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九撃目

今日は、朝からネットで魔法を晒した。

居候の身であるがゆえ…家主の財布が私のせいでキツイと言われ意を決して望んだにも関わらず安いCG扱いされた。


いいや、これで良かったのかもしれん。

なまじ怪しい研究員の目にでも止まり捕まり実験台にされるより蔑まされだほうが身のためである。


それに、動画に出た褒美にピザとやらも田中は、出前してくれた。

デザートは、そこのピザ屋のアイスだ。

これもまた、絶品だった。

本当にここの世界の食事は美味しい。


私は、もしかしたらこの為にここにきたのかもしれない。


そして、午後はのんびりネットサーフィンを楽しむ。

ネトゲは、昨晩田中に禁止されてしまったのだ。


田中は、私がパソコンを占領しているのでスマホで何やら操作している。


「バラバラ連続殺人事件が都内で多発だと。日本の治安はどうしたもんかなぁ…なぁ、この犯人魔法であぶり出しできないんです?」

「魔法は、何でも出来るわけではないのだよ」


細かく説明しようかと思ったがやめた。

どうせ、私の魔力は高が知れている。

話したはいいが見せることが出来ない物などこの世界のでは意味をなさないだろう。


そもそも漫画やゲームの世界では多種多様な魔法が存在してはいるが、祖国で賢者と言われる存在ですら過去や未来の出来事をのぞいたりはできないし、ネットで見る限り原爆やらの兵器には到底及ばない。

むろん、隕石を降らすこともできない。


せいぜい何もない空間から火や水、雷を出したり、生物の成長を早めたり押さえたりするくらいだ。


ヒールだって、生物の成長を早めかつ手から冷気を出すだけである。

本来の生物の治癒力を早めるだけなのだ。


「なんかパッと大掛かりに見える魔法ってないのかなぁ…」

田中は独り言なのか、話しかけているのか曖昧な声のボリュームとトーンでブツブツ言っている。


「大掛かりに見える魔法は、なくもないが」

真面目に答えると田中はパッと振り返った。

目がキラキラしている。

興味津々なのだろう。


「昨夜のネトゲで似た様な魔法はいくつか出せると思ったのだ。

例えば私は、手から火が出せるし、軽い風魔法も、使える。

それを合わせると、攻撃力はそこまで無いが見た目派手なパフォーマンスになると思う」


「マジか!いいじゃん!それやりましょう!」

田中は乗り気である…が…。


「それをやると明らかにこの部屋は炎上するし、外でやるにしても大勢の人々の目に入る」

私の説明に苦虫を潰した?ような顔の田中がいた。


「生活費を稼ぐために注目を浴び捕まりたくは無い。我儘ではあるが許せ」

自分で提案しといて酷いとは思うがなかなかハードルは高いものだ。


そしてまた2人は黙々とネットサーフィンに勤しんだ。


夕方、田中が夕飯の買い出しに出かけると言うのでついて行く事にした。


現状ネットでの情報収集には勤しんでいるが、まだ外の本来の刺激は中々強過ぎて1人での外出は出来ないのである。


服装は、田中の白無地Tシャツに田中のチノパンである。

足はサンダルで髪はひとまとめに束ねるだけだ。


車で近場のスーパーへ行く。

初めて車に乗った時は衝撃が強過ぎて気を失ったものだ。


買物中は、田中の後ろについて回る。

日中のスーパーは初めてである。

多くの商品に心が踊る。


私自身元々一人暮らしをしていたのだが、食事は自分で作った事はなくほとんど市場にも出たことがないため比べる事は難しいが…なんでも揃うここは素晴らしい場所だ。

市場特有の匂いもない。

本当に不思議空間だ。


「あのー?もしかして、女騎士さんですか?」

いきなり見知らぬ少女に話しかけられた。


どう答えていいかオロオロする。

田中は気づかず少し離れた場所で魚とにらめっこしている。


「ええっと、女騎士ではなく兵士ではあるが…」

正直に答えてみる。

「キャ!本物きたー!すごーい!かわいい!写真撮っていい?」

「かまわ…」

かまわぬと言いかけたところでグイッと腕を引かれた。

田中であった。


「はーい写真禁止なー、お触り禁止。今ちょっとプライベートなんでごめんね」

田中はそう言うと私なら腕をぐいぐい引いてあっという間に車の中まで戻された。


正直ホッとしているが…

「どうしたと言うのだ?買物もせず戻るなんて」

そう聞くが田中は、スマホを取り出しずっと睨みつけている。


「ヤバイかも」

そう田中は言った。

何か田中の予想外の事が起きているらしい。


「一旦確認の為家に戻る」

田中は、帰宅するまで終始無言であった。


お喋りな田中が何も言わないなんて何があったのだろうが…。


よろしくお願いします

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