表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/712

99.カレーを作る

 大精霊の皆、それに母さんや兄さん、ミレニアにもと考えると、たくさん作る必要がある。

 なので、カレーを作る事にした。

 これなら、私でも作れる上に、多少失敗しても美味しくなるはず。

 食材を出してる時に、アーネストも来たので道連れ……コホン、一緒に作る事にした。

 アリス姉さんがかぼちゃを取り出して、握りつぶしてしまって絶句していた所だったので、笑いを堪えるのに必死だった。


「蓮華、調味料各種揃ってるのは分かったけど、材料そんだけで良いのか?」


「え、十分だろ?肉と玉ねぎ、にんじん、じゃがいもと、アリス姉さんが潰したかぼちゃも勿体ないから入れるよ?」


「あぁ、うん。かぼちゃは良いんだけどさ、俺が言ってるのは種類じゃなくて、量なんだけど……」


 ああ、そういう事か。


「とりあえず鍋一杯に作ったら、後は複製の魔法で増やそうかなって」


「それ料理じゃねぇから!?」


 えぇー、お手軽なのに。


「蓮華、それはダメだろ、常識的に考えて。なんつーか、食べるの世界樹のマナじゃねぇか」


「アーくん上手い(美味い)事言ったね、食べ物だけに」


「嬉しかねぇよ!」


「うーん、それじゃもっと食材増やさなきゃダメかぁ。ドライアドに言ったら分けてくれるかな?」


「お前な……大精霊を便利屋扱いすんなよ……」


「失礼な、使える者は親でも使えって言うじゃないか」


「そりゃ立っている者は親でも使えだ!混同すんな!!」


 アリス姉さんが滅茶苦茶笑ってる。

 話していたら、話題のドライアドが来た。


「れんげちゃん、しるふちゃんから聞いたよ~。は~い、使ってね~」


 ドサドサドサ!


 うわぁ、凄い量のお野菜の数々が。


「良いの?ドライアド」


「もちろん~。後、このローリエっていうハーブをね~、お野菜を水に入れて、火で煮込む時に一緒に入れるとぉ、美味しくなるよぉ~?」


「そうなんだ、ありがとうドライアド!」


「どう致しまして~。れんげちゃんやあーねすとちゃんが作った料理なら、どんな味でも食べるけどね~」


 そうニコニコ笑って言ってくれるドライアド。

 本当に優しい大精霊だ。


「そういえばさ、大精霊なのに皆人型だけど、飯って必要なのか?」


 そうアーネストが質問する。

 それに近づいてきたセルシウスが答える。


「私達は基本、世界樹からマナを受け取っているから食事は必要としないけれど、味は楽しめるからね。それに、体内に入った物は全て魔力に変換されるから、無駄にはならないわ」


 それはつまり、どれだけ食べても太らないと。

 世の女性を敵に回しますね大精霊の皆さんは。


「それじゃ、腹も一杯にならねぇの?」


「いいえ、一応満腹感はある程度で感じるわ。サラマンドラのように元が竜だと、その満腹感も遠いかもしれないけれど、私のような元から人型の大精霊は、一般的な人とそこまで変わらないと思うわ」


 成程。


「それで二人とも、近づいてきたって事は手伝ってくれるの?」


 と聞いてみたら。


「それじゃ~、外でお水やりに行ってくるね~」


「あら、私は見てるだけよ。私が手伝ったら、お礼の意味がないでしょ?」


 ですよねー。

 知ってましたとも。


「ほらアーネスト、ドライアドのおかげで量は問題なくなったし、作るぞ!」


「へいへい……」


「はいは一回!」


「そもそもはいと言ってねぇ!?」


「蓮華さん、私もお礼される側なんじゃ……」


「アリス姉さんは良いの」


「蓮華さんが私にだけ冷たいよぉー!?」


 と話しながら、準備に取り掛かる。


「私は肉を切っていくから、アーネストはじゃがいもの皮向いて、一口サイズに切ってくれるか?」


「はいよー」


「アリス姉さんは、ちょっと辛いかもしれないけど……たまねぎの皮はむいてあるから、1cm幅に切ってくれるかな?」


「何が辛いのか分かんないけど、了解だよ!」


 アリス姉さん、たまねぎの事もしかして知らないのかな……まぁアストラル体だし、大丈夫だよね?

 そう思って、私は肉を一口大の大きさに切っていき、にんじんも切っていく。


「おわっ!?」


「どうしたアーネスト!?」


 いきなり叫ぶから、アーネストの方を向く。


「すまん蓮華、まな板が割れた」


「お前……アリス姉さんじゃないんだから……」


「蓮華さ゛ん゛ー!どう゛い゛う゛意味だよ゛ぉ゛ー!」


 アーネストと二人顔を見合わせる。


「「ぶふぅ!!」」


 二人で吹き出した。

 だって、アリス姉さんが涙まみれで言ってくるものだから。


「ごれ゛、なみだがどま゛ら゛な゛い゛の゛ぉ゛ー!」


 うん、アリス姉さん、なら手を止めよう、なんでそんな手が見えないレベルで切り刻んでるの?

 というか……なんか煙?がこっちにまで……。


「ゴホッ!ゲホッ!鼻に、くるぅ!?ちょ、アリス姉さん、手を止めて!止めてぇ!?」


「おま!アリス!それはきざみすぎだろ!ックシュン!これはやべぇ!!」


「う゛ぇ゛ぇ゛!?手が止ま゛ら゛な゛い゛の゛ぉ゛!!」


「「なんでぇ!?」」


 台所がヤバい事になりそうなそんな時。


「『クリーン』」


「『ディスペル』」


 玉ねぎの凄い煙?が消え、台所が凄く健やかな空気に。

 なんだろう、春の小川みたいな。


「何をしてるんですか、貴方達は……」


 そう言ってくるのは、ディーネだ。


「ありがとうディーネ、助かったよ。もう、アリス姉さん何してるの」


「グシュ……だ、だって、この包丁、切り始めたら止まってくれなくて……」


 アリス姉さんが涙を拭いながら言う。

 あれ、その包丁、なんか紫色に視えるんだけど……。


「なぁアリス、その包丁、どこから持ってきたんだ?」


「え?マーガリンの部屋だけど」


「「……」」


 無言になる私とアーネスト。

 そんな時、扉が開いた。


「レンちゃーん、いるー?」


 母さんの声だ。


「居るよー、どうしたのー?」


 そう言うと、こちらへ来る母さん。


「あら、皆ここに居たのね。多分レンちゃんかなって思って、急いで来たの。えっとね、私の部屋にあった包丁、持っていかなかった?あれ、錬金で失敗しちゃった呪われた包丁だから、後で処分しようと思ってたんだけど、無くなってたから……もしかしてと思って」


 その言葉を聞いて、母さん以外の視線がアリス姉さんに集まる。


「マーガリンー!そんなもの放置して置いておかないでよー!!」


「え、えぇ!?アリスが持って行ったの!?アリスなら呪われているかどうかくらい、分かるでしょ!?」


「うぐっ!!その、蓮華さんに急いでついていく為に、ほとんど視なかったというかなんというか……」


 最後の方はゴニョゴニョと言うアリス姉さん。

 私はもう我慢できずに笑ってしまった。


「もぅ、笑うなんて酷いよ蓮華さんー!」


 なんて言うアリス姉さんも笑っている。


「にしても、レンちゃんとアーちゃんにアリスで料理なんて、良いなー。私も混ざりたいけど、きっと私が混ざったらダメなやつよねレンちゃん?」


「うん。私達で作って、食べてほしいんだ。感謝の印に、ね」


「……そっか。それじゃ、出来上がるまで家で待ってるね」


 そう言って、母さんは戻って行った。

 平静を装ってたけど、スキップでもしそうなくらい嬉しそうに見えるのが隠せて無かったんだけど、気付かないであげるのが優しさだよね。

 さて、仕切り直しだ。


「よし、アーネスト、アリス姉さん、作業に戻ろう」


「「おー!!」」


「アリス姉さんはこの普通の包丁使ってね」


「そこで落とさないでよぉ蓮華さんー」


 その言葉に私とアーネストはまた笑う。

 そういえば、『クリーン』はディーネだったけど、呪いを解除する『ディスペル』をさり気無く使ってくれたのは、誰だったんだろう?

 『ディスペル』は光魔法だから、水を司るディーネには使えないはずだし……。

 そう不思議に思いながらも、カレー作りに没頭していく私だった。




 外から台所が覗き見える大木の上の枝、そこに腰掛ける一人の男が居た。


「やれやれ、アリスは何をやっているのですかね」


 そう言うのは、先程『ディスペル』を使い、密かに助けていたロキである。

 アーネストとの約束の準備は手早く済ませる事が出来たのだが、二人の時間を作ってあげたのである。

 主に、自分が見ていたいから。

 ロキは二人が笑顔で居る事がこの上なく好きなのである。


「おーいロキー!もう大丈夫でしょうし、戻って待ってましょー!」


 そう呼びかけるのはマーガリン。

 マーガリンはロキが見守っていた事に気付いていたのだ。


「そうですね、後は無粋ですか。蓮華、アーネスト、その気持ちだけで私は嬉しい。だから、無理をせずに楽しみなさい」


 地に降り、マーガリンと歩き出す。


「ロキ、レンちゃんとアーちゃん、それにアリスが揃って手料理を私達の為に作ってくれるなんて、凄く嬉しいよね。どんな価値のある物を貰うより、嬉しいよ」


「そうですね。私達にこのような時間が来るとは、二人が来るまでは思ってもいませんでしたよ。その点は、貴女に感謝致しましょう、マーガリン師匠」


「はぁ、ユグドラシルみたいにマーリンって呼んでくれても良いのに。レンちゃんもアーちゃんも、母さんに呼び方がなっちゃったから、だーれもマーリンって呼んでくれないのよ?」


「やれやれ、なら二人にそう呼んで欲しいと言えば、呼んでくれるでしょう」


「それはダメ!母さんの方が良いもん!」


「はいはい……」


 そう話し合いながら、家に戻るマーガリンとロキ。

 過保護な二人であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ