五撃目
パリ…パリ…
カチカチ…
私は、薄暗いクーラーの効いた部屋で毛布に包まりながらパソコンに向かっている。
カチカチカチ…
キーボードの使い方も中々上手くいくようになってきたと思う。
パリパリ…
今日もポテトチップスは、美味しい。
やはり塩味に限る。
画面をぼんやり眺めていたが、急に身を乗り出しマウスを握りしめた
「ふおぉぉぉぉぉ!SSレアキャラゲット!マジ今日のガチャ冴えてる!」
私は、小躍りしたくなる気持ちを抑え両手を振り上げた!
バンッ!
「いい加減にしなさい!」
突然扉が開くといつの間にか帰ってきていた家主である田中が怒鳴った。
「おお!田中殿!ご帰宅であったか!」
私は、田中に軽く手を挙げ挨拶すると再び画面に目を戻した。
「もしかして朝からずっとオンラインゲームしてたんですか?」
田中は呆れた声を出す。
「うむ!、我は手持ちが無いからな!こうして、30分ごとにココをクリックし星を貯めるとガチャが無料で引けるのだ!また、それだけでは…」
ブチッ
ゲームのガチャの無料キャンペーンについて説明しているといきなり画面が黒くなる。
田中がパソコンの、電源を切ったのだ。
しかも、強制的に。
「うぁぁぁぁぁぁ!なんて事!酷いぞ田中っ!」
私は、田中をキッと睨んだ。
「はいはい。せっかく良い目が悪くなりますよ?それに、一日中パソコンに張り付いてたら肩も凝るし、筋肉だっておちます」
田中は、文句を言いながらスーツを脱ぎ始めた。
「だいたい僕が働いてると言うのに貴方は怠惰過ぎます。出会った頃が嘘のようにニートを満喫しないでください。まだ1週間しか経ってないんですよ?ここにきて」
そう、私は1週間前突然この地球に転移した。
原因は、現在不明。
言語、読み書きは、何不自由無く通じる。
身体の構造は、細かくはわからないが食う寝る等の最低限の生活する上での物は地球人と同じに思える。
まぁ…ただ、生活の全ては全く違う質ではあるが…。
初めは色々驚きの連続であった。
車、電車、水道、トイレ、冷蔵庫等の生活機器、飲食物…王の暮らし以上であるように思える。
まぁ、王がどのように暮らしていたかは想像にすぎないが。
「だいたい適応能力高すぎでしょ?本当に異世界人なのかここ2、3日疑わしく思えますよ…じゃ、僕シャワー浴びてくるんで」
田中はヒラヒラと手を振ると部屋を出て行った。
田中の部屋はワンケーと言うらしく、一般的な一人暮らしの部屋だそうだが私からするとかなり狭いように思える。
私が居候しているからさらに狭い。
まぁ、部屋が狭いだけで確かに何不自由なく神のような暮らしができるのは確かだ。
そう…彼ら地球人は、神ではないらしい。
魔法も使えない。
魔獣も居ない。
武器も普段から常備しない。
その代わり魔法に成り代わるものが沢山ある。
生活もとても豊かだ。
こんな世の中なら戦争なんてものは無いと思ったが、この世界にも戦争はあり兵器もあるとの事だ。
初めは信じられなかったが、ネットで色々ググったら写真、動画など多様な媒体でその事実を確認することができた。
他にもネットは、沢山の事を教えてくれた。
未だわからない事だらけだが、調べれば調べるほど沢山の情報が手に入る。
ただ、、田中はネットの情報には嘘や大袈裟な物も多く含まれると警告してくれた。
だが、私にとってはどれが事実で虚偽であるかまだまだ判断はつきそうにない。
そして、私が求めていた元の場所に帰る方法も今の所見つけてはいない。
転移は、この世界では夢物語だそうだ。
騎士になる事、元の場所に帰る事…私は何をしても全てから回るようだ。
むろん諦めたわけではない。
転移ができなければ、そもそも私はここにはいない。
そして、私のいた所では勇者召喚の儀という魔法がある。
さらに田中はフィクションだというが地球にも沢山の『異世界転移、転生しました』系の読み物が溢れかえっている。
きっと、どこかに私以外の転移、転生者もいるだろう。
彼らに聞けば元の場所に帰る方法も見つかるかもしれない。
私は、田中が落としたパソコンを再び立ち上げた。
「コラ」
髪を拭きながら田中が部屋に戻ってきた。
「さっき一日中パソコンは、ダメだって言ったでしょ」
「我はただ遊んでいたわけでは無いのだ!元の世界に、戻る方法をだな!」
私は力いっぱい反論する。
「ならガチャ引く必要ないでしょ?はい論破」
田中にマウスを奪われシャットダウンされる。
ぐぬぬ…田中め。
「あと、ちゃんと飯を食え…って、食ったのか」
田中はお弁当箱の中身を確認する。
「足りないぞ!」
私は、ポテトチップスをガブガブ口に放り込んだ。
「働かざる者食うべからず。はい論破」
「田中殿は最近優しさが足りぬ…私は戸籍もこの世界の常識も、無いのだ働けぬ」
居候だからと、掃除、洗濯、食事の準備一度したら田中に和やかに二度としないと誓約書を書かされた。
実質何もするなと言われてるではないか。
「ふむ、そう言うと思ってたよ。だけどね、ふふふんあるんだよできる仕事考えた」
田中は得意そうにニヤリと笑う。
絶対良くない事を考えてる証である。
よろしくお願いします




