二十ニ撃目
「ここです、ちょっと待ってください」
田中は何処かに電話をかける。
多分友人のところだろう。
もうこの周辺に来た時には魔法陣があるとハッキリと分かる感覚がしていた。
「小林氏、到着した。扉を開けてくれないか…あぁ、知人も一緒だ。
急ぎだから手土産は無い…あぁ、大丈夫だ…問題無い。
じゃ、止めたら勝手に入るから」
そう言うと電話を切る。
電話が切られるとともにキィーと、金属の、高い音が鳴り重々しく扉が開く。
この家だったか…周りの家々は田中の家の近所と同じようアパートやら小さめの家が建ち並んでいるが友人宅は、周りを高い壁が囲んでおり中から外にはみでんばかりに木々が生い茂っていた。
家の門も相当な大きさだ。
人が倒れる扉と車用の扉が2枚別々に並んでいる。
そして、その横に警察官が、1人立っていた。
中に入る前に警官に声をかける。
「小林さんの友人の田中です。
小林さんから連絡が入ってると思いますが」
「ええ、聞いております。どうぞ」
中に入ると5、6台はゆうに止められそうなスペースがあった。
すでに車は一台止まっているが家主のものだろう。
この世界に着てこの広さの個人宅は初めて見た。
かなり裕福な家庭のようだ。
車を降りるとスタスタと田中は進んでいく。
「珍しいですか?近所にはこの規模の大きな家はありませんからね。
この家は旧家なんですよ。
昔からある家で、奥に蔵が見えるでしょう?100年前のものだそうですよ。
大空襲にも、耐えたそうです」
ふうん、と蔵とやらに目を向けた。
こう言う蔵には沢山面白い物が詰まっていると聞くが、今はそんな悠長な事言っていられない。
玄関も引き戸のようでガラガラと音を立てる。
鍵はかけていないようだが、勝手に中に入っていいのだろうか?
田中が気にせず入って行くのでついて行く。
奥に進み障子の前で田中が止まる。
「小林氏きたぞ」
中から声はしない。気配もないが、後ろから誰がが来るので振り返った。
「おう、早かったな」
そこには丸い男が居た。
何と言うか…丸い。
「ぬほっ!本物の女騎士ではないか!」
「あぁ、こちらは電話で話したラファ氏だ。
メールに添付した画像と、掲示板には目を落としてくれたか?
それから、こちらは小林氏。
私の中学らいの友人です」
「はじめまして。
ラファージュラン・キタノ・オンターラと申します。
田中殿曰く呼びづらいらしいので、ラファと呼んでください」
「ぬほっ!本物!ラファたんと言うのか!よろしく!小林だ!ラファたんは、北野という別名が名前にはいるのだな!」
手を握られぶんぶんと握手された。
…この世界の人間に知人は今の所田中と小林の2人になったが…なんだか2人とも変わっている気がする。
公園で出会ったホームレスの方々の方がまともな気がする。
「早速だが、現場を見せてもらえないだろうか?」
「あぁ、かまわないよ。こっちだよ」
縁側から庭に出る。
外用のサンダルが、3人分と用意されてあった。
「可哀想にたまたまその日雇って居た庭師の方が惨殺されてね。
俺は時もここに居たんだが気づかなかったんだ…セキリュティも反応しなかったし、まさかドラゴンがいたとはね…1度見て見たかった」
「見ていたら確実に殺されていたぞ」
「ドラゴンに殺されるなら本望だね!事故や病気で苦しむより断然良い!
っと、ここで亡くなった方に対し不謹慎だったね」
「ここだな」
「そうだよ、よくわかったね」
そこにはハッキリと魔法陣が浮かび上がっていた。
1メートルくらいの円とその中に様々な術式が組み込まれていた。
おそらく、魔法を習ったことのない2人には見えているまい。
やはりコレは、魔法陣をで囲った円の中の人間を、壊す魔法。
田中がこちらをじっと見て来るが、説明前に確認しないといけないことがある。
そして、ドラゴンに気づかれないよう魔法陣に少し手を加えなければ。
私は魔法陣の端にしゃがむみ手を添える。
「2人とも少し離れていてくれ」
そう声をかける。
頭の中で呪文を唱えると魔法陣がパァっと光りはじめる。
「おおっ!」
後ろから2人の驚いた声が聞こえた。
おそらく2人の目にも見えたのだろう。
私は、指先に力を込め魔法の端から別の文字を、書き込み始めた。
人間の血を元に描かれているので人間である自分が媒体になれば安易に書き込みができた。
これなら十分にここだけ魔法を阻止することはできる。
時間にして約5分。
私が、離れるとまたひかりがおさまった。
「ここの魔法陣に関しては発動を、抑える事ができたと思います。
そして…犯人はやはりドラゴンのようです。
ここにドラゴンの印がついていました。
また私が、予想した通りこの魔法陣の円内の人間のみ死ぬように設計され…
ぶふぁ!
何撮ってるんですか!」
振り返りつつ、田中に報告すると田中はカメラを構えていた。
「こんな時だからこその動画配信です。
今ライブでながしてますが、これも後でアップします」
「こんな時にもお金稼ぎか!緊張感が無さすぎる!」
ガクリと首を傾げる。
「いえいえ、これが本当の事だとみんなに知らせる為です。
本当に信じて逃げるかわかりませんが、情報があるか無いかは大きな差ですからね!」
田中が胸を張ったが…まぁ、良い。
ここに残る事を決めた時点で失敗したらどうせ死ぬのだ。
それに万が一うまくいったら世間から注目を浴びラノベのような異世界転移でハッピーエンドな展開になるはずだ。
さすがに東京を救った英雄を人体実験したりしないだろう。
よろしくお願いします




