105.蓮華VSノルン(1)
「会場の皆さん、お待たせ致しました!これよりヴィクトリアス学園主催、闘技大会準決勝、第一試合を開始させて頂きますわ!」
ワァァァァァァッ!!
歓声が控室にまで響き渡る。
いよいよだ。
ノルンとの一対一の戦い。
前回と違い、今度は正真正銘のノルン。
ドキドキするけど、それ以上にワクワクしている自分に驚く。
「それでは、選手の方は入場してください!」
カレンにそう呼ばれ、私とノルンが歩き出す。
歓声が更に強くなる。
母さんや兄さん、ミレニアも見ているんだ。
無様な姿は見せられない。
そして、舞台中央に立つ。
対面にはノルンがこちらを見据えている。
カレンとアニスが私達を見渡し、言葉を続ける。
「さて、皆さんご存知と思いますが、私から選手の紹介をさせて頂きますわ。まずはこちら、サラサラの黒髪に、透き通るようなエメラルドグリーンの瞳、この学園において一、二を争う美貌を持ちながら、その優しさに触れた生徒達のファンが急増中、ファンクラブも出来たとか小耳にはさんでおりますわ!是非私達にも紹介しなさい!その人、レンゲ=フォン=ユグドラシル!」
ワァァァァァァッ!!
ちょっと待て!どんな紹介してるんだよ!?
ファンクラブってなんだ!知らないんだけど!?
「続いてこちら、以前まで姿を偽っており、真実の姿に魅了された生徒達は数知れず!蓮華お姉様と双子かと言わんばかりのその美麗な容貌でありながら、その色は対照的にサラサラの緑髪、吸い込まれるようなブラックダイヤモンドの瞳。蓮華お姉様との違いを出す為に、ツインテールにした彼女の魅力は、留まる所を知らない!ノルン=メグスラシル=ディーシル!」
ワァァァァァァッ!!
「ちょっとアンタ!どんな紹介してんのよ!?」
ノルンが堪らずに言う。
分かるよ、心に押し留めた私を褒めたい。
観客席から、ノルンの関係者の声を拾えた。
「ぶはははは!聞いたかアスモデウス、あの審判絶対エンターテイナーの素質あるぞ!」
「笑いすぎよタカヒロ。リンだって静かに……って」
「……っ……」
「これ、笑いを我慢するのに必死な顔ね。はぁ、ノルン、私は純粋に応援してるからね……」
うん、どこも似たようなものなんだなぁ。
ノルンに微笑むと、溜息を零す。
「はぁ、アンタの知り合い、なんでこんな濃いのかしら。言っておくけど、そっちから聞こえてるだろう私の関係者の言葉を言ったら、私の後ろから聞こえてくるアンタ側の人達が言ってたセリフ、言ってあげるからね」
「それを言ったら、私の後ろから聞こえてくるノルンの関係者の人達が笑ってたの言うよ」
「すでにほとんど言ってるようなものじゃないのよ!?」
「それではルールを説明致しますわ!武器の使用、道具の使用、魔法・魔術の使用、全てOKです。そして、場外による負けはありません。勝負は本人による敗北宣言、もしくは気を失った場合や、戦闘不能と審判である私達が認めた場合、敗北となりますわ!」
うん、これは前回も聞いた通りだ。
「両選手、準備は良いですか?」
その言葉に、会場が静まり返る。
私はソウルを抜刀する。
ノルンも、剣を抜いた。
「それでは、試合開始!!」
その言葉と同時に、ソウルを振るう。
ガギィィィン!!
刀と剣がクロスし、ギギギギと金切り音が響き渡る。
お互いにそのまま切り払い、二撃、三撃と切り払う。
「てぇやぁぁっ!!」
四撃目を受け流し、ノルンの懐に入り込む!
「甘いわ、蓮華!」
その瞬間、ノルンの姿が消える。
姿を追えなかったわけじゃない、消えたんだ。
「『ワープ』かっ!」
「正解っ!」
ギィィィン!!
後ろからの斬撃をなんとか防ぐ。
すぐに斬り払うが、そこにノルンは居ない。
「『ワープ』の連続使用か、不味いな……これは場所が直前まで分からない」
「ええ、これの対処法は一つ。アンタも『ワープ』を使う事。できなければ、このまま私が勝つわよ!」
そう言ってまた消える。
私の周りに来るのは分かってる。
なら、明先輩との戦いの時に使った戦法でいってやる!
「炎の嵐よ、全てを燃やせ!『フレイムトルネード』!!」
ゴオオオオオオオッ!!
私の周りに炎の渦が巻き起こる。
「無駄ぁっ!!」
ギン!
「くっ!?」
咄嗟にソウルでガードする。
後コンマ一秒遅ければ、直撃していた!
「そんな範囲魔法で、一点突破の力を防ぎきれると思うの!」
ギギギギギッ!!
ノルンの剣に押されていく!?
「消えなさい!『バニッシュメント』!!」
ノルンのその魔法で、炎の渦が完全に消え去る。
「吹き荒れろ嵐、『トルネード』!!」
ゴオオオオオッ!!
「うぁぁっ!!」
ドサァッ!!
突然の風の嵐に、吹き飛ばされ舞台端に落とされる。
ソウルを衝立として、立ち上がりノルンを見据える。
「どうしたの蓮華。まさかこの程度じゃないわよね?」
その言葉に。
その余裕の態度に。
私は笑った。
「まさか。ここからだよ、ノルン」
ワァァァァァァッ!!
静まり返っていた観客達が、今の戦いでざわめきだした。
行くぞ、ノルン!
-ノルン視点-
「両選手、準備は良いですか?」
その言葉に、会場が静まり返った。
いよいよ、蓮華と戦える。
私は期待を込めて蓮華を見る。
蓮華が刀を抜刀した。
私も、剣を抜いた。
見計らったように、審判が宣言する。
「それでは、試合開始!!」
その言葉と同時に、剣を振るう。
ガギィィィン!!
剣と刀がクロスし、ギギギギと金切り音が響き渡る。
お互いにそのまま切り払い、二撃、三撃と切り払う。
「てぇやぁぁっ!!」
四撃目の私の剣を受け流し、掛け声と共に蓮華が私の懐に入り込んでくる。
そうはさせないわよ!
「甘いわ、蓮華!」
瞬間、『ワープ』を発動させ、蓮華の後ろに繋げる。
蓮華は私を見失う。
その隙、逃さない!
「『ワープ』かっ!」
「正解っ!」
ギィィィン!!
後ろからの斬撃を防がれる。
流石ね蓮華。
これを防がれるとはね。
蓮華の事、すぐに斬撃が来る。
すぐにまた『ワープ』を発動する。
「『ワープ』の連続使用か、不味いな……これは場所が直前まで分からない」
「ええ、これの対処法は一つ。アンタも『ワープ』を使う事。できなければ、このまま私が勝つわよ!」
そう言ってまた『ワープ』を発動させる。
だけど、少し嫌な予感がした。
だから、体全体に魔力による加護魔法を掛ける。
これで、仮に範囲魔法がくるとしたら、防げる。
私を捉えた集中魔法なら、防げない。
だから、賭けだ。
「炎の嵐よ、全てを燃やせ!『フレイムトルネード』!!」
ゴオオオオオオオッ!!
蓮華の周りに炎の渦が巻き起こる。
賭けには勝ったようね!
「無駄ぁっ!!」
ギン!
「くっ!?」
しかし、その攻撃も寸での所でガードされる。
やるわね、蓮華……でも!
「そんな範囲魔法で、一点突破の力を防ぎきれると思うの!」
ギギギギギッ!!
蓮華の防御を突き崩していく。
「消えなさい!『バニッシュメント』!!」
後は邪魔な蓮華の魔法を打ち消す。
このまま炎の嵐を収束されたら厄介だからね。
そして、今度は私の番よ!
「吹き荒れろ嵐、『トルネード』!!」
ゴオオオオオッ!!
「うぁぁっ!!」
ドサァッ!!
蓮華は防御しきれず、吹き飛ばされた。
刀を衝立として、立ち上がりこちらを見てくる。
「どうしたの蓮華。まさかこの程度じゃないわよね?」
そしたら、蓮華は笑ってきた。
本当に嬉しそうに。
私は背筋がゾクリとしたけれど、それ以上に……。
「まさか。ここからだよ、ノルン」
その言葉を嬉しく感じた。
ワァァァァァァッ!!
静まり返っていた観客達が、今の戦いでざわめきだした。
さぁ、まだ戦いは始まったばかりよ蓮華!!
-ノルン視点・了-