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叛逆の魔術師〜属性が無いと蔑視されたので開き直って金持ちになることにした〜  作者: シロナガスクジラ
第1章 駆け出し冒険者編
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7.イオン化傾向に何で水素があるんだろうな?

ブクマ、ポイントありがとうございます!



鉄は錆びる。

いや、正確に言うと酸化する、と言うのだったか?

だとしたら、この錆び付いた鉄串たちは酸化した物質だということだろう。

中学の頃、特別学力が高かったわけでもない俺だが、それでも化学の分野の一つに、イオン化傾向というものがあった事は覚えている。

確か、覚え方は……。


「LiK()そうCa()Na()Mg()Al()Zn()Fe()Ni()Sn(すん)Pb()H2()Cu()Hg(すぎ)Ag()Pt()Au()、だったか……」

「レイトさん、何ですかその言語……聞いたことがないですね」


……おっと、どうやら口に出ていた様だ。

俺は「……ただのおまじないだよ」とリーマに言い訳した後、また鉄串の錆を取り除く作業に没頭する。

俺が集中している時に話しかけるのは申し訳ないと思ったのか、リーマは俺の手元に注視はするものの、何も口を挟む事はしない。

これで邪魔者はいなくなった。

……そう言えば確か、イオン化傾向って言えば金属を指し示す物だよな?

なのに、何で覚え方の方にはH2(水素)まで入っているんだろう?

少し考えているものの、よく分からない。

イオン化傾向って確か、金属の錆びやすさだよな?

だったら、H2(水素)も錆びるってこと?

……H2(水素)が錆びる?

何だそれ、論理的に考えて破綻しているぞ、それ……。

しかし、考えても考えても何故イオン化傾向の中にH2(水素)が入っているのか分からない。

何か思い出せないかな〜、と粘っていると、不意にバルディの声が聞こえた。


「よぉーし!今日はもう良い時間だし、十分進んだからよ。ここらで野宿の準備をするぞ!」


……どうやら俺のへっぽこ化学講義もここまでの様だな。

メンバーが全員馬車から下りたことを確認して、俺も武器をバックの中に入れて馬車から下りた。

辺りはすっかり暗くなっていた……。





野宿の準備は直ぐに終わった。

通常、冒険者というかこれは多分全人類に言えることだが……やはり、テントがあったとしてもできれば雨風が凌げる場所が好ましい。

そのため、雨風凌げる場所を探すところから始めるため、野宿の準備には少々時間が掛かってしまうのだが……。

このパーティーには、フィロというエルフが存在している。

……エルフ。

尖った長い耳と、男女問わず綺麗な容姿が特徴的な種族で、主な性質として人間よりも魔力量が多いことや、森の民と俗称がされるほど自然との親和性が高いことが挙げられる。

ああ、そう言えば長寿なのもその性質の一つだ。

自然との親和性というのは、正確に言うと人間よりも俊敏で感覚、というか五感が優れているということである。

そのため、フィロの鋭敏な五感を使い、雨風が凌げる場所……今回は洞穴を見つけてもらい、そこでテントを張って野宿の準備をすることができた。

ちなみに、その洞穴を元々使っていた動物は、今晩の晩御飯になってもらった。

……南無三!

そうして、野宿にしては早い夕食(熊みたいな生き物を焼いて塩で味付けした物)を頂いた俺たちは、せっかく時間が余ったのだからと、パーティーの構成を考えることにした。


「と言うことでよ?前衛組と後衛組に俺がざっと振り分けたからよ」


前衛組:バルディ、リーマ、イエーリ

後衛組:カルテ、リーマ

特殊組:フィロ、レイト


「と、特殊組……?」

「ん?ああ、これな……。フィロは斥候職の様だし、レイトはアレだしよ……。ッーワケで、二人には主に中衛みたいな感じで周囲の警戒に当たってもらいたいと思ったんだが……ダメだったか?」

「いや、別に……」

「……問題ない」

「っし!じゃあ、そういうことで明日はこの構成で行くからよ?よろしく頼むぜ!」

「「「「「「はい(……うん)!!!」」」」」」


レイトはアレだし……って、どういう評価だよ、とツッコミを入れたかったものの、その前にバルディから雰囲気を固められてしまったので、言い出すこともできずにそのまま夜番のローテーションの話になってしまった。


「じゃあ、このまま夜番の話になるが……。基本的に二人一組でするってことで、どうだ?」

「まぁ、それは構わないが……」

「……順番は?」

「後は時間の区分が気になりますね」

「私はまだ眠いから、早めに寝たいねっ」

「ああ、はいはいちょっと待ちなっての……」


区分、砂時計が全部落ちきるまで。


ローテーション。

一回目:バルディ、リーマ、イエーリ

二回目:バルディ、レイト

三回目:レイト、フィロ


「……で、どうだ?」


後衛が入っていないのは……まぁ、わかる。

後衛組は基本的に魔力を扱う魔術師というジョブなのだ。

集中力がものをいうジョブで、寝ていないから集中出来ません、じゃあ話にならない。

だから、多分除外したのだろう。

で、問題は何故俺とバルディが夜番の回数が多いのか、ということだが……。

俺がバルディに視線を向けると、周りには見えない様にごめんのジェスチャーをしているバルディの姿が映る。

……おそらく、女性陣に良い顔がしたいのだろう。

全く、どんだけハーレムに憧れているんだか……。

その計画の一環に他人を巻き込むのは少し、頂けないところではあるものの、俺も彼の計画には極力協力すると決めた身なので、やれやれといったジェスチャーを示すことで、バルディに許したことを伝える。

その後、当然女性陣からバルディへと、俺とバルディの夜番の時間が長いのではないか?という質問がきたが、バルディが何かよくわからん口説き文句を使って女性陣を沈黙させていた。

……いや、正確に言うと一人だけキャーキャー、と言っている奴が居たなぁ。

こうして、夜が更けていく。





所変わらず時間変わって、深夜。

いや、実際には俺には時計がないので、時間なんてものは把握できていないわけだが……。

しかし、あの砂時計は三回回すと日が昇り始めるとバルディが言っていたので、多分一度砂が落ちるまでにかかる時間は、およそ三時間と言ったところではないか、と俺は睨んでいる。

そして、俺たちが食事を摂り終わり、テントに入ってぐっすり就寝したのが九時ぐらいだと仮定すると、三時間足すと今の時間は約午前零時。

ならば、俺のこの深夜という表現もあながち間違ってはいないだろう、と。

さて、こんな下らないことを考えていたのにはわけがある。

と言うのも、先ほど俺を起こした男……つまりはバルディなわけだが……。

こいつは先ほどから船を漕いでいて、今では完全に夢の世界へと出航してしまっていた。

もちろん、俺は起こそうと思えば起こせた訳だが……。

バルディの疲れた表情で寝ている姿を目にすると、あまり起こしてやるのも可哀想だな、と思い、結局近くに張ったテントの中で寝袋に入ってもらうことにした。


「ま、俺もやる事あるしな……」


そう言って取り出したのは、錆び付いた鉄串約三十本。

馬車内にいるときも、暇があればせっせと鉄串の錆を取り除いてはいたのだが……。

俺、少し車酔いがしやすいタイプでなぁ。

馬車に乗りながら手元で作業をすると高確率で酔ってしまうのだ。

さすがに酔うのは嫌だし、そんな酔った俺の姿を見て、バルディが「こいつは軟弱者だな。ここに捨てて行こう」と宣った日には、堪ったものではない。

そのため、俺はそのリスクを犯さない様に、チビチビと鉄串の錆を取っていた。

そうすると、思ったよりも鉄串の錆び付いた部分が多くて、中々終わらず、こうして半分以上が残ってしまった訳だ。

とほほ……。





ガリガリガリ……。


鉄串の錆が小削ぎ落とされる音だけが辺りに響く。

あの後、砂時計が砂が残り僅かという所まで黙々と作業を続けた結果、錆の付いた鉄串は残り四つとなった。

ここで、頑張ったぜッ!ヒャッホォオオオ!!!と騒ぎ立てても良いのだが、どう考えても寝ている連中の近所迷惑だろうし、何よりそんなことでパーティーは出されでもしたら堪ったものではない、って何かこのフレーズ、デジャヴな気がするな。

しかし、まぁそんな深夜テンションに突入してしまうほど俺の精神は参っていた。

やってもやっても減らない鉄串の山、更にガリガリガリと不快音を出し続ける鉄串の錆。

長時間続けていたお陰で、俺の頭はクルクルパー寸前である。

さて、砂時計も完全に落ちたことだし、またひっくり返すとするかなぁ……。

俺はクルッと砂時計を反転させると、焚き火に木材を追加した。

本当ならば、夜番である俺がフィロを起こしに行かないといけないのだが……。

フィロは何だか話し辛いというか、何というか……。

あの無口な正確のお陰で、雰囲気があんまり良くなる気がしない。

というか、こんな真夜中にあんな静かな奴と一緒に居たくない。

空気が沈んで、俺まで病みそうだ。

そんな訳で、フィロを起こしに行くのは辞めようと思ったところで、不意に後ろから足音が聞こえてきた。


「ーーーッ!?」


俺はすぐさま右手にナイフを掴み、投擲の準備をしようとして、それが不要であったことに気付く。


「……なんだ、誰だと思ったらフィロか。……よく起きられたな?」

「……まぁ」


何が『……まぁ』だ、っての!

ちゃんと言葉のキャッチボールしろや、コミュ障!とは思ったものの、口には出さずに焚き火の近くに横たえた木に座るように促す。

俺の促しにフィロは素直に腰を下ろすと、急に真面目くさった顔をして、俺に話しかけてきた。


「……話が、ある」


俺は、そんなフィロの様子に不吉さを感じざるを得なかった。






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