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少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます  作者: ウロノロムロ
ヴァンパイアは、血を吸われて反省する
15/20

ヴァンパイアとチャラ男

2/3

それから数週間、

ヴァンパイアとチャラ男は

バイト先のコンビニでの

夜勤シフトが一緒になることが多く、

週四ぐらいのペースで会っていた。


ヴァンパイアも今でこそ

多少なりともそれなりに

人間と同様の生活を送っているが、

ここに至るまでにはそれなりの苦労もあった。


仕事を探していた当時のヴァンパイア、

昼間の強い日射しには耐えられないため、

当然ながら夜の仕事しか選択肢が無かった。


夜でも、出来ることであれば

明るい場所より

暗めの部屋の方が望ましい。


そこで最初は、

葬儀社関連の遺体安置所で

夜間警備の仕事をしていたが、

さすがにアンデッドが

遺体安置所の警備員では

ブラックユーモア過ぎて洒落にならなかった。


夜な夜な、遺体安置所にある遺体を使って

何か良からぬことをしているのではないか、

職員達の間でそんな根も葉もない噂が囁かれ

さすがに居づらくなって辞めてしまう。


-


何か自分に合った良い職業はないかと

夜の繁華街を歩いていると、

ちょうどホスト募集の貼り紙があったので

その足でそのままホストクラブを訪れた。


この世の者とは思えない程に

端正な顔立ち、美しい容姿のヴァンパイアは

採用試験に即合格し、

すぐにでも働いて欲しいと言われたので、

その日の内からホストクラブで働きはじめる。


それからあっという間に

店のナンバーワンの座を獲得。


種族特性として

人間の女を虜とりこにすることに長け、

元の世界では水の代わりに

ワインを飲んでいたヴァンパイア。


ホストクラブの店内は

ほどよく暗く、明る過ぎない。


さらには、アンデッドであり

ほぼ不老不死のため

見た目が劣化することもなく

永遠に美貌を保ち続けられる、

ルックス売りの頂点に君臨するような存在。


まさに天職ではないかと

最初は自分でもそう思っていた。


しかしホスト同士の人間関係、

嫉妬や羨望、女性客とのトラブル、

そんなことに嫌気が差し、

結局、その店も長くは続かず辞めてしまう。


それからというもの、

夜間工事現場などのバイトと

コンビニの夜勤で生活費を稼ぎ、

現在に至っている。


-


コンビニではじめて会った時から

チャラ男はヴァンパイアに興味津々だった。


長めに伸びた銀色の髪、

鋭く光る赤い目、

死人のように青白い肌。


上裸じょうらの素肌に直で、制服を

ユニフォームを着込むというおとこらしさ。


まるでズキューンと心臓を撃ち抜かれ

一目惚れでもしたかのように

彼の一挙手一投足に釘付けとなり、

もはや目を離すことが出来ない。


それもまたヴァンパイアの魅了という能力が

知らぬ間に発動しているのかもしれないが。


「スゲェ……」

「カッケェ、マジカッケェ」


若干頭がお花畑な天然キャラのチャラ男は、

はじめて一緒に夜勤に入った日は

勤務時間中ずっとそう連呼していた。


ヴァンパイアがはるかに年上で、

チャラ男が舎弟体質だったこともあり、

「ヴァンさんって呼ばせてもらっていいすっか?」

と言い出して、

今ではすっかり友人のような存在だ。


-


今宵も、ヴァンパイアとチャラ男は

コンビニの夜勤でシフトが一緒になっていた。


「ヴァンさん、近々、

異世界に一旦戻るってマジっすか?」


「あぁ、異世界もまだ消滅しそうもないし、

一旦帰って、身辺整理をしておこうかと思ってな」


異世界も消滅すると大騒ぎされてから

既に数年が経っているが

今のところはまだ何も起こっていない。


明日いきなり滅びるかもしれないし、

百年後に滅びるかもしれない、

異世界の消滅時期までに

後どれぐらいの時間が残されているのか、

猶予があるのかに関しては

まだ誰も何も分かっていない状況なのだ。


まだ大丈夫であろうと踏んだヴァンパイアは

今のうちに一度異世界に戻っておこう

と考えたのだろう。



客が全く来ない深夜の時間帯、

退屈そうなチャラ男が喋り続けている。


「自分、最近ずっと

夜勤ばっかりだったんで

生活が夜型になっちゃって困ってんすよ


昼間は太陽の日射しとかが

眩しくて仕方ないぐらいなんすよ

夜型ぁ、マジ、パネェ」


「それじゃ、まるで俺と一緒じゃないか」


「そうなんすよね、

最近、赤い液体とか見ると

なんだかムラムラしてくるんすよ


ここしばらく

トマトジュースばっかり飲んでますし


この間なんか、ケチャップのビン見たら

たまんなくなっちゃって

ぢか飲みで、一気飲みしちゃったんすよ」


「それはあれだろ、ほら

リコピンが足らなくて、

体がトマトを欲しているとか

そういう感じのやつだろ?


俺みたいなヴァンパイアじゃあるまいし」


「昨日なんか、

俺、車に轢かれたんですけどね


もうすごい、

三メートルぐらい跳ね飛ばされて

痛てぇ! って一瞬思ったんすけど


でも全然体とか平気で

ぴんぴんしちゃってて


こマ? マジでヤバくない?

奇跡じゃね? って感じになっちゃって


俺、すごくないっすか?」


「そりゃまた、

アンデッドみたいな話だな


当たり方がよっぽど良かったんだろうな」


チャラ男の異変を聞いても

ヴァンパイアは全くピンと来ていなかった。


本人はチャラ男の血など吸っていないから

身に覚えがないのも

当然と言えば当然なのではあるが……。


ヴァンパイアを刺して血を吸った蚊が

ヴァンパイア化して

次にチャラ男を刺したので、

間接的にではあるが

ヴァンパイアがチャラ男の血を吸った時と

同じ効力を発揮しはじめていることを

本人達は知る由もなかった。


チャラ男は知らぬ間に

アンデッドになっていたのだ。


ただチャラ男もそんなことを一々

真剣に考える性格の人間でもないので、

この先、本人もまったく気づかず、

単なるトマトジュースとケチャップが大好物な

タフガイとして暮らしていったので、

それほど日常生活に支障はなかった……。





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