十八撃目
チュンチュンチュン…
小鳥のさえずりが聞こえる。
背中が冷たい。
何だかやたら眩しい。
目を開けるとここは公園だった。
昨晩酒盛りをしたまま寝てしまったのだろう。
周りを見渡したが誰も居ない。
昨晩の残骸が少し片付け終わらなかったぶんがチラホラ残っている程度だった。
私は、ダンボールの上に寝かされお腹に新聞紙がかけられていた。
一応下を確認する。
大丈夫イタズラされては無いようだ。
ここはなんと紳士な国なのだろう。
あくびをして、公園の水道で顔を洗う。
アルコールを飲んでいないつもりでいたがもしかしたら口にしてたのかもしれない。
頭が少し重い。
まだ夜が明けてすぐなのだろう公園には誰も居ないし、うっすらと霧が出ている。
諦めるな、まだ早いと、昨日誰かに言われた。
そうか。
まだ諦めてはいけないのか。
私は、一人頷いた。
私は、この世界で一人だ。
なら、何をしても自由では無いだろうか?
やれる事は沢山ある気がする。
笑われて、挫折したならまたここに戻れば良い。
とりあえずやってみよう。
確かこの世界にも騎士の称号がある。
なら、この世界でもう一度騎士になれるようやってみようではないか。
とりあえずこの世界の唯一の友人である田中に先ずは謝りたい。
せっかくの友人なのだ、しかも命の恩人と言っても過言でない人物だ。
喧嘩別れは良くない。
あわよくば、支援をお願いしたいところでもある。
ただ今日は、月曜日。
会社の支度で朝は大忙しなはずである。
きっと田中の事だ、世界が滅んでも会社に行くといいそうな社畜なのできっと引っ越し作業はしていないはずだ。
まぁ、まだ夜明けすぐなので起きてはいない可能性もあるが。
私は、田中の家のチャイムを鳴らす。
以外にも早く扉が開いた。
「やぁ!おはよう」
こちらから声をかけてみた。
「おはようじゃありませんよ!今までどこに居たんですか!心配したんですよ!」
めちゃめちゃ怒っている。
「すまぬ」
出ていけと言ったのは田中であるが、どうやら居なくなったことに対して激怒している模様だ。
「とにかく部屋に入ってください!
ってか、なんか色々臭いからシャワー浴びて歯磨きしてきてください!」
そんな臭いだろうか?
しょんぼりする。
シャワーを浴び歯磨きをし部屋に入るとふんわりと味噌汁の香りがした。
「朝食にしましょう」
「いただきます」
「いたーだきぃーます」
味噌汁が染みる。
「で?昨日はあれからどこに行ってたんてますか?」
「近所の公園」
「公園?近場の?一日中?」
「あぁ」
はぁ…っと田中はため息を吐いた。
「仮にも女の子なんですから公園で一人野宿とかやめてくださいよ!」
「一人じゃない、たくさんのホームレスの方々と一緒に昨晩は酒盛りをしていた」
「はぁ!?」
普段温厚な田中はどこに行ったのだろう?
「女のコがホームレスと酒盛りって何かイタズラでもされたらどうするんですか!」
「それは無かったぞ、ちゃんと起きた時もシャワーでも確認した」
ブハァっと田中が味噌汁を吹く。
「それに一応私は腕の立つ兵士だ。トレーニングもしていない日本人男性には勝てる」
ふふんと鼻を鳴らすが田中はジト目でこちらを睨む。
「それは、ラファ氏も同じでは?トレーニング1週間居てしているところを見た事ないんですけど」
ぐっ…こやつ痛い所をつくな。
話を晒したい。
「そう言えば田中殿、もう会社に行く時間では?」
「今日休みを取りました。と言うか三日間休みます」
へ?
「社畜の田中が?」
「社畜って言うほど社畜じゃありませんよ」
私は、目眩がした。
「き…貴様田中ではないな!朝から怒ってるし、会社にも行かないし!」
「面倒くさいひとですね」
田中はスマホを取り出し私に見せる。
「昨日あのあと4件の殺人が起きてます。
早く犯人を捕まえないともっと犠牲者は増えるし、
ラファ氏はまだ魔法は発動しないといいますが下手すればもっと大勢死ぬんですよね?
のんびりなんてしていられませんよ」
至極まともな事を言われた。
「それに、戻ってきたって事は犯人を捕まえる気になったからで、引っ越しのお手伝いに来たわけではないでしょう?」
私は、頷いた。
「何か策は思いついたんですか?」
私は、かぶりを振る。
「そうですか…」
田中は明らかに肩を落とした。
「だからネットで安価を取ってみようと思う」
「安価ですか?」
「あぁ、ネットで我の意見…魔法陣の事と犯人の事を暴露しネット住民にどう対策していいか安価で聞くのだ。
むろん、安価通りには動かないが良い意見があったらやってみようかと思う」
「そんなんでまともな意見が出るとは思えないのですが…」
「まともな意見でなくとも良いのだ、むしろ突飛な意見が功をそうするかもしれん」
「そうですね…まぁ、やるだけやって見ましょう!と言うより、犯人像までラファ氏は分かっているんですか?」
「あぁ、十中八九ドラゴンだ」
「ドラゴン!?」
「ドラゴンは、バス一台分くらいの大きな姿を普段しているが、人間やそのほかほとんどの生物に見た目を変えることができる。
それゆえ返り血を浴びても変身すれば返り血ごと他の姿になれる特性を生かし日中堂々殺人を犯し、ゆうゆうと魔法陣を描いているのだろう。
それに犯行現場もドラゴンのスピードで移動すれば簡単だ。
昨日色々な所で短期間に犯行を行えたのもほのせいだ
そして、ドラゴンはこの世界の物でなく、私と同様転移したのだ」
はぁーっと田中は息を吐いた。
「まるでファンタジーです」
よろしくお願いします




