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四十九撃目

朝…卵と言うよりは枕ほどはある大きな玉を抱えたコッコアルットが、嬉しそうにリビングに腰掛けていた。


「あ、ラファージュランおはようございます!

見てください!

可愛い可愛い受精卵ですよー」


「卵なのか?綺麗な丸い形なのだな」


「ええ、綺麗な子ですよねぇ…

あ、触らないでくださいませ、表面は人の皮膚はどの柔らかさなのですから、


破けたら大変です」


触ろうとした手を慌てて引いた。

思っていた卵とは違うがまぁ、成功なら良しとしよう。


「これで小林家は安泰です」


「いつ産まれるのだ?」


「一ヶ月ほどで孵化しますよ。

きちんと孵化するまでは、あなた達を帰すわけには行きませんが…」


なるほど…。


「おはようラファ氏、コッコアルット氏。

おや?それはもしや…?」


「ええ!受精卵ですわ!」

コッコアルットがにこやかに返した。




それから、私と、田中は一旦家に帰ることになった。


コッコアルットが、ハワイの別荘と小林の家を転移魔法陣で繋いでいたため、苦しい思いもせず行き来出来ることがわかったためである。


タルッタとルモエラは、東京よりハワイの方が空気が綺麗と言う理由で残ることにした。


小林は…私達が、帰るまで姿を現さなかった。




東京に戻るとしばらくはドラゴン関係のニュースばかりが続いたが、2週間も経ったところで、他の話題がニュースを閉めるようになり一カ月過ぎる頃にはほぼニュースに上がらなくなっていた。


むしろ、、CGだったのではとネットで噂される程度になっていた。


田中への監視の目は週一あったが、挨拶程度の確認がある程度だった。

私の剣も戻ってきた。


その間に9月に入ったが、まだまだ暑い日が続いている。


私は、一カ月丸っとニート生活を楽しんだ。


そして…コッコアルットから子供が孵化したとの連絡が入った。

田中は、遅い夏休みをとり会いに行く事になった。


もちろんコッコアルットの転移魔法陣を利用してである。


別荘に着くと産まれたばかりの赤ちゃんを抱えたコッコアルットが嬉しそうに出迎えてくれた。


名前は、小林タルトだそうだ…え?キラキラネーム?


タルトってお菓子だよな?と、思ったがタルッタの子供だからだそうだ。

少しでも親子の繋がりがあればと。


関心はないと言っていたタルッタであったが産まれたばかりの子を抱く姿は母親そのものである。


ルモエラも弟が出来て嬉しそうだ。


だが、何とも不思議な異母兄弟だ…。


「もう良いのか?もう少しゆっくり子供との時間を大切にすれば良いのに…」


「いや、これ以上一緒にいると情が湧くしな」


「ルモエラ…タルトとずっと一緒が良い」


「ルモエラ…」

ルモエラのお姉ちゃんぷりにちょっとうるっとくる。


「ずっと一緒にいるわけには…帰らないといけないんだ」

私は、ルモエラの頭をくしゃくしゃに撫で回した。


「一緒にいたければ、いればいいじゃないですか」

コッコアルットが小首を傾げる。


「元の世界に戻るために子を成したのだ。

ここに留まったら元も子もないではないか」


タルッタが、呆れ顔だ。


「誰もここに止まる必要はありませんわ」

ことも投げにコッコアルットが発言した。


「!?」

そこにいた全員がコッコアルットを見る。


「私にとっての小林様は、今やタルト様ですわ」


「…確かに!」


「親が子を連れて行きたいのなら私は同行するだけでございます。


もっとも、小林様が、ここに残りたいなら残るべきでしょうがまだ幼いゆえ母親が一緒ならそれに越したことはありませんから」


ぐうの音も出ない。


「ちょ、待ってくれ!俺は置いてかれるのか?」


「そうですね…あなた様はたぶんここに残った方がよろしいかと存じます。

新たな世界に順応するのはとても大変な事ですから。


その点、タルト様はまだお子様なのでどちらで過ごしても問題無いかと思います」


「希望するなら、連れてってくれるのか?」


「どうでしょう?私の一存ではきまりません。


あなた様はこの世界の住人そのものですからね」


「タルトだってこの世界の住人ではないか?それに父親がいた方がいいのでは?」


「タルト様の組織はまだほとんどタルタルのものですわ。

設計図だけはあなた様のものですが。


それに、あなた様があの世界に行ったとして…父親として何が出来ましょう?

生活する事自体できるかどうか…」


…主人が変わった途端元の主人には塩対応だ。

小林はぐうの音も出ないのかがっくりと頭をもたげた。


「ぼ…僕も連れてってはくれないのか?」

突然田中がコッコアルットに詰め寄った。


「田中様…あなたがあっちの世界に行く必要はございません。

何か理由でも?」


「ぼ…僕は、僕は!」

キッっと私を見る。


「僕は、ラファが好きだ!

一緒にいたい!」


呆気にとられた。

「え…あの…その…」


「好き好かないは、どうでもよろしくってよ。

あなたも連れて行くことはできかねます」


バッサリとコッコアルットが、田中殿を切る。


「だそうだ」

私は、何も言えなかったが田中は諦めない。

「だ…だったら、ここに残れラファ氏!」


田中の目は本気だった。


…。

私は、かぶりを振る。


「すまない、私は私の元いた世界にいるのが正しいと、思う。

こちらの世界はとても、楽しい。

だが…私が住むべきところではないのだ。


それに…以前も伝えたが、私にはまだそう言った感情は分からないのだ」


…。

「では、ここで本当のお別れなんですね」

「ああ…世話になったな」


よろしくお願いします

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