四十撃目
「勝手に殺すな!」
「だっでー、自衛隊員に喰われたってぎいだんでずぅ」
田中が泣いて話にならない。
その間どんどんハンバーガーが冷えていく…ハンバーガーが!
「田中殿!話はその辺にして…」
「ラファ氏ぃぃーよがっだー」
「みっともないぞ!私より年上だろう!しっかりしろ!」
泣き止むどころか、泣き崩れていた…。
もうダメだ。
諦めよう…。
「田中殿が喜んでくれて嬉しいぞ。
そろそろ食事にしよう…色々話したい事があるのだ。
良いか?私は食べるぞ」
私は強行突破する事にし、前言して食べ始めた。
あぁ…久しぶりのまともな食事。
田中とは別の意味で涙が出る。
「カオスな光景だな。
2人揃って泣き始めるとは…」
ぬ!話をするまで声をかけるなと言ったのに!
「ふへ?」
田中が鼻水をすすりながらキョロキョロする。
「ちょっと、待てって言ったであろう。
田中殿もそろそろ食事にしよう。
腹が落ち着けば気持ちも落ち着く。
いらないのであれば、私がいただくぞ」
「はひ」
ぐすぐすと鼻をすすりながら食事を取り始めた。
内心舌打ちをした。
何も言わずに田中の分まで楽しめばよかった。
「さて、腹も満たされたところで話がある」
田中は、食べ始めたばかりであるが。
「田中殿は、私が食べられたと勘違いをしていたが、私達が話をしている途中で自衛隊が合図なしに攻撃してきたのでタルッタが私を咥え飛んで場所を変えただけなのだ。
それから…色々あって、何もつたえずあ中々直ぐに戻ってこれなかった事について謝る。
かなり心配をかけたようですまなかった」
「自衛隊が勝手に攻撃をはじめたのですか?」
「仕方がない状況下だったのだ。
魔法陣が発動し多くの人間が亡くなったであろう?
そんな、ピリピリした状態の時にタルッタが人型からドラゴンの姿に戻ったのだ。
攻撃を、受けても仕方あるまい」
「こちらの、人間は野蛮だ」
またタルッタが口を出す。
田中が不安げにキョロキョロする。
「あの…さっきから声が…」
「だから、紹介するまで黙っておれと言っているだろう。
話がややこしくなる」
「お主の話がダラダラ長いからだ」
そう言われため息をついた。
「物事には順序があるのだ」
「あの…どなたとお話ししているのですか?」
泣き止んだ田中が不思議そうに、こちらを見てくる。
「私だ」
テーブルの上にちょこんとハムスターが乗っていた。
「これ、勝手に出てくるな」
たしなめるが、出てきてしまったから仕方がない。
田中が、目をパチパチとする。
もう、この目の動きが驚いた時の行動だと把握している。
私賢い。
フフーンと、胸を張るが…3人…いや、正確には1人と2匹にスルーされた。
ま、まぁ、そんなことはどうでもよい…いいんだもん。
…ぐすん。
「何1人で百面相してるんですか?
もう、色々ありすぎて…順応する事に慣れましたが…いつの間に喋るハムスターとお知り合いになったんですか?」
「ハムスターではない!まぁ、この部屋が小さいのでこの姿ではあるが…
これ、お主まで出てくるではない」
気づくと2匹目のハムスターがテーブルの上に乗っていた。
田中の家が小さいし、この2匹にとってハムスターの姿だと色々やりやすいのでこの姿になって貰っている。
見た目も良いしな!
「えっと…1匹のハムスターはなんとなく誰だかわかる気がするのですが…もう1匹もいるのですね…ちょっと顔洗って頭冷やしてきます」
田中は、フラフラと顔を洗いに行き直ぐに戻って来た。
そして、テーブルの前に正座をする。
「この2匹…もしかしてドラゴンですか?」
田中の質問に頷く。
「でもって…こちらの大きい方のハムスターは…タルッタですよね?」
「その通り、大きい方がタルッタで、小さいのはタルッタの娘のルモエラだ」
田中は、そのまましばらく固まって動かなかった。
よろしくお願いします




