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0.プロローグ

「目を、覚ましてくれよ……蓮華っ……!」


 ベッドの上で、死んだように眠る蓮華に、言う。

 周りですすり泣く声が聞こえる。


「蓮華っ!俺と一緒にこの世界を生きるって、言ったじゃないかっ……!」


 涙が零れる。

 俺は、蓮華を守れなかった。

 この世界で、一緒に生きる事になった……親友を。

 悔しくて、悲しくて。

 口からは血が零れてきた。


「アーちゃん……」


 母さんが、辛そうに俺を見て、そして蓮華を見て、泣き崩れた。


「レンちゃんっ……ごめん、なさいっ……こうなる事を、一番恐れていたのにっ……!」


 蓮華は眠っている。

 まるで死んだように、冷たい体。

 でも、まだ死んだわけじゃない。

 だから、言う。


「大精霊達、俺に力を貸してくれ。蓮華を、助ける。その為の力を、俺に貸してくれ!」


 ここに居る大精霊達は、蓮華と契約をしている。

 だから、蓮華と精神的な繋がりがある。

 俺には魔力が無い。

 だからその魔力を、大精霊達に借りたい。

 

「良いでしょう、アーネスト。レンを救う為に、惜しむ力はありません」


 そう、ウンディーネが言ってくれる。

 

「愚問ね。レンゲを救える可能性があるのなら、なんだってするわ」


 セルシウスが続ける。

 他の大精霊達も、同じように言ってくれる。

 蓮華、お前はこれだけの大精霊達に慕われてるんだ。

 このまま、死なせはしないからな!


「アーくん、世界樹の中は、今は毒素で一杯だよ。それでも、行くの?」


 アリスが聞いてくる。

 それがどうしたっていうんだ。


「当然。世界樹の中に入れるのは、蓮華と魂で繋がってる、俺だけだ。なら、俺がやるしかないだろ?」


 例え俺以外が行けたとしても、俺は行くけどな。

 その言葉に、悲しそうにするアリス。


「ごめんなさい。私も、力になってあげたい。私を救ってくれた蓮華さんを、助けてあげたいよ……!でも、私でも……世界樹の中には入れない。だから……お願いアーくん、蓮華さんを……助けて!」


 泣きながら、そうお願いしてくる。

 ああ、当然だ。

 蓮華は俺にとっても、大切な親友なんだ。

 絶対に、助けてみせる。

 頭に手を置いて、撫でる。

 アリスは俺をじっと見ている。


「任せろ、アリス。俺が絶対に、蓮華を助ける」


 だから、そう言った。


「うん……!お願いね、アーくん……!」


 泣きながら笑顔で、そう言うアリスに微笑む。


「アーネスト、外は私に任せなさい。雑魚は一匹たりとも、世界樹に近づけさせはしません」


 兄貴が言ってくれる。


「妾とロキに外周は任せるがよい。お主は蓮華を、頼んだぞ」


 ミレニアもそう言ってくれる。

 心強い限りだ。


「アーちゃん……」


 母さんは、心が折れてしまっている。

 大好きな蓮華がこうなってしまったんだ、仕方がない。

 だから、言う。


「母さん、蓮華の心を取り戻しに行ってくるよ。それまで、蓮華の体を、守ってあげてほしい」


 それを聞いた母さんは、震える声で言う。


「アーちゃん、私、この上アーちゃんまで失ったら、もう立っていられないよぅ……」


 母さんが、大粒の涙を流している。

 悔しかった。

 蓮華の意識があったら、絶対にこんな母さんを放っておかない。

 それが今は……。

 優しい母さんは、蓮華を助けてほしい気持ちと、そうしようとして、俺まで失う事を恐れる気持ちとで、動けなくなってしまっているんだ。

 だけど、信じてほしい。


「母さん、俺を、皆を、信じてくれ。絶対に、俺達は無事で、蓮華も助けてみせる」


 そう心から諭すように言った。

 優しい母さんの心に、響くように。


「……うん、約束だよ、アーちゃん。レンちゃんを……お願いね」


 そう、言ってくれた。

 蓮華、待っていてくれ。

 必ず、俺が、俺達が……助けてみせる。



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― 新着の感想 ―
[良い点] アルスノトリアから来ましたw 僕も小説やイラストやったりしますが今は休止してます とても楽しい作品で読むのが楽しみです いろいろお忙しいようですが お身体には気をつけて頑張ってください
[気になる点] えっ?ゆるふわ?
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