二撃目
貴族怖い…そして、お腹すいた…。
剣を構えろやら、一緒にうつってやらで果てし無く続くように思えた長蛇の列はいつの間にか消え私は燃え尽きていた。
私が突き飛ばした貴族の娘は居なかった。
あぁ、私の粗相は罪にならなかったらしい。
ホッと胸をなでおろす。
虚ろな目で周りを見渡すと何やら紙でできた鞄を後生大事に抱きながら私が目指していた出口に向かっていく人の流れが読み取れた。
やはり彼らは貴族なのだろう…。
紙でできた鞄なんぞ見たことがない。
ましてや色とりどりの絵が描かれている。
相当値のはるものだろう。
ぐうううううう
腹が鳴った…。
私も気づかれした身体を引きずるよう出口に向かった。
あぁ、ようやく帰れると安堵し開放された扉から青空広がる外に出た。
でた?
なん…だと?
眼下に広がる景色は、どこもかしこも始めて見るものばかりだった。
見た事もない高い建物、舗装された道、均一とれた街路樹、金属でできた獣のようなもの。
全てが計算尽くされたようなものばかりだ。
どう考えても私が元々住んでいた国ではない。
こんなに高度な文明は見た事も聞いた事もない。
なんなのだ?ここは?
私は再び混乱していた。
どうしたという事なのだろうか?
何がおこっているのだろうか?
どうして私はここにいるのだろうか?
ここは…神々の国?
私は、死んだのか?
頭が弾け飛びそうな衝撃を受けた。
くらくらする。
気持ち悪い。
私は、ずるずると扉にもたれかかるように…そのまま座り込んだ。
「あー大丈夫ですかー?水分とってましたかー?」
1人の貴族…いや、神かもしれない男性に見える御方様が声をかけてきた。
「今日暑かったですもんねー、コレどうぞ」
そう言って神かもしれない御方様が私に液体の入った容器を差し出してきた。
「お…恐れ多くも私のような者に施しは無用です」
神かもしれない御方様から物をいただくなんて大それた事できやしない。
気分を害さないようお断りするのが精一杯だ。
「あ、コレ怪しい物とか入ってないですよ!僕ちゃんと運営の方ですから!ほら、ちゃんと運営スタッフの帽子に名札もつけてるでしょ!」
ニコニコしながら液体入りの容器を差し出してくる。
そして、言っている事のほとんどが理解できない。
余りに理解できない状況なら涙目になりそうなのを堪え、2度も断ったらきっと天罰が下る事を察知しこうべを垂れた。
私は、ひざまづき直し両手でソレを受け取った。
容器は、ガラスとは違う物質でできており中の液体が冷やされているのか冷たい。
魔力でも使って冷やされていたのだろう。
液体は、白濁していてなんなのかわからない。
私は、まじまじと授かった液体とその容器を見ていたら神かもしれない…いや、神がニッコリ笑って説明してくださった。
「日本語とても上手だから、問題ないと思ってましたがコレポカリ…えっと、水分補給するための飲料ですよ。甘くて美味しいです」
ふむ。
コレを今目の前で飲んでみろという事なのだな。
しかし…どのようにしてあげるのだ?
蓋と思しき栓を引いてもがっちりととめてあり開きそうにない。
剣を抜いて切っていいものでも無さそうだ…。
私が再び困惑していると。
神が私の手から容器を取り、容器をひねると蓋が開いた。
「すみません、どこの国の方がわかりませんがペットボトルの開け方を知らないとは思いませんでした」
神は申し訳なさそうな顔をした。
「とんでもない事でございます!御方様にそのような事を!」
神にそんな顔をされたとなれば、本当に天罰が下ると思い容器を受け取ると慌てて液体を飲んだ。
ふぁっ!?
な…なんだこれ!
「とても…美味い!」
私は、身体が震えるのを感じた。
そして、、私はあっという間に全て飲み干した。
確かに空腹ではあったし、長時間水分補給もできていなかった。
だけじゃなく、程よい甘み、ちょっとクセのあるような味…塩のような…なんとも言えない飲み物であった。
「このようなものを私に授けてくださり光栄です!」
私かしずくのもやめ、そのまま平伏した。
「ええ!?ちょ!や…やめてください!」
神は、狼狽えた。
「運営側から熱射病や、脱水を疑う人に配るよう言われてただけですから!」
そう言って神は踵を返し逃げ出すよう足早に去っていった。
私は、引き止める間も無く去った神の後ろ姿をポカンとただ眺めていた。
神は施しを授けても見返りを求めないのか?
さすが、神。
さて…さぁ、どうしよう?
先ほどの飲み物で多少の空腹は抑えられたが、どうやったら元の地上に戻れるのだろうか?
そもそもここは天上なのだろうか?
一見すると雲の上…といった感じではなく普通の地上のようにも思える。
うん、甘味を授かり頭が少し落ち着いてきた。
私は、なるだけ神々の歩行の妨げにならないよう端を歩くようにした。
どうやら、私が居た建物の階から地面と思われる場所にたどり着くには2〜3階分くらい階段を下りる必要があるみたいだった。
地面と思われる場所に着いたが、足元は舗装され凹凸も無くとても歩きやすい。
さすが神の国。
しかし、、、さすがに神にここがどこだと話しかける事ができず、元居た建物近くをウロウロするだけで日が落ちてしまった。
日中あんなに沢山人々…いや、神々が居たのが嘘のようだった。
だが、ここにきて私はさらにここが神の国だと確信した。
夜なのに明るいのだ。
もちろん、我国の貴族街も夜明るいには明るい。
だが、貴族街の街灯とは違い明かりをつけて周る魔法師が居ないのだ。
そう、勝手に誰も魔法を与えずとも明かりがともったのだ。
そして、その明るさとなると…まるで太陽の光そのものだ。
きっと文字も読めるであろう。
そう思ったところで、ふと先ほど男のお姿をした神に授かった容器を眼にした。
様々な言葉が書いてある。
読めるには読めるが…その言葉が何を意味しているのかが皆目見当がつかない。
ふぅ。。。
私は、ため息を吐いた。
ここは獣の匂いがしない…たぶん、野営をしても問題ないだろうが、明日になっても状況が改善するとは思えない。
完全に詰んだ。
よろしくお願いします




