三十九撃目
「で…、お前の言ったことは本当なのか?
コッコアルットが、こちらに自ら来たというのは」
「そう確認しなくとも、本人がそう言っていたのだ。
それよりもルモエラは、一緒に地球に来たのか?」
チッっと、タルッタが舌打ちした。
「一緒に寝ていた時に飛ばされた」
何ということだ。
子供連れとは…幸か不幸か…。
「だから、帰りたかったのか…いや、だから人間を危険視したのか…」
タルッタは、居心地が悪そうにそっぽを向いた。
タルッタが乱暴に行動したのか何となくわかった気がした。
元の世界に比べここはたぶん、ドラゴン…いや、人間以外の動植物にとって子育てしにくい場所な気がする。
タルッタにとって人間を攻撃するのは単なる母性本能に過ぎなかったのだ。
「だが…それでも人間を虐殺していいものではない。
貴様が嫌悪した人間と、同じ行動ではないか」
「黙れ!お前に何が分かる!」
タルッタな吠えた。
「分からぬ!」
私は、真っ直ぐに見つめる。
「タルッタ…私も分からない…無意味」
ルモエラが口を挟んだ。
「お前は子供だから分からんのだ、口を挟むな」
「子供でも分かる。
いけないことはいけない。
我らは人間食べない」
…食べ無いなら殺さないということなのだろう。
だが、それについては同意しかねる。
こっちの世界でも元の世界でも、食べること以外で人も他の生き物を殺す。
例えば、害虫などだ…。
害虫は、害があってから殺すのではなく、害があるとわかっているから殺すのだ。
ドラゴンにとって人間は害虫なのか…。
何となく腑に落ちてしまった。
タルッタの、気持ちがわかってしまったのだ。
私は、口をつぐんだ。
ダメだな…私は。
いつも相手に流されてしまう。
「そんな事は今どうでも良い!コッコアルットはどこにいる?」
タルッタは、いらただしくこちらを睨んでだ。
「残念だな。知らん。
もしかすると、先ほど貴様が殺した人間らの中に知っているものがいたかもしれんがな」
「なっ!」
「貴様も知っている…いや、見ただろう?コッコアルットは保護している人間がいる。
その人間の知人ならコッコアルットの居場所を知っているかもしれん。
だが、先ほど貴様が殺したかもしれんのだ。
まぁ、コッコアルットが保護している人間は死なないだろうがな」
冷たく突き放す。
「だが…」
一度そこでとめる。
タルッタが生唾をのんだ。
「だが、貴様がこれ以上人間に被害を及ぼさないと誓えるなら私のツテで何とかなるかもしれん」
ガァァァア!
タルッタが吠え、こちらに牙を剥く。
「威嚇のつもりか?
私を、殺しても構わんが一生このままコッコアルットに、会なくなるかもしれんがな」
ガァァァァア!!
タルッタは、再度吠え牙を剥いたが私は、腕組みをして知らん顔である。
よろしくお願いします




