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106.蓮華VSノルン(2)


-マーガリン視点-


 レンちゃんとノルンが闘技場舞台で戦っているのをロキやミレニアも真剣に見ている。

 私が世界樹より創りあげた体。

 その元は女神ユグドラシル。

 ただ、レンちゃんの元の精神は、人間だ。

 強大な力を秘めたユグドラシルの力に、そのままでは押し潰されてしまう可能性があった。

 だから、幾重にも封印を施した。

 それでも、ユグドラシルの力は大きすぎて、封印を施した状態ですら、地上のあらゆる者と比較しても強かった。

 その上、大精霊達とまで契約をしてしまった。

 もちろん、その可能性を考えなかったわけじゃない。

 ユグドラシル、世界樹から魔力を供給している大精霊達にとって、レンちゃんは正しく母親なのだから。

 魔界のイグドラシルは、そんなユグドラシルを支える存在として現界している。

 実際に地上、魔界にマナを供給しているのは、地上の世界樹、ユグドラシルなのだから。


「あ奴、蓮華を押しておるな。やるではないか」


 そうミレニアが微笑む。


「……」


 黙って見ているロキに、黒いオーラが見える。

 あれはレンちゃんが攻められているのを見て、怒りに震えてるわね。

 相手がアーちゃんなら、笑って見ていられるんだろうけどね……。

 レンちゃんとノルンの戦いを見る。

 最初は押されていたレンちゃんが、ノルンの動きに合せるように動いていく。

 気付けば、レンちゃんも『ワープ』を使用している。

 度重なる場所移動の繰り返しによる攻撃。

 観客の皆、目で追うのに必死なのだろう、声を発するのも忘れて見入っている。

 レンちゃん、貴女の封印の一つは、もう解除したの。

 だから、その力に押し潰されないか、私に見せて。

 私は真剣に、レンちゃんの戦いに目を向ける。

 今も楽しそうに戦うレンちゃんを見て、自然と微笑んでいる事に、私は気付いていなかった。


-マーガリン視点・了-



「「はぁぁっ!!」」


 ギィン!!


 『ワープ』を多用し、現れては斬るを繰り返していた。

 ほとんど外れるが、こうして偶に刃が合わさる。


 ズザァッ!!


 互いに距離を取り、呼吸を整える。


「やるわね、蓮華。戦いながら成長してる」


「ノルンは私より上だ。だから、真似できる所は真似させて貰ったんだよ。おかげで、強くなってる実感があるよ」


 そう言ったら、ノルンは微笑んだ。


「ふふ。私達は今、限りなく互角に近い。だから、このまま続けてもジリ貧だとは思わない?蓮華」


「やっぱり、ノルンも奥の手はあるんだ?」


「当然よ。私はイグドラシルの化身なのよ?その力を解放するわ」


 驚いた。

 つまり、今まではノルンとして培ってきた力のみで、相手をしてくれていたのか。


「ただ、私もあまり長くその力を使えない。使った後は、しばらく動けないくらいの反動があるのよ。だから、蓮華……貴女も本気で来て」


 そう言って、私を真剣な表情で見つめる。


「分かった。セルシウス!」


 そう呼びかけると、セルシウスは私の横へ現れる。

 会場が湧くが、カレンがすぐに説明をしてくれた。


「お静かに!私が説明致しますわ。このセルシウスは、ご存知の方も多いと思われますが、大精霊です」


 その言葉に、騒然とするのが分かる。


「そして、大精霊セルシウスはレンゲ=フォン=ユグドラシルと直の契約をしております。つまり、蓮華選手の庇護下にあるのです。この戦いは、魔道具の持ち込みもOK。つまりは、大精霊セルシウスも魔道具として数えられ、問題はない事をお伝えいたしますわ」


 ありがとう、カレン。

 そうして、私はノルンを見据える。


「そう、『精霊憑依』を使うのね。相手にとって不足はないわ、蓮華!」


 そう言うと同時に、ノルンの体から魔力の渦が竜巻のように巻き起こる。

 凄い圧力に、体が吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪える。


「セルシウス、私は『精霊憑依』をした事がないから、ぶっつけ本番だし……正直、制御しきれる自信は無いけど……」


「ええ、レンゲ。それで構わない。ぶっ倒れるまでやればいいわ」


 そんな男前な事を言ってくれるセルシウスに、笑う。


「よし……行くぞ!『精霊憑依・セルシウス』!!」


 瞬間、体の中に、いや全身にセルシウスを感じた。

 青い、いや透き通る白。

 そんな魔力が、私の全身を駆け巡り、魔力となって溢れだす。


「そう、その姿がセルシウスを憑依した、貴女の姿なのね蓮華」


 私自身がどんな姿をしているのか、確認する術はない。

 だけど、そんな事はどうでも良い。

 ただ、ノルンに打ち勝つ、その為に。


「行くぞ、ノルン!」


 ソウルに冷気を纏わせ、思いっきり振るう。

 振りぬいた刃から冷気の刃が解き放たれ、闘技場の観客席の結界まで飛ぶ。


 バヂヂヂヂヂ!!


 と大きな音をたてて、結界が揺れる。

 観客達が無事な事を確認し、ノルンに連撃を浴びせる。

 だけど、ノルンはそれを全て見切り、避ける。


「ふふ、その状態でまだ観客を気にしているなんて、余裕ね蓮華!」


 ノルンのとてつもなく速い斬撃を避けられず、ソウルで受ける。


 ギィィィィィィ!!

 ゴォォォォォッ!!


「グッ!!」


 受けたと同時に、凄まじい衝撃が私を襲う。

 これは、魔力まで乗っているのか!


「蓮華、このまま押し潰してあげるわ!はぁぁぁぁぁっ!!」


 凄まじい力で押され、後ろに下がっていく。

 まずい、このままじゃソウルを弾き飛ばされて、直撃する!


"主様!それで良いのです!我を弾かれた後こそ、勝機です!"


 そんな、久しぶりのソウルの声が聞こえた。


"今の我は、まだ魔剣として本来の力を主様に提供できていません。ですから、悔しいですが今は!"


 その、どこまでも私の事を想ってくれるソウルに、礼を言う。

 ありがとうソウル。

 いつも、私を守ってくれているのは知ってる。

 あの心臓に手を入れられた時だって、ずっとソウルが魔力を使って守ってくれていた。

 だから、私は意識を保てた。


「このまま、押し潰す!!」


 そう言って更に力を込めるノルンに対して、私はソウルを手放す。


「なっ!?」


 予想外のタイミングだったのか、ノルンの体制が崩れる。

 周りで悲鳴が聞こえる。

 流石に全ては避けれなかったようで、右腕の感覚が無い。

 だけど、これなら叩き込める。

 零距離でのカウンターの、一撃を。


「喰らえノルン!『奥義・凍刃獅吼爆砕撃』!!」


 ゴスゥゥゥゥゥ!!


「うぐぁぁぁっ!?」


 ドサァッ!!ゴロゴロゴロッ!


 お腹に直撃を受けたノルンは吹き飛ばされ、地面を転がる。

 私も右腕は完全に麻痺していて、ヨロヨロと立つのが限界だ。

 左腕での奥義の発動。

 セルシウスの扱う氷の極技の一つ、知りえない技が自然と浮かんだその一撃を、思いっきりぶつけた。

 ノルンを見つめる。

 剣を衝立として、立ち上がるノルン。


「……はぁっはぁっ……今の一撃、凄かったわ蓮華。私の……負けね……」


 そう言って、倒れるノルン。


「ノルン!!」


 私は麻痺した右腕を無視して、ノルンに駆け寄る。


「ノルン!しっかりしてノルン!」


 左手でノルンを抱え、そう叫ぶ私の傍に、近寄る気配を感じた。


「慌てるな、大丈夫だ。私が癒そう、お前もな」


 そう言うのは、魔王リンスレットさんだ。


「ありがとう、本気で戦ってくれて。お前のような友がいて、ノルンは幸せ者だ」


 言いながら、ノルンと私に癒しの力をかけてくれる。

 そんな中、カレンとアニスの宣言が響いた。


「「勝者!レンゲ=フォン=ユグドラシル!」」



 ワァァァァァァッ!!


 鳴り止まない歓声。

 でも今は、勝った余韻よりも、全力を尽くして戦えた事の方が、嬉しかった。

 ノルン、やっぱり君は強いよ。

 私も、もっと精進しないと、置いて行かれちゃうな。


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