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五十六撃目

草原に朝日が昇る。

朝日と共にドラゴン捜索が始まった。


草原が広がるこの地は放牧に適した土地だ。

比較的乾燥しているので、特殊な薬草なども栽培するに適しているし、この時期は作物もよく育つ。


林も少なからずある。


…私が認識している範囲でドラゴンが暴れる様な土地、地域に見えない。

しかも、唐突に暴れたと…。


一体何があったのだろう。


「田中今日から乗馬だが、1人で大丈夫なのか?」

「少しは習いましたから多少は」

「なら離れずについて来い」


田中は乗馬しながら発煙筒を炊いたりできないので私と共に行動することになっていた。


そもそも田中1人で他のモンスターにあった時にやられてしまいそう…と言うのもある。


話によるとここら辺の地域に来ればドラゴンの方から現れる…ということであったが一向に現れぬまま1日が過ぎた。


夕方ドラゴンが一番初めに現れたと言われる領主の屋敷のある街に到着した。

他の3人も揃っている。


ガレキや焼け跡の残る殺伐とした場所であった。


ここにもかつて人の生活があったのであろう…。


人々の遺体も既に白骨化していた。

小さな子供のものまである。


何とも言えない気分だ。


ドラゴンは、相当派手に暴れたのだろう領主の屋敷は半壊していた。


「何があったんでしょうかね…」

田中が呟いた。


相当人が怒りを買った様に感じる。

我々では説得できないのではないかと、少し不安になった。


「ドラゴンを、怒らせてしまった手がかりが見つかればいいのだが…」


崩れそうな屋敷の中に入る。

中を散策するが特に収穫はなかった。


「今日は、ここに野宿をしよう。

何か収穫のあった者はいるか?」


3人はかぶりを振る。

収穫無しか…。


野営の準備中一匹のスライムが現れた。

騎士の1人が切ろうとしたがそれを制しスライムを逃す。


基本的に大した害もないし、怒れるドラゴンの住まう土地で無駄な殺生はしたくない。


全員の口数少なく夜がふける。

魔獣避けの香を焚いたし、一応街中なので魔獣避けの魔法陣はまだ効果があるはずではあるが見張りのため1人ずつ交換で番をする。


私が火に薪をくべていると1人の騎士が話しかけてきた。


ドラゴンの土地で緊張し眠れないのだと言う。


仕方がないことだと思う。

今でこそドラゴンの存在を何とも思わないが地球に行く前までは、一度遠くからしか見たことがなく神々しい存在だと思っていた。


話すことも特にないので、地球にいた頃の話をする。

騎士は、興味深げに聞き入っていた。


「ドラゴンや他の他の神と普通に会話できるなんて肝が座っているんだな」


「そうでもないぞ、たまたま徐々に鍛えられていっただけで途中から感覚が麻痺してただけだと思うぞ。


それに彼らは我々に対等に接していてくれた。

本来なら話をする事さえおこがましいのかもしれん」


「今回のドラゴンともそうやって話すつもりなのか?」


「いや、そもそも話をする前に攻撃を受けてしまうかもしれん。


まぁ、その時はその時だ。

逃げるしかないだろう。

こちらの攻撃は当たる気がしないからな」


「逃げてもすぐ捕まるだろう?」


「そうだな…そこで殺されてしまうかもしれん。

だがな…殺されて怒れるドラゴンの気が少しでも紛れればとさえ思うよ。


まぁ、幼い子供さえ殺すドラゴンだから何とも思わないかもしれないがな」


「…そうですね」


「何があったのだろうな…ドラゴンは、話ができると思うのだが…そうとうな事があった…んじゃないかと思う。


彼らは子煩悩だから、暴れるとしたらそれが原因ではないかと思うのだが…」


「そうなのか?」


「あぁ、少なくとも私が今まであったドラゴンはそうだった」


「ドラゴンが子煩悩だとして…そうとうな事…例えば子ドラゴンが人間に殺されたとか?害されたとか?」


「その可能性は大きいと思う。


出来れば、殺されたのではなく害されたくらいがいいな…殺されたのでは何の太刀打ちも対策もできんからな…


それに…今日見た白骨化した遺体…子供をかばう様に重なったものがあった。


ドラゴンも、人も同じだと思う。

だから、子供を殺されていてほしくはない」


「人間が無差別に殺されたのにか?」


「仕方あるまい。

人間が同じことをしたのだ。


…だが、これ以上人間を殺してほしくない」


パチパチと火花が飛ぶ。


「頼む、もう怒りを鎮めてはくれぬか?

まだ、殺したりないなら私の命をさし出そう」

私は、騎士を見つめる。


パチパチと火の燃える音だけが響いた。


騎士は…いや、ドラゴンは何も言わず火をただ見つめる。


「…なぜわかった?」


「何となく」


「いつから気づいていた」


「今だ。

ドラゴンは、人にも化けられると思ったらそう思えてきたんだ」


ドラゴンが火から目を離し、こちらを見据える。


「怖くは無いのか?」


「怖く無いと言ったら嘘になる。

やりたい事もまだたくさんある。

しばらく会ってない親にも一言謝らなければならないしな」


「そうか」


「いつからその人間に化けていた?」


「初めて城であった時からすでに」


「なるほど、それなら今まで気づかなくても仕方がないな。


ちなみに、殺される前に何があったか聞いてもいいか?」


「お前の推測した通りだよ。

私達は、この地に人間のフリをして暮らしていた。


ある日ここの領主が娘にちょっかいを出してな…幼女趣味というのか?


イタズラを…娘は、ドラゴンであるが怖くてドラゴンに戻る事も出来なかったそうだ。


そして、娘は自害した」


私は、目をきつく閉じた。


娘…このドラゴンにとっての第一子だ。

ドラゴンは初めに娘を産み後は遺伝の問題で男ばかりだそうだ。


だから、ドラゴン全体にとってもメスと言うのはとても大切な存在だそうだ。


「すまない」


「お前に謝られたところで許せる問題では無い」


「分かっている…分かってはいるが…謝らせてくれ」


…。

しばらくまた火の燃える音だけが響いた。

よろしくお願いします

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