六撃目
次の日
今日の田中の仕事は、休みらしい。
田中は朝から何やら忙しそうだ。
休みの日くらいのんびりしたら良いのにと思う。
まるで生き急いでいるようだ。
ちなみにこの国では週休二日制と言って週七日間あるうちの二日間休みだそうだ。
七日間中2日の休み…どうせなら私も同じように働きたかった。
祖国では10日に一度の休みだし、15歳になる成人前は毎日座学やダンス、剣術の稽古に励んでいた。
ただ、拘束時間は明らかにこちらの世界の方が厳しい電気ある生活者達は常に明るい世界で寝る間もなく働いているからだ。
うーん?こちらの世界で働いたことが無いから比較できぬがどちらもどっちだろう。
私の世界での暦とは多少異なるようだが大体の1日の時間の感覚は同じに思えるし、私の話を聞いた田中の計算によると年の移り変わりにおいてそこまで差異はないらしい。
つまる所、私はここでも元の世界でも年齢は17歳という事である。
ちなみに田中は30歳だそうだが…私の目には同じ年くらいにしか見えない。
この国、日本の住人は皆若く見える。
ネットで見た白人と言われる人々、特にロシア人に私の見た目は似ているし、祖国の住人にロシア人は似ているように思う。
まぁ、私は銀髪だし、祖国には金髪もいるが白人と違い髪の色はカラフルだ。
目の色も同様祖国は様々だったし、私は緑だ。
それから田中に言わせると私は、恐ろしく美人であるとの事だ。
ネットでロシア人を見る限りそこまで美人ではないのではと反論したがネットに写っているのはモデルだからとか美人だから…らしい。
祖国では、平均的だったのでそこまで褒めてくれるとニヤけずにはいられない。
「ほら、ぼーっとしてないでご飯片付けちゃってください」
色々と思案していると田中から朝飯を食べろと催促が来る。
田中は既に食事を終え、何かしらの機械をいじっていた。
あれは…確かビデオカメラと言うものだったと記憶している。
さて…今日のメニューは、味噌汁、目玉焼き、米、ウインナーだ。
初めて味噌汁を出された時その匂いに後ずさりしたが、戦場での虫を食べる食事に比べればと飲み干したが…今では割と好きなメニューだ。
味噌汁は、いつも具が違い飲むとホッとしてしまう。
ウインナーは、祖国のものより始め味が濃く感じたがそのぶん旨味が強く獣の臭みも少ない毎日でも食べたいくらいだ。
ずずずずーっと味噌汁を飲むと私は、あるものがないことに気がついた。
「田中殿!デザートがないぞ!」
田中はカメラから目を外し冷えた目でこちらを見据える。
「朝からデザートなんてあげませんよ!」
その冷たい一言に私の身体は凍りつく。
「な…なぜだ?昨日までは、朝のデザートにプリンかゼリーがついていたであろう?」
やっとの思いで田中に聞き直す。
「うちでは朝からデザートなんて普段たべてませんでした。ラファ氏がプリン狂だから仕方なく出していたんてますがここ1週間で我が家のエンゲル係数は跳ね上がっているんです!はい、論破!」
エンゲルケイスウとは何のことだか分からんが田中は本来なら出さない物を出していたということか…。
くうぅ…今無くなるなら初めから出さなければ我慢できた…かもしれないのに!
私は、恨めしそうに田中を睨んだ。
「そんな顔しても無駄ですよ!」
そんな顔だと!?田中は、こちらを見ていないではないか!
「ラファ氏の事なら単純だからわかるんです」
ぐぬぬ…心の中で思った事なのに返事が来た。
解せぬ。
「食事を終えたんなら流しまで運んでくださいね。水に浸けるだけで結構です。そしたら、脱衣所でコレに着替えて戻って来てください」
田中は、依頼が入っているという紙袋を差し出して来た。
私は、指示された通り食器を片付け着替えた。
居候がゆえ、家主には逆らえぬ。
中の服は田中がいつも仕事に行くときに来ているスーツと言われるものと同じだった。
ただ、田中用のではなく明らかに私用にあつらえたものっぽいが…いつの間に購入したのだろうか?
「田中殿、何とか入ったが二の腕がキツイ。コレで着方はあっているのだろうか?」
「筋肉のせいでしょう、ラファ氏の場合体格的に吊るしはキツイのか…」
田中がこちらを見ると共にいつぞやの人間らしく口をパクパクさせていた。
「どうかしたのか?着方が違うのだろうか?」
私が田中の隣に座り直すと、田中は一歩身体を右腕で、口を押さえ左手をブンブンと降った。
「ちょ…待ってください!」
何だろうか?
私は、、正座したまま田中の様子を伺った。
「はぁぁぁぁ、ちょっと忘れかけてた」
田中はそう言って一呼吸直すと姿勢を正した。
「えっと、着方は間違ってません。すみません、少しサイズミスです。でも、問題ありません」
「問題ないと言う感じではなかったが?」
私は、いささか不安に思う。
先ほどの田中の行動は変だ。
「いや…そのスーツめちゃくちゃ似合ってますよ。いつもダボっとした僕のシャツ着ててニートしてたから美人なの忘れてました。それから…その…」
田中は真っ赤になって下を向いた。
「胸のサイズが大きすぎでボタン余り閉まらないんですね…すみません、次から衣類を用意するとか気をつけます」
そう言われて私も顔が赤くなるのを感じた。
田中は、普段冷たい発言が多いのに時々しれっと褒めてくる。
美人と面と向かって言われると嬉しい。
「服のサイズは気にしなくていいぞ!実家ではこのくらい胸の空いたドレスをよく着てたからな」
ちょっと変な雰囲気なのを和ませたく、とりあえず服についてのフォローをいれておく。
胸はきつければ開ければいいだけだ。
むしろ、腕の方が気になる。
「さて、スーツなぞ着たからには会社行くのだな?我に務まるだろうか?」
「あ、いえ…確かに働いてはもらいますが会社に行くわけではありません」
田中はまだ顔を赤くしてこちらを見ようとしない。
「会社に行かず働くとはどのような事だ?」
田中はビデオカメラを持ち上げた。
「コレで儲かるんです」
…意味がわからない。
「ふふふん、ラファ氏はまたに動画をパソコンで見たりしますよね?ソレですよ」
ますますわからない。
「この世界ではネットに動画をあげて、その動画を見られることにより周りのバーナーなどから広告収入を得るのです」
田中は自信たっぷりだ。
「いえね、以前やったことがあるのですがその時は全然閲覧数伸びなかったんです。閲覧数が伸びないと収入にならないのですが…ラファ氏の魔法なら絶対食いつくハズです!」
「成る程!…と言いたいところではあるが、魔法をこの世界で使うと、私は悪い研究員に捕虜にされ実験台となり殺されてしまうのでは?」
数日前にそんなラノベを流し読みしたばかりだ。
元の世界に帰る前に人体実験で殺されたらたまったもんじゃない。
「大丈夫ですって!ほとんどの人間はラファ氏の魔法を本物だとは思いませんもん」
「ソレでは閲覧数は伸びないのでは?」
「そこも違います!きっと反感やヤジも含め閲覧数はグンと伸びます!ラファ氏美人だし!」
…今日はやたら美人押してくるな。
ちょっと恥ずかしい。
よろしくお願いします




