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127.罠だらけ

 アリス姉さんと別れ、セルシウスと朝一に向かったのだが……。

 ゼクンドゥスが指定した場所が、中々見つからなかった。

 時々現れる魔物をセルシウスと共に倒しながら、探す事1時間程。

 ようやく、それらしき入口を見つけた。


「悪趣味ね……」


「うん……」


 入口が、禍々しい髑髏(どくろ)が口を開けているという。

 奥が山になっていて、その中に無理やり作った感じが凄い。

 この結界に覆われていない場所は結構広いのだが、山が多数ある為、直線距離よりも数倍広く感じる。


「ゼクンドゥスの魔力は感じないけど、奥に居るんだろうね。どんな罠が仕掛けてあるかわからないし、気を付けて進もう」


「ええ」


 と声を掛けて一歩目で、ガコンという音がする。


「……やっちゃった?」


「みたいね」


 いきなり、地面が斜めになる。


「にょわぁぁぁっ!?」


 滑り落ちていく私。


「ふっ!」


 瞬間、セルシウスが私を抱えて、下まで跳躍していく。


「うわ、うわわ!?せる、セルシウス!?」


「少し口を閉じていなさいレンゲ。舌を噛むわよ」


「~っ!」


 そうして、一番下までたどり着く。


「うへぇ……ありがとセルシウス」


「どういたしまして。それより、これは入口に戻るのは難しそうね」


 上を見ると、入口が見えない。

 結構な距離を降りたみたいだ。

 まぁ、頑張れば戻れるだろうけど、別に出るだけなら『リターン』で構わないし、元より戻るつもりもない。

 前を見ると、通路が3方向に分かれている。


「さて、どの道を進もう?」


「看板があるわよレンゲ」


 本当だ。

 近づいて読んでみる。


"左の通路は罠だらけ。真ん中の通路は魔物だらけ。右の通路は未成年お断り"


 なんだこの阿呆な看板は。

 どれを選んでもめんどくさい……というか右は冗談だよね?


「真ん中が楽そうだけど、どうするレンゲ」


 ここで魔物だらけを選択しようとするセルシウスは男前だよね。

 でも、極力力は温存しておきたい。


「強い魔物がたくさんいたら面倒だし、罠の方にしよう。こっちなら、多分大した事ないでしょ」


「そう?まぁレンゲがそう決めたなら、良いけれど」


 と言って、二人左の通路を進む。

 私はこの選択を、もの凄く後悔した。


「ぎゃぁぁぁ!!気持ち悪いぃぃぃっ!!」


 部屋全体を覆いつくすスライムのようなものに羽毛がくっついてて、うにょうにょ動いてる。

 セルシウスが全部凍らせて先に進んだら、今度は一歩歩くごとに、踏んだ所から槍が出てくる。


「殺す気かっ!?」


 言いながら駆け抜けた先に、落とし穴。

 なんとか避けた後に下を見たら、ムカデだらけで鳥肌が立った。


「こ、殺すぅ、あいつ絶対殺すぅ……!」


 そう心に決めた後も、数々のトラップが私達を襲う。

 大きな広間に出たら、火の玉がどこからともなく滅茶苦茶な数飛んできたり、天井が迫ってくる部屋だったり。

 お前は何を造ってるんだと何回思った事か。


「ぜぇっぜぇっ……あ、あいつ、趣味が悪いにも程があるわっ!!」


 愚痴も出ようってものである。


「見てレンゲ、あそこ、他と色が違うわ」


 セルシウスにそう言われ、見てみた。

 通路が淡く光っており、幻想的な光景だった。

 この場所には不釣り合いなくらいに。

 きっと、あの先に居るな。


「行こうセルシウス。きっとあの先だ」


「……だと良いけれど」


 そのセルシウスの言葉に首を傾げながらも、進む。

 そうして、広間に出たところで魔法陣が起動する。


「「!?」」


 そうして気付いたら、斜めになった地面の、落ちる前の場所に居た。

 つまり、入口ですね。


「あんのやろうぅっ!!」


 そう叫んでも、しょうがないよね。


「どこまで陰険なのかしらね、いい加減私も腹が立ってきたわ」


 セルシウスと目くばせをする。

 もはや、私達に遠慮という二文字は存在しない。

 全身を魔力で覆う。

 これから、このダンジョンをまっすぐつっきる。

 山が崩れる?知ったことか。


「さぁ行こうかセルシウス。あいつの鼻を明かしてやる」


「ええレンゲ。全て凍らせてあげるわ」


 鬼神となった二人がダンジョンを進む。

 ドゴンドゴンと道を壊しながら、凍らせながら。

 二人の通った後には、ただただ氷で彩られた道が残っているだけだった。



-ゼクンドゥス視点-


 蓮華が我がダンジョンに来たのが視える。

 ふむ、大精霊が居るようだが……まぁ良かろう、あれも蓮華の一部という事で認めようではないか。

 さぁ、開幕の罠に驚け。


「にょわぁぁぁっ!?」


 叫び落ちていく蓮華の姿に笑いが止まらない。

 あの大精霊に助けられたようだが、まぁ良いとしよう。

 楽しいのはこれからだ。

 どの通路を選択するかと思えば、罠の多い道を選択した。

 これぞ飛んで火にいる夏の虫という物だな。

 これから起こりうる場面に笑いを堪えるのが難しい。


「ぎゃぁぁぁ!!気持ち悪いぃぃぃっ!!」


 あの青ざめた表情を見て、ついに笑いが堪えられなくなった。


「ははっ!!ははははははっ!!良いぞ蓮華、お前は俺を楽しませてくれる!!」


「殺す気かっ!?」


 失敬な、お前はその程度の殺傷能力の武器では死なぬだろうが。

 そんな物は次の罠の牽制にすぎぬ。


「こ、殺すぅ、あいつ絶対殺すぅ……!」


 落とし穴を避けた蓮華の表情を見て、更に笑いがこみ上げる。

 良い、良いぞ蓮華。

 俺のリビドーが高まっていくのを感じる。

 もっとだ、もっとお前の色々な姿を見せてくれ!

 そして、俺のとっておきの嫌がらせの魔法が発動した。


「あんのやろうぅっ!!」


 入口に戻された蓮華の怒りの表情。

 た、たまらん……!その表情、俺の情欲を湧き立てる!

 と興奮していたら、蓮華が真っすぐに進みだした。

 な、なにぃ!?

 ダンジョンを破壊しながら進む、だとぉ!?

 それはダンジョン突破で一番やってはいけない事だろう蓮華!?

 そうこうしているうちに、蓮華は俺のいる場所に着実に近づいている。

 ククッ……蓮華が俺を想う、それが例え憎悪からくるものであろうと。

 俺にはそれが何よりも愉悦を感じられたのだ。

 こんな感情を己が抱く事に驚いたが、今ではそれも気に入っている。

 ロキに手を出すなと言われたが、ばれなければ問題あるまい?

 数百年ぶりに興味を惹かれたのだ。

 蓮華、お前を俺の物にしてやる。

 さぁ来るが良い、愛しの姫君よ!



-ゼクンドゥス視点・了-



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