109.インターバル
アーネストとアリス姉さんが戻ってくる。
「勝ったぜ、蓮華」
「アーくんの作戦勝ちだねー。負けちゃったよ蓮華さん」
そう言う二人は、どちらも笑顔だった。
「二人とも凄かったよ。アーネストはやっぱり流石だな、お前と公式の場で戦えるのが楽しみだよ」
「はは、思えばあの時は引き分けだったしな。今度は場外負けはねぇ、白黒はっきりつけれるな蓮華」
「ああ」
二人微笑みあう。
「ねぇねぇ蓮華さん、あの時ってどの時ー?」
そういえば、あの王覧試合の時はまだ、アリス姉さんとは出会えてなかったね。
アリス姉さんに説明をする。
「へぇ~、そんな事があったんだ。ずるいなぁ、私も見たかったよー」
なんて言ってくるアリス姉さんに苦笑する。
色々話し合っていたら、外から声が聞こえてきた。
「会場の皆様、ただいまより決勝を……と言いたい所なのですが、ご覧のとおり舞台が大破しておりますので、それを修繕する為、これよりお昼までインターバルとさせて頂きますわ。決勝は午後一で開始致しますので、よろしくお願い致しますわ!」
はからずも、予選の時と同じになっちゃったか。
「それじゃ蓮華、会長、アリスティアさん。私はリンスレット達の所へ行くわ。午後の決勝は、観客席で見させてもらうわね」
「そっか、うん。また後でねノルン」
「おう、見ててくれよなノルン!」
「またねー!ノルン!」
私達の言葉に微笑んだ。
「ええ。会長、アリスティアさん。貴方達の戦い、凄かったわ。また私とも戦ってね」
そう言って、控室から出ていくノルンを見送る。
「そういやさ蓮華。お前いつまで『精霊憑依』してんの?」
「え?」
「あ、私もそれ気になってたんだよねー」
……忘れてたとかそんな。
「えっと、これどうやって解くの?」
「「……」」
二人とも真顔で無言とかやめて欲しい。
「あ、あはは、蓮華さんは本当にもう。えっとね、『精霊憑依・解除』って言えば良いよ」
そんな簡単なのね。
それじゃ早速。
「『精霊憑依・解除』」
瞬間、セルシウスが現れ、体が物凄く脱力した。
「あ、あれ。体に力がはいらにゃい……」
なんか呂律が上手く回らない。
「だ、大丈夫か蓮華?」
アーネストが心配そうに聞いてくるけど、ダメだ、体が重たい……。
ドタン
「蓮華!?」
「蓮華さん!?」
二人が驚くけど、もうダメ、立てない……。
「あー……レンゲ、『精霊憑依』を試合後にすぐ解かなかったのね。それはそうなるわよ、二日酔いみたいなものだから、しばらくすれば治るわ」
とセルシウスが言ってくる。
「お前、すぐ決勝じゃなくて良かったな……」
呆れながらアーネストが言ってくるけど、つっこめない。
「蓮華さん、本当に辛そうだね。待ってて、マーガリンかロキ連れてくるから!」
そう言って、アリス姉さんが猛スピードで駆けていく。
「あー、れす、と、あ、りす姉、さんを、ひょめ、て……」
言葉をなんとか発する。
だけど……。
「わりぃ、手遅れだ蓮華」
アーネストが控室の入り口を見る。
「レンちゃぁぁぁぁぁん!!」
「蓮華!!無事ですか!?」
と、二人が物凄いスピードでやってきた。
oh……。
「これは精霊酔いね、待っててレンちゃん、すぐ治してあげるからね!」
そう言って回復魔法をかけてくれる母さん。
あー……あったかい。
なんか、熱が出ている時に頭に冷たいタオルを置いた感じに似てる。
あれ?それだと冷たいか、まぁどうでも良いよね。
気持ち良いって事だよ、うん。
「ふぅ……ありがと母さん、大分良くなったよ」
「良かったレンちゃん、死んじゃうかと思ったじゃない!」
そんな大げさな。
「蓮華、右腕を見せなさい。リンスレットの治療があったとはいえ、油断はできません。どんな後遺症が残るやもしれませんからね」
うん、心配性すぎると思うんだ。
でも、言われたとおり見せる。
だって、抵抗しても無駄だから。
「良かった、大丈夫ですね。全く、無理をしすぎですよ蓮華。ですが……よく頑張りましたね。アーネストも、偉いですよ」
そう言ってくれる兄さんに、私達は微笑む。
「それに引き替え、アリスの情けなさと言ったら……」
「ムキー!ロキは相変わらず五月蠅いんだからー!」
兄さんとアリス姉さんが言い合っているけど、まぁいつもの事だね。
「そういえば母さん、ミレニアは?」
「ミレニアなら、多分そのまま居るんじゃないかしら。私とロキはアリスから話を聞いて、すぐに飛んできたから」
ミレニアだけが冷静でいてくれたんだね。
とか思ったんだけど。
「蓮華!何かあった時の為に、屋敷から色々と持ってきたぞ!」
「各種薬草を多々ご用意させて頂きました」
そう、大きなバッグを抱えたシャルロッテと、ミレニアが来た。
……うん、私の周り、ちょっと心配性すぎないかな?
「ぶはっ!はははっ!母さんも兄貴も、ミレニア達も心配性すぎだろー!」
アーネストが笑うと、母さんや兄さん、アリス姉さんも笑い出した。
ミレニアとシャルロッテがきょとんとしているけど、私を見てから微笑んだ。
「大事ないようでなによりじゃ。お主は放っておくと無茶ばかりしよるのぅ」
そう微笑むミレニアは、とても優しい表情をしている。
ホント、私の周りには優しい人ばかりで嬉しくなる。
「アーネスト、地下って使える?」
「あー、まぁ大丈夫だと思うぜ?」
「そっか、ならあのレストランに行かないか?」
「おう、良いな。母さん達はどうする?」
「もちろん一緒に行くわよー!」
「私は聞くまでも無いよー。蓮華さんが行くなら、どこまでも一緒に行くんだから!」
「元より二人が居ない場所に居ても仕方がありませんからね」
「うむ、妾達も行くとしよう。そのレストランとやらの食事も食べてみたいからのぅ」
「はい、ミレニア様」
うん、そう言うと思ってたよ。
あと、何気にアリス姉さんも答えてるけど、アリス姉さんとセルシウスは除けて聞いたと思うよ。
セルシウスは当然と言わんばかりに、私の横に居るし。
答えてないけど確実に一緒に行くと思う。
「それじゃ、行こっか」
そう言って、アーネストと共に先導する。
また賑やかなお昼になりそうだ。