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叛逆の魔術師〜属性が無いと蔑視されたので開き直って金持ちになることにした〜  作者: シロナガスクジラ
第1章 駆け出し冒険者編
15/38

15.人から奪った物はちゃんと返しましょう

結構短めです。





「レ、レイトは……どうなったんですの?」


魔族が出現したことでかたまってしまっていたパーティーメンバーだったが、意外にもこの中で一番はやく動き始めたのは、ルラキだった。

ルラキは見た感じでは魔族から渡された左腕がレイトのものには見えるものの、もしかしたら違うのでは無いか、という淡い期待を込めて魔族にレイトがどうなったのか?いや、正確にはレイトをどうしたのかを聞いた。


「ア?レイト……?レイトかどうかは知らネェが、灰色の髪のヤツなら左腕で切り飛ばしタアト、脇腹殴っタラ木の方ニ飛んでッタからナァ……。多分、死んでるんじゃネェカ?」

「ぁ、ああ……っ」


魔族自身は自分が倒した男がレイトという者かどうかがわからなかったため、懇切丁寧にその光景を説明したのだが……。

ルラキにとってはそれがむしろ嫌味にしか聞こえなかった。


ーーーレイトは死んだ。


その事実がはっきりしたためにルラキの心の芯はポッキリと折れてしまい、彼女はがっくりと膝を地面につける。

しかしルラキの消沈した姿が周りのメンバーを冷静にさせた。

レイトが死んでしまったことは残念ではあるものの、もう起きてしまった過去の出来事なのだ。

とりあえず今はレイトの死(過去)よりも自分達(現状)のことを優先する必要がある。

そう感じたパーティーメンバーたちは魔族には気付かれないように少しずつ馬車を出す準備を進める。

その間に一度魔族と対面したことのあるフィロがここにきた目的を魔族から聞き出すことにきた。


「……そう。……それで?……何で、ここに?」

「ンア?何で、ってそりゃマァ魔王様からのご達しとアルからナァ……。実を言うと、オレもあんまりは知らネェんだヨナァ」

「……そう」


この両者の会話を聞いている側からすれば、ちゃんと会話が成立しているのかとヒヤヒヤする場面ではあったものの、傍若無人と名高い魔族と超無口なエルフの相性は意外にも良かったと言えた。

凡そ先ほどのレイトと似たような情報を得られたところで、馬車の準備は整った。

さて後はこの場から逃げるだけだ。

そう考えたフィロは、馬車に乗り魔族に目眩しの魔術でも喰らわせようかと考えていると、不意に魔族から殺気が漏れ出す。


(……もしかして、バレタ?)


フィロは自身が展開しようとしている魔術が暴露たのかと戦々恐々だったのだが……。

次の魔族の言葉で事態が相当ヤバい状態に推移しようとしていることを知る。


「イヤァ〜〜〜、ありがとうナァ?テメェのおかげで欲しい情報はあらかた手に入ったカラヨォ?」



「ーーーーーーそろそろ、テメェら殺すワ」



瞬間的に空気が凍てついた。

何が起こったのか?

それすらも把握できないままにフィロは地面に横たわっていた。


「オォ?あれ、っーかシーナ?テメェの体は両断したと思ったダガナァ?」

「……??」(……何が?)


せめて何が起きたかだけでも……。

そう思って自分の身体に目を向けると足先から腰の部分ぐらいまでに氷が張り付いていた。


(……足全体の感覚は……ある)


という事は少なくとも身体が完全に冷却したわけではなく、あくまで身体の表面に氷が付着しているだけ、ということだ。

しかし、そうなるといつの間に魔術を行使したのか?

少なくとも魔術を行使する以上は何かしらの魔力の動き、魔術行使の予兆の様なものを感じ取るはずだ。

魔術行使の予兆は少し感覚が鋭敏な魔術師ならばすぐに感じ取ることができる。

ましてはフィロはエルフだ。

エルフは『コロル』の全人類の中でも最も感覚が鋭敏だ。

フィロ自身が魔術を専門にしていなくても、相手の魔術行使の予兆ぐらいは感じ取れるはずである。

ならば何故フィロ(自分)はこうして無様に地面に這いつくばっている?


(…………わからない、けど!)


フィロ(自分)の姿を心配してリーマとイエーリ(仲間)が近寄ってくる。

それをフィロは手で制しし、首を横に振る。

フィロと付き合いの長いリーマとイエーリは、その仕草だけでフィロの言いたいことがわかってしまう。

フィロがここで魔族を足止めする、ということを……。

足全体が凍らされている以上魔族からの逃亡は困難だ。

しかし、他のパーティーメンバーならば如何だろうか?

魔族との先ほどの会話で魔族の目的が『ウェトラン』(ここ)の調査を行うことだということはわかっている。

ならば『ウェトラン』から抜け出せさえすれば、もしかしたら魔族はリーマ達を無理に追うことはしないかもしれない。

いや、もうその可能性に賭けるしかない。

フィロは決意を固める。


「ヘェ……結構、イイ顔付きになったンジャねぇノカァ?さっきのヤツと似た様な顔になってんじゃネェカ?」

「……」


フィロは魔族の言葉を無視し、魔術を行使しようとしてーーー



「ーーーーーー、ーーーーーー、業火を以って砲撃を成せ!『火の砲弾(ファイヤ・シェル)』!!!」



ーーーフィロ(自分)の目の前に一人の人影が現れた。

左腕は何かに切断され血がぼたぼたと流れ落ち、背後からははっきりと見えはしないものの、脇腹からも多量の血が流れ出ていることが視認できる。

灰色の髪をしているその男は今までとは比べ物にならないくらいの魔力量を放出し、魔族を睨みつける。


「てめぇッーーー!俺の左腕かえせや、ボケェッッ!!!」

「………………グガッ」


右手に握っている火属性の魔石を突きつけながら、灰色の髪の男……レイトはそう怒鳴り散らした。






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