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叛逆の魔術師〜属性が無いと蔑視されたので開き直って金持ちになることにした〜  作者: シロナガスクジラ
第2章 学院劣等生の家庭教師〔前編〕
31/38

31.相手の全力を潰してこそ俺の実力が証明される

今日分の投稿です!





試合始めの合図がなると同時に、意外なことにも早く行動を起こしたのはカエルラの方だった。


「風よ、強化せよ!『風の補強(ウィンド・アップ)』!」

「へぇー……」


丁寧に詠唱をして風属性下級魔術を展開する。

ぶっちゃけた話、下級魔術なんて言うのはただの動作の補佐にしかならない。

(ボール)』系の魔術は目眩し、『癒し(ヒール)』系の魔術は痛み止めといった感じで、『補強(アップ)』系も精々少し足が速くなる程度のものだ。

これは舐められているのか……?

無能()にはこの程度で充分だということなのか?

そう思った俺だったが、次のカエルラの行動で俺の予想が外れていることがわかった。


「『風脚』!」

「魔技もっ!?」


そう、まさかの魔術と魔技の重ね合わせだった。

俺が驚愕している理由をどう取ったのか?

カエルラはやけに自信気に語る。


「ふふっ、さすがに魔術と魔技の併用は見たことがありませんか?しかしそんな貴方の常識は私の前には無意味ですよっ」


フッと、軽やかなステップを踏んで飛んで見せるカエルラ。

いや、別に俺は魔術と魔技の併用に驚いた訳ではないのだが……。

俺は挑発も兼ねてカエルラを揺さぶってみる。


「いやな?随分と無能の俺に対して用意周到だなぁ……と思ってな?何?もしかして俺にびびってんの?」

「はぁ?何を言っているんですか、貴方は?普通、模擬戦となれば互いに全力を尽くすのが当然の義務でしょう?」


なるほどね。

先ほど俺のことを散々貶めていたが……。

カエルラはなんだかんだ言って根は純粋ということか。

どんな相手にも正々堂々……ね。

俺からすれば甘ちゃんと言わざるをえないが……。

しかし相手が全力で俺に挑もうと言うのだ。

俺も多少なりとも奥の手を晒す必要があるだろう。

でないと、なんか不義理に思うしな……。


「そうか……。良いぜ、カエルラがそう言うんだったら俺の魔法(奇跡)をとくとお見せしようじゃないか。……てめぇが無能と罵った無属性の魔法を、な?」

「何を言っているんですか、貴方は?無属性は何の魔法も展開できないからこそ、“無”属性なんでしょうが……。全くこれだから無能は、訳のわからないことばかり……」


そう言いながらも、カエルラは右足を半歩後ろに下げている。

どうやら俺の言葉を少なからず警戒しているようだ。

とはいえ、これ以上俺の口調に飲まれるわけにはいかないと思ったのか、カエルラは右足に力を込めて一足に跳びかかってきた。


「はっーーー!」

「……よっと」

「っ!?」


しかし、その回し蹴りを含んだ一撃は俺が屈むことで簡単に回避される。


ーーー納得がいかないッ!


そんな表情を浮かべながらもカエルラは更に加速し、今度は俺に正拳突きを放ってきた。


「ほらよっと」

「……なっ!?」


そんな勢いの乗った一撃も俺からすると丸見え。

正拳突きを右の掌で添えるようにして掴むと、そのまま体を捻りながら投げとばす。

所謂背負い投げという奴だ。

投げられたカエルラは、驚きながらも器用に空中で受身の態勢を作り、地面に華麗に着地する。

俺はお見事の意味を込めて拍手を送る。

そんな俺の小馬鹿にした態度に腹を立てたのか、カエルラは血走った目をして俺に怒鳴る。


「これはっ、一体どういうことですかッ!」

「どういうことも何も、お前が綺麗な着地を見せたから拍手してやってんだけど?」

「そうではなくっ!」


カエルラは、俺が質問に対する答えをはぐらかしているのがわかっているのだろう。

額に青筋を浮かべながら俺を睨みつける。

おーおー、そんな顔したら折角の美人さんが台無しだぜ?とは、流石に茶化しすぎか?

とはいえ、種明かしをしないのも俺としては面白くない。

俺は冗談交じりに俺が回避できた理由を説明する。


「ハハッ、俺が何で避けられるのかわからないって顔してんな?わかってるよ。ちょっとだけ種明かししてやるさ」

「何を偉そうにっ」


俺の道化じみた態度が癪に障ったのか、カエルラは俺に殴りかかりながら怒鳴りつけてくる。

俺はそのカエルラの拳を丁寧にいなしながら説明する。


「レクチャー、その一!カエルラ、お前の動きは大振りすぎる。それ故に俺にはお前の次の動作が丸見えだ」

「なっ!?」


レクチャーを続けながら左腕を掴むと、関節を極めて背後に近付く。

カエルラは必死にもがいて外そうとするが、関節が完全に極まっているため中々外れない。


「くっ……!風よ!我が身体を、強化せよ!『風の身体補強ウィンド・フィジカルアップ』!」

「……うおっ!?」


俺の腕が外れないと悟ったカエルラは、風属性中級魔術を展開して俺を無理やりに引き剥がそうとする。

俺はというと、いきなりの風属性の奔流にびっくりして手を離してしまった。

その隙にカエルラは地面を蹴って十メートル程の距離を置くと、手を前に翳し、強力な魔術の展開に備える。


「何だよ。……結局出し惜しみしてたのか」

「流石に無属性相手に中級魔術は大人気ないと思ったんですっ!でも、もう容赦はしません!貴方がある程度の実力があるとわかった以上、こちらも全力でいかせてもらいますっ」


そう言ってカエルラは新しい魔術を展開する。

使用している魔力量を見るに、中級かもしくは上級と言った感じだろうか?

ここでカエルラの魔術の展開をする前に叩くのは簡単だが……。

どうしてもカエルラの本気を一度叩き潰しておかないと、俺の気分的に晴れないので俺はこのままカエルラの準備が整うのを待つことにした。







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