今すぐにでも塵にしてきますよ?」


「い、いや良いから!放っておいても無害なら、別に何もしなくていいよ!?」


「ふふ、蓮華様はお優しいのですね」


 なんて微笑んでくれる。

 なんでだ、私の知りあう人達は、なんでこんな個性的なんだ。

 しかも過保護的な面で。


「蓮華様、このオーブの事が終わりましたら、お時間があればで良いのですが、王都をご案内して差し上げたいのですが……」


 と言ってきた。

 何故か分からないけれど、シリウスは私の事を凄く気に入ってくれたみたいだ。

 ホントなんでか分からないんだけど……。


「それは私からもお願いしたいかな。最初の1個目のオーブがどれくらい時間かかるかにもよるんだけど、ね」


「畏まりました。ならば超特急で向かいましょう!」


 そんな事を言ってくれるシリウス。

 いや、でもね。


「シリウス、馬が限界迎えるから、普通で良いよ」


 そう、今私達は馬車で移動している。

 オーブのある地下へ続く道の前までは、馬車で行くのだ。


「そうですね……回復魔法が使えれば、問題ないのですが……回復魔法に適性の無い自分が恨めしいです」


 その言葉に違和感を感じたので、聞いてみる事にした。


「回復魔法って、傷を癒すものじゃないの?なんていうか、体力っていうのかな、スタミナというか……そういうのも治せるの?」


 と。

 だって、ヒールとかは失った血を戻す事は出来ないって聞いた事がある。


「蓮華様の仰っているのは、光属性の治癒回復魔法の事ですね。失った体力を回復させるのは日属性の疲労回復魔法なのです」


 なんと、そんな回復魔法まであったのか。

 母さんも兄さんも、魔法は攻撃系の事ばっかりで、この属性の組み合わせは強力だとか、私が色々な属性を使えるのを良い事に、いっぱい組み合わせを実験させられて、正直他の魔法を勉強する時間が足りなかった。

 むしろ、疲労回復魔法とかあったなら、そっち先教えてほしかったよ!

 帰ったら母さんに言ってみよう。


「そんな魔法もあるんですね。知りませんでした」


 その言葉に、申し訳なさそうな顔をして言うシリウス。


「大賢者と呼ばれるマーガリン様が、お教えしなかったという事は、蓮華様にその適正がなかったのでしょう……お辛い事をお話してしまって、申し訳ありません……」


 と悲しそうに言う。

 大魔道師だけじゃなく、大賢者とまで呼ばれてるのか母さん。

 じゃなくて。

 いや、違うからね!あの二人合成魔法の楽しさに他の魔法の事忘れてただけだからね!?でも、そんな事を言うわけにもいかないので。


「え、えっと、魔法は私が聞いた事を教えて、と母さんには言ってたんだ。だから、私が聞いてないだけなんだよ」


 と言ったのだが、シリウスは分かってます、といった顔で。


「蓮華様は本当にお優しい……」


 なんて言ってきた。

 この顔は絶対分かってないな!変な解釈したな!?私でも分かるぞ!


「ま、まぁ無理なものは無理なんだし、普通に行こうよ」


「そうですね、畏まりました。道中魔物が出ても、お任せください。私も蓮華様とゆっくり景色を眺められるこの時間が楽しいですから」


 なんて言ってくれる。

 綺麗な人が笑顔でそう言ってくれるだけで、なんだか心が軽くなる。

 美人って得だなって思った。

 そして何事もなく進み、夜が来たので野営する事にした。

 したのだが……。


「何、これ」


 目の前にはでっかい家が。


「何って、野営する為の家ですが……。蓮華様、どうぞ中へ。ちゃんと魔物除けの結界が張られていますので、安心して眠れますよ」


 そういう事じゃない。

 いやそういうとこもだけど。

 なんで、家がいきなり建つの?

 中に入ると、家具もしっかりとあった。

 驚いてばかりの私が面白かったのか、微笑みながら。


「蓮華様は旅は初めてなのですね?私達のような階級持ちは、自宅ともう一つ、野営で使う家をアイテムポーチに入れています。なので、それを取り出したのですよ」


 な、成程。

 衝撃だったけど、そういうものなんだ。

 私は野営って、テントとか張ってするイメージだったから。

 お風呂もあるみたいだし、もはや実家のような安心感だ。


「私は料理も出来ますので、何かリクエストがあればお聞きしますよ蓮華様」


 何この完璧超人。

 美人で強くておまけに料理ができるだと?

 ああ、身近に母さんっていうハイブリッドが居たな、そういえば。


「嫌いなものはないから、好きに作ってくれたら嬉しいかな。ごめんね、私は料理できなくて」


 簡単な目玉焼きや混ぜご飯とかならできるけど、料理って言わないよね。

 私女子力低すぎる。

 いや男だったんですけどね!男でもできる人はいるから言ってて悲しくなるけども。

 むしろプロの料理人って男が多いよね……。

 そんな私を見て。


「ふふ、分かりました。蓮華様は可愛らしいですね」


 なんでかそう言われてしまった。

 意味が分からない。

 そして目に留まる四角い箱、じゃなくて元の世界で言うテレビみたいなもの。


「あ、適当にご覧になっていて良いですよ」


 と言われたが、え、これテレビ?

 異世界にテレビとかあるの!?

 リモコンみたいなのもあったので、電源を入れてみた。

 ブンッという音と共に、映像と音が流れ出した。


「て、テレビだ。テレビがある!?」


 驚いて言ってしまった。

 うちにはなかったから。

 台所から、シリウスが言う。


「ふふ、おかしな蓮華様。魔力を少し流すだけで使えるので、各家庭に一つは最低ありますよ?」


 と言われても、うちには無かったから、異世界にはテレビとかないんだろうなと思っていた。

 衝撃すぎて言葉もない。

 画面にはその日の出来事などが報じられているようだった。

 チャンネルが12個ある事から、もしかしたら各国の情報が流れているのかもしれない。

 興味はあったが、体が汗で気持ち悪かったので。


「シリウス、お風呂入っても良いかな?」


「はい、大丈夫ですよ。もう沸かしておりますので、好きに入っていただいて良いですよ。中にあるシャンプーやトリートメントも、お好みの物を使ってくださいね」


 至れり尽くせりだった。

 私も持ってきてはいるのだが、わざわざ出す必要もないか、と使わせてもらう事にした。

 そしてお風呂上りの夕食。

 母さんに負けず劣らずの、美味しい食事だった。


「蓮華様、よろしければ……私と手合せ願えませんか?」


 夕食も終わり、寝ようかなって思ってた時に、シリウスがいきなり言ってきた。


「え、えっと、なんで?私なんて雑魚だよ?」


 聞いてしまうのも無理はないだろう。

 なんせ、私は強さなんて一切みせていない。

 魔物と戦ってもいないし。

 普通に考えて、ロイヤルガードのシリウスの相手にもならない存在、と考えるのが普通だ。

 だと言うのに。


「いいえ。そのソウルイーターを腰に従えた蓮華様が、雑魚なわけがありません。それどころか、とんでもない強者である事は分かります」


 お前のせいかソウル。

 シリウスは続ける。


「また、蓮華様の魔物に気付く速さ、いつでも対処できるようにしているお姿を拝見し、只者ではないと思っておりました」


 ごめんよソウル、私のせいでもあったみたいだ。


「私も騎士の端くれ、強者と……いえ、蓮華様だからこそ、手合せをしてみたいと思ったのです」


 はぁ……とため息をつく。


「分かったよシリウス」


 と答える事にした。


「ありがとうございます蓮華様!」


 嬉しそうに言うシリウスを見て、しょうがないかと思った。

 外に出る。

 明かりは家からの光のみ。

 周りは闇に覆われている。

 刀を、ソウルを抜刀し、構える。


「っ……凄い剣気ですね、蓮華様。まさに達人のそれです」


 そう言われても、よく分からないのだけれど。

 まぁ昔から刀の修練はしていた。扱い方はよく分かってる。

 その上で母さんや兄さん、アーネストと手合せと言う名の模擬戦を幾度となくしてきた。


「言っておくけど、油断したら一閃で終わるからね」


 その言葉に、シリウスはゴクリと喉を鳴らす。


「……行きます、蓮華様!」


 一瞬で私の前に現れるシリウス。

 成程、身体強化の魔法か。

 でも、自分の間合いに入った時点で分かるので。


 ギィィィィン!!


 難なく防ぐ。

 シリウスが驚いた顔をした後、すぐに気を引き締め直したのか、剣撃を続ける。


 ギィン!ギィィン!ギィン!


 剣撃の音が続く。

 私は難なく防いでいく。

 対するシリウスは、息を乱していた。


「ハァッ……ハァッ……そ、想像以上、です蓮華様。ま、さか……一太刀も通らない、なんて……」


 と言う。

 うーん、なんていうか……。


「シリウスの剣筋がね、分かりやすすぎるんだよ」


「え?」


 驚いた顔をする。


「剣の駆け引きっていうのかな、こちらからくるのかな?それとも本命はこっちかな?っていうのがね、無いんだよね。だから、防ぎやすすぎて逆に困ったんだけど」


 その言葉に衝撃を受けたようだ。

 がっくりと項垂れるシリウス。


「良く言えば素直な剣筋なんだけどね。でも、相手を迷わせてなんぼだと思うよ?」


 その言葉に、シリウスが答える。


「……成程。ありがとうございます蓮華様。これからの修練、より一層頑張ろうと思います!」


「うん、頑張って」


 そう言っておいた。


「にしても、蓮華様は凄いですね。剣術だけで私を圧倒しますし、蓮華様は魔法が主なのでしょう?」


「まぁね。でも最近は戦いながら攻撃魔法を使えるように訓練したから、関係なくなったかな。以前は集中が要って、戦いながらは難しかったんだけど」


 その言葉に、シリウスが驚愕の表情をする。


「た、戦いながら攻撃魔法をですか!?そ、それが本当なら、前衛を努めながら後衛の役割もこなせるという事に……!」


 よほど興奮したのか、シリウスが詰め寄ってくる。


「う、うん。それに、武器がソウルイーターだから、武器に魔法を纏わせて攻撃したりできるよ。いわゆる魔法剣ってやつだね。全属性纏わせれるから、絶対弱点つけるよね」


 その言葉に、シリウスはもはや開いた口が塞がらないようだった。


「あはっ……あはははっ!蓮華様、貴女はとんでもないお人だ。貴女のような方と知り合えた私は、本当に運が良い」


 ?と首を傾げていると。


「蓮華様、私ももっと腕を磨き、貴女様に近づけるように努力致します。私の忠誠は国に捧げておりますが、いえ、ここから先は、私がもっと強くなってからに致します」


 なんだかよく分からない事を言っていたので。


「う、うん。頑張ってね」


 と言っておいた。

 何故か凄くやる気を滾らせていたように見えるんだけど、大丈夫かな。

 今から寝るだけなのに。

 こうして、手合せも終わった。

 明日はいよいよオーブのある洞窟に着くかな。



-シリウス視点-



 刀を収めて、家に戻っていく蓮華様を見送る。

 女だてらにロイヤルガードに成り、女のくせに、という陰口を聞いた事はよくある。

 結果を出し続けた私に、他のロイヤルガードの仲間達は言わないし、そう言う輩を戒めてくれてはいる。

 だが、やはり最初に私を見て浮かべる表情はみな、侮蔑の表情だ。

 それは相手が女性であっても変わらない。

 何故女性が守護騎士ではなく、ロイヤルガードになっているのか、という目で見られるのだ。

 守護騎士であれば、王妃や王女といった、女性を守る存在として皆の目に映り、頼られる。

 だが、ロイヤルガードとは、王、そして王国を守る騎士の筆頭なのだ。

 だから、今回の護衛対象も、きっと私を侮蔑の目で見るのだろうと覚悟をしていた。

 他国の者ではあるが、女性が騎士団の代表者をしている国は少ないのだから。

 王からの直々の依頼。

 同じ女性だから、他のロイヤルガードの者よりも良いだろうとの事で、引き受けないわけにもいかなかった。

 だが、蓮華様は違った。

 初めてお会いした時は、そのあまりの美しさと可愛らしさに、挨拶が上手く言えているか自信がなかった。

 だが、その挨拶の後も普通に笑顔で、まるで……凄いですねと言わんばかりの態度だった。

 おまけに。


「え?だって実力を認められてその地位に成ったんですよね?なら、普通なんじゃないですか?あぁいや、その努力が普通って言ってるわけじゃないですよ?その地位に着くには、凄い努力が必要だったと思います。凄いですよ、頑張ったんですね」


 蓮華様は、私が、一番欲しかった言葉を、言ってくださった。

 実力を認められて。

 この努力を、認めてくださって。

 頑張ったんですね、と。

 言ってくださった。

 ずっと欲っしてきて、でも誰からも言われた事などなかった。

 当然だと、女なのだから、努力して当然だと、言われ続けてきた。

 誰も、頑張ったなど言ってくれなかった。

 なのに……。

 私は、この方が王だったら良かったのに、と心から思った。

 それからの馬車の旅は楽しかった。

 私の話を嫌な風に思わず、楽しそうに聞いてくださる蓮華様の事が、どんどん好きになった。

 蓮華様の実力は、もはや戦うまでもなく分かった。

 魔物の気配を感じれば、すでに蓮華様は気付いておられ、魔力を身に纏い腰の刀にいつでも手が伸ばせる状態なのが見て取れた。

 その腰の刀もよく見れば、魔剣だと気付く。

 以前書物で読んだ、ソウルイーターの刻印が酷似していたのだから。

 形こそ変わっていたけれど。

 そして夜、蓮華様に手合せをお願いしてみたら、あっさり許可してくださった。

 本当に心の広い方だと思う。

 しかし、その強さは化け物じみていた。

 王国で私の剣を凌げる者など、同じ仲間であるロイヤルガード達くらいなものだった。

 なのに軽々と防がれ、今まで指摘されなかった事を仰ってくれた。

 そして何より驚いたのが、魔法の戦いながらの使用だ。

 普通、魔法には凄い集中力と溜めの時間が必要な為、戦いながらなど使用は不可能である。

 傷を負えば集中力が乱れるし、当たり前なのだが。

 それを蓮華様はできると仰った。

 蓮華様が嘘を言う必要など全くないので、真実なのだろう。

 おまけに、エンチャントまで可能だと仰った。

 エンチャントは普通の魔法とは違う。

 攻撃魔法とは別の魔法だ。

 しかも、エンチャントには属性がある。

 普通、1属性、多くても2,3属性しか使えない上に、戦闘前に掛けておく必要がある。

 それにより、戦闘中に切り替える事ができないエンチャントは、扱いが不遇なのである。

 だがそれも、戦闘中に属性を変える事ができるとなれば、評価は逆転する。

 それも、蓮華様は全属性と仰られた。

 常に相手に有効な属性に切り替える事が可能なのだ。

 凄まじいの一言だろう。

 その人柄と、強さに……私はもう言わずにはいられなかった。

 だが、今の私程度が、蓮華様に仕えるなどできるはずがない。

 もっと、もっと強くならなければ、その資格はないと思った。

 だから、全ては言わなかった。

 蓮華様はきっと、私が何を言っているのか理解してはいらっしゃらないだろう。

 だが、それでいい。

 今は、それでいい。

 いつか、私が自他共に誇れる存在になった時に、堂々と言おう。


 蓮華様の、従者にしていただけませんか?と。



-シリウス視点・了-


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