28.一点特化型って、男のロマンですよね
次の二話は日曜日分です。
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火:0
水:0
風:186
土:0
光:0
闇:0
非:0
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これがカエルラの数値だ。
ただただ凄いとしか言えない。
何が凄いってコイツ……ほとんどの属性力がゼロなのだ。
これではカエルラが行使できる魔術は風属性に限定されてしまう。
しかし、その代わりと言っては何だが風属性の属性力だけは凄まじい。
ひ、百八十六って……。
先ほど述べていたムスクの論を借りるならば、カエルラは風属性の属性力だけは一般人の四倍以上、普通の魔術師の二倍に近い属性力を誇るということだ。
一般的な魔術師が上級魔術で岩を粉々に吹き飛ばすのだとしたら、こいつの魔術は崖だってイチコロだ。
な、なんて恐ろしい力だ……。
とはいえ、
「〜〜〜♪」
「……」
カエルラの俺に見せつけるかのようなドヤ顔には耐えきれなかったが……。
まったくっ、そんなない胸を張ったって誰も見ちゃくれねぇよっ。
「まったくっ、そんなない胸を張ったって誰も見ちゃくれねぇよっ!……って、あっ」
ヤバい、思ったことがそのまま口に出ちゃった……。
そう俺が思ったのと首筋にナイフが突きつけられたのはほぼ同時だった。
さっきまでは気候的に涼しかったのに、一気に俺の額から汗が流れる。
首筋に突きつけられたナイフはカタカタと不気味な音を出している。
「……ぁ、あのぅ〜」
「……ナニ?」
「ぇ……えっと、その……ナイフ、危ないかなぁ……なんて」
「ア゛?」
「ひぃいいいいッ!!!す、すいませんでしたぁあああ」
俺は男のプライドを投げ出してその場で土下座した。
「……」
……うぅっ、無言のプレッシャーがッ!
しばらくの間、絶対零度の視線を俺に向けていたカエルラだったが、ふぅー、と息を吹き出すと憤怒のオーラが解除された。
「……次は、ないですから」
……どうやら今回は許してくれるようだ。
「わかりましたか?」
「は、はい!」
俺はカエルラ様の問いかけに瞬時に反応すると、すっくと立ち上がり属性力を測る機械に手を翳す。
俺が属性力を測るとわかったムスクは避難していた場所からこちらへと戻ってくると、機器の使い方を説明する。
と言うか、カエルラに責められている時に助けてほしかったんですけど……?
「良いかい、レイト君?この機器は使用者の魔力を勝手に吸い出して属性力を測ってくれるから、ただ手を翳すだけで良い。……と言うよりむしろ何かされると困るから。わかったかい」
「それよりもムスクさん。なんでさっきは助けてくれなかったんですか?」
「……年頃の女の子は、怖いからね」
コイツッ……!
部下に日和ってるんじゃねぇよっ!
そう思ったものの、俺もあの状態のカエルラに詰め寄られると相当怖いな思い、強く当たることは出来なかった。
俺とムスクがそんな他愛のない話をしていると、属性力を測り終わったのか、ペンケースに浮かんでいた幾何学的な文様が消える。
「うん、準備は済んだようだね。……どれどれーーーってこれはッ!?」
「……なっ、何ですかっ!これはッ!?」
ペンケースを見つめていたムスクとカエルラがほぼ同時に声を上げる。
そこには……俺の属性力が載っていた。
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火:0
水:0
風:0
土:0
光:0
闇:0
非:0
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……まぁ、当然といえば当然だよな。
コレが俺、“無属性”の咎なのだから……。




