四十六撃目
田中と話したいことがあったはずなのに照れ臭くて会話はあまりせず別荘に帰って来た。
タルッタとルモエラ、コッコアルットは食事を摂らないので田中と小林の3人で食事をとる。
コッコアルットは、給仕に忙しく働いていた。
「なんだか、3人で焼肉を食べたことが懐かしく思えますね」
「そうだな…焼肉奢りの件はまだ有効なのか?」
「ったく、ラファたんは飯を食いながらもましのことしか相変わらず考えてないんだな」
「何を!そんな事は無いぞ!」
穏やかな食事は久しぶりぶりだなと思うと、心まで温かくなる。
「俺と…俺と一緒になったら今後食うことに困ったりしないし、ラファたんが美味いと思うもの全部食べさせてやることができるぞ」
ピシッとその言葉でその場が凍りつく。
小林は、1人だけ何事も無かったようにフォークとナイフを動かしていたが…。
「えっ…ええっと…」
反応に困った。
「もちろん、一緒になりたくなければ子だけ産んでくれても構わない。
産んだ後元の世界に帰ればいいし、こっちが気に入ったんならこっちに残ればいいし好きにしていい。
子供は安西が育ててもいいそうだ」
そう言われ再度凍りつく。
「それも嫌か?」
小林がナイフとフォークを置きこちらに視線を移した。
…どう反応していいかわからない。
私が固まっていると小林が助け船を出した。
「な…えっと、それなら。そうだ、海外の女の子を買ってその子に産んでもらえばいいじゃないか?」
割ととんでもない提案だと思うが、私にその気がないのでそれも仕方がないと思ったが…。
「俺は、全く知らない子を買って子作りしたいとは思えない。
あのハムスターの子も同様だ。
ラファたんだから…いや、ラファたんなら俺の子を産んで欲しいと思う」
…。
何と…答えたら良いのだろうか。
「その…正直な話、私にはまだそう言った感情は分からないんだ。
だから、その…小林殿の気持ちに答えることはできそうにない」
「俺の子を産んだら元の世界に帰れるんだぞ?
…その、脅したくはないんだが。
それとも、誰か他に好きな男でもいるのか?」
「先ほども伝えたように、その…そう言う感情はまだ分からないんだ」
「田中は、どうだ?」
「田中?」
そう言われ田中を見ると田中は真面目な顔をしてこちらを見ていた。
「田中がどうかしたのか?」
「田中の事は好きじゃないのかと聞いている」
あっ!と、思った。
「田中の事は…今まで異性として、認識してなかった」
そう言われれば、さっきもネックレスを貰った時に戸惑いを覚えたでは無いかと思い出したが、私の答えを聞いて田中も小林も苦笑いをした。
「僕とラファ氏は、そんな関係ではないですよ」
「そうか、無粋な質問だったなり失礼した」
「でも、そうなると…どうしたものか…俺だって誰でもいいわけじゃないんだ。
かと言ってタルッタが暴走する前に何とかしないといけないし…
安西は頑なだし」
「…ちょっと考えさせてくれ」
「無理強いはしたくない」
その後特に会話もなく食事を終え個々に部屋に戻っていく。
正直この世界に来てこんな事になるとは思いもしなかった。
元々15歳で好きでもない男と結婚する予定だったのだから2年間は自由に暮らしていたから年貢の納め時なのかもしれない。
そもそも小林は、一緒にならなくても子供さえ産めばいいと言っていたではないか。
いや…それは、親としてどうなのか?
思えば、貴族として子をなしても自分で育てる事はほとんど無い。
ほぼ、乳母が子育てをするのだからコッコアルットに、任せても同じでは無いか?
私の母親は…あまり、私とのふれあいは無かったな…だが、しっかりと見ていてくれるところは見ていてくれた。
だから、やっぱり産むだけではだめだ。
他に方法は?
コッコアルットに無理やり帰る方法を聞くか?
いや…タルッタにさえ、自衛隊の力をもってしても全く歯が立たなかったのにタルッタより強いコッコアルットに勝負で勝てる気がしない。
コッコアルットに弱味はあるのだろうか?
…先ほど小林がコッコアルットとこの件について口論して負かされたと言っていたでは無いか…。
長年一緒にいた小林が負けたのだ。
弱味なんて無いのだろう…。
うん?弱味?
弱味は小林自身では無いか?
そう思い立ったら話だけでも聞かなければ…。
私は、まだ食事の後片付けをしているコッコアルットのところに向かった。
よろしくお願いします




