112.決勝戦・蓮華VSアーネスト(2) ☆
アーネストが驚いているので、教える事にした。
ほら、アーネストだって見せてくれたから。
私のは、使ったら攻撃しちゃうのばかりだし。
「今回、セルシウスは傍に居てくれるから、『精霊憑依』だってすぐできるけど、本来最初に行うのは召喚になるだろ?」
「ああ、そういやそうだな」
「で、私は今まで、魔力量が多いって理由であんまり消費を考えなかったんだけど、母さんからはその調整をして貰ったんだよ。今回、『精霊憑依』で倒れちゃったけど、私にも枯渇する時はあるって母さんは分かってたんだろうね」
「あー、魔術と違って、MPは減るもんな」
また私にしか分からない言葉を。
私の場合、自然回復の量も桁違いに多いらしいので、普段なら気にしなくて良いみたいだけど、強敵との戦いではそうもいかないからなぁ。
「ま、そんなわけで、私は母さんとアリス姉さん、それに大精霊の皆に協力してもらって、大精霊の皆の力の一部を使えるようになったんだ」
「ん?お前って普段から加護受けてるんだろ?」
「ああうん、そういう意味じゃないんだ。ま、それはこれから使うから嫌でも分かるよアーネスト」
そう不敵に笑うと、アーネストも笑った。
「はは、そっか。そんじゃ、俺の『幻影創兵術』、破れるか試してみな!」
アーネストの影の兵が突撃してくる。
私は大精霊の魔法を使う。
「世界樹足る我が命じる、大精霊の力を具現化せよドライアド!『バラル・ガーデン』!!」
舞台を大小様々な樹木が覆いつくす。
さながら森が急にできたかのようだ。
だけど当然それだけじゃない。
根を張った木々達が、アーネストの魔術でできた影達を捕らえていく。
「なっ!?大精霊の力を、『精霊憑依』なしで使えるってわけか!?」
「あくまで私の魔力を元に、だけどね。『精霊憑依』は大精霊の力そのものを私にプラスするみたいだから、結構違うよ?」
「いやいや、お前……そんだけのモン使えて、よく俺にずっこいとか昼に言ったな!」
「あ、あはは……」
「笑ってもごまかせねぇからな!これじゃ『幻影創兵術』は蓮華には通じねぇか、仕方ねぇ」
そう言って、影が消える。
アーネストが消したのだろう。
そして、最初と同じように双剣を構える。
「やっぱ、お前とはこれだな」
私も『バラル・ガーデン』を消した。
「そうだな、でも『精霊憑依』は使わせてもらうぞ?セルシウス、待たせたね」
その言葉に微笑むセルシウス。
「『精霊憑依・セルシウス』」
-アーネスト視点-
「はは、そっか。そんじゃ、俺の『幻影創兵術』、破れるか試してみな!」
影の兵を全て蓮華に向かって突撃させる。
この『幻影創兵術』はイメージが大切だ。
思った通りに動かせるが、その分コントロールが少し難しい。
そして蓮華に影の兵の一部が近づいた瞬間。
「世界樹足る我が命じる、大精霊の力を具現化せよドライアド!『バラル・ガーデン』!!」
いきなり、舞台が大小様々の樹木によって覆いつくされる。
「なっ!?大精霊の力を、『精霊憑依』なしで使えるってわけか!?」
だけど足場が悪くなったくらいじゃ、俺の影の兵は止められねぇぜ!
そう思っていたのだが、根を張った木々達が影達を捕らえていく。
「あくまで私の魔力を元に、だけどね。『精霊憑依』は大精霊の力そのものを私にプラスするみたいだから、結構違うよ?」
「いやいや、お前……そんだけのモン使えて、よく俺にずっこいとか昼に言ったな!」
「あ、あはは……」
「笑ってもごまかせねぇからな!これじゃ『幻影創兵術』は蓮華には通じねぇか、仕方ねぇ」
そう言って術を解除する。
大精霊の力も行使できる蓮華には、『幻影創兵術』の初歩しかまだ使えない俺では分が悪い。
なら、やっぱこれしかねぇな。
「やっぱ、お前とはこれだな」
俺は双剣を構えた。
蓮華も魔法を消してくれた、俺に付き合ってくれるみたいだ。
やっぱ、お前はそうだよな。
そのままでもお前は有利に戦えるのに、そうしない。
「そうだな、でも『精霊憑依』は使わせてもらうぞ?セルシウス、待たせたね」
セルシウスが微笑む。
あの表情は、絶対的な信頼の現れだろう。
セルシウスは蓮華以外に微笑む事は少ない。
そしてあの表情は、蓮華にしか向けない。
「『精霊憑依・セルシウス』」
瞬間、蓮華の姿が変わる。
どこかセルシウスに似た、大人びた姿に。
髪の色は綺麗な水色になり、瞳の色はアメジストのような深い青色をしている。
その美しさに、蓮華と知っているのに見惚れそうになる。
「どうしたアーネスト?」
ぼーっと見ていたのに気づいたのか、首をかしげて聞いてくる蓮華。
こいつはそういうの無頓着だからな、そのお陰で気楽に付き合えるんだけどさ。
そこで少し意地悪を思いついた。
正直に話したら慌てるだろうか、という少しの悪戯心。
「いや、いきなり綺麗になるからさ。見惚れてたんだよ」
「そうなのか?まぁセルシウス綺麗だしな」
これだからな蓮華は。
自分の事を褒められていても、自分の事と思わない。
恐らく、蓮華という体を、自分の事と思っていないんだろう。
だから、褒められてもなんとも思わないんだろう。
でも、蓮華はもう蓮華なんだ。
その体はユグドラシルのものではなく、蓮華のものなんだ。
いつか、そう思えるようにしてやりたいな……そう思って、刃を向ける。
「はは。ま、違いないけどな。今はそれで良いや。行くぜ、蓮華」
首を傾げながらも、答えてくれる蓮華。
「今はって、まぁ良いか。ああ、私も本気で行くからなアーネスト」
そう言って刀を、ソウルイーターを構える蓮華。
その姿は刀と一体になっているようで、綺麗と同時に格好良いと思ってしまった。
そんな蓮華と、戦える。
俺はそれが嬉しかった。
-アーネスト視点・了-