3.高咲 守の日常②
──午後三時十分。
吉乃が下校をする時間になった。
そして俺はもう既にスタンバイオーケー。
学校の向かい側にある並木道の影からそっと校門を覗く。
多くの生徒が下校する中、俺はその姿をいち早く捉えていた。
「よしの発見!」
吉乃は校門をくぐると家路を歩き始める。
今日は一人で帰ってるのか。
このご時世危ない奴らが多いのに一人で帰るなんて危なすぎる。
「ねぇ、お母さんあの人何してるの?」
後ろから子供の声が聞こえた気がする。
「見ちゃダメ。さっさと行くわよ」
「はーい」
「・・・・・・」
どうやら気のせいでは無かったらしい。
(いやいやいや、決して悪いことをしてる訳ではない。あくまで俺は吉乃の安全を守るためにだな)
そんなことはどうでもいい。
とにかく吉乃を追いかけ・・・あれ?いない。
一瞬の葛藤をしている間に吉乃は姿を眩ませていた。
(よ、吉乃はどこいった!?)
辺りを見回すが姿はどこにも見当たらない。
そんな状況にいても立っても居られなくなった俺はすぐさま吉乃が普段使う帰り道や歩きそうな道をくまなく探し始めた。
数十分後。
「お、おかしい。普段使ってるルートと使いそうなルートの計八本を急いで回ったのに見つからない」
まさか噂の変態野郎に拉致でもされたのか?
そんなのうちの妹に限って・・・・・・大有りだろう。
急いで見つけないと大変なことになる。
車の中に連れ込まれて服を無理やり剥がされ、あんなことやこんなことをされるなんて考えたら。
顔から血の気が引いていくのを感じる。
それと同時に本能が訴えている。
体よ、動けと。
そこからは一瞬だった。
町内全土を必死こいて駆け回る。
息が切れてもなお走るのをやめない。
駆ける、駆ける。
それでもとうとう限界は来た。心臓が悲鳴をあげ、足もガクついてる。
意志とは反して体が公園の地面へと倒れ込む。
(な、なんでいないんだぁぁぁ!)
心の中で大声で叫ぶ。
吉乃になにかあってからでは遅いのに。
自分の不甲斐なさにうなだれる。
なんて自分は無力なんだと。
「おにぃ何してるの?」
頭の上の方から俺のよく知る声がする。
(とうとう俺は幻聴まで聞こえるようになってしまったのか)
「おにぃってば!」
「!!」
重たくなった瞼を開けると俺を見下ろすように顔を突き出す吉乃がそこにはいた。
「よ、よしのぉ〜」
その顔を見た瞬間に疲れは吹き飛びび、無我夢中で吉乃に抱きついていた。
「お、おにぃ、ベタベタ!離れてよ!」
「いや(゛)だぁ、絶対離れないー」
「よくわからないけどしょうがないわね」
がっちりと抱きつき離れない俺に諦めたのか、照れながらも頭をよしよししてくれる。
「今日の(゛)吉乃は天使だァ」
「天使?おにぃほんとに何言ってるの?」
「な(゛)んでもないよぉ」
少し余韻に浸ったあと吉乃にどこにいたのかを尋ねる。
「そういえば、吉乃はさっきまでどこにいたんだ?」
「学校だけど?」
「一体なにしてたんだ?」
「学校に忘れ物しちゃったから取りに行ってただけだよ?」
「は、ははは」
空笑いしかでない。
俺が勘違いしてただけだったのか。
「おにぃ?」
「はは、まぁ帰るか」
そっと手を差し出したその時だった。
視界の端にいかにも怪しい格好をした男が映る。そしてイヤラシイ手つきで幼女の体のあちこちをいまにも撫で回そうとしているではないか。
(い、いたーーー! 変態野郎いたーーー!)
なんてタイミングだよ。
でもこれはどうにかしないとまずいよな。
とりあえず警察に通報する?
それとも助けに行く?
でも通報してる時間なんてないし、助けに行くべきなんじゃないか?
でもここに吉乃を置いていくのか?
もし置いていって何かありでもしたらたまったもんじゃない。
頭をフル回転させて考え抜いた結果俺はある結論に至った。
そして行動に移すべく吉乃の体に左手を頭から首付近に、右手を膝の裏へと入れる。
そして立ち上がり、心の中でこう叫ぶ。
(秘技、お姫様抱っこ!)と。
「ちょ、おにぃ!?何してんの!?」
「いいから俺に付いてこい!」
「えっ!」
そう言うと俺は変態野郎の元へとダッシュする。
「えっ、えっ、えっ、えーーーーー!」
耳元で吉乃の声が響く。
その間にも変態野郎への距離を詰めていく。
ぐんぐんと近づいていき、数メートル付近のところまで近づくと大声で叫んだ。
「変質者がいまーす!」
「なっ!」
犯人が驚いた顔をして逃げ出す。
それを追いかけながらもまた大声で叫ぶ。
「変質者がいまーす!」
すると周りにいた人達が一斉に振り返る。
そしてそれを見るや否や叫び出す。
「キャー!変質者よ!」
「誰か捕まえてー!」
「見て!おまわりさんが来たわ!」
「おまわりさん変質者がそこにいます!」
俺は助かったと思い立ちどまり、吉乃を降ろす。
束の間の安息──
ガチャリ。
俺の手元で突然金属音が鳴る。
「ん?」
「変質者逮捕ー!」
「えっーーーー!違いますよ俺じゃなくてアイツですよ!」
「でも君こんな幼い子を抱えて走ってたよね?」
「ち、ちが、妹なんですー!」
「そうなのかい?」
「は、はい。一応私の兄です。迷惑かけてすみません」
「紛らわしい!」
そう言っておまわりさんにバチコーンと頭を叩かれるとおまわりさんは急いで逃げた男を追いかけてった。
「全く災難だったぜ」
「それはこっちのセリフよ!」
やれやれアピールをすると吉乃の声とともに鉄拳が腹へと飛んでくる。
「デジャビュ!?」
それをモロに受けると日に焼けてアッツアツのコンクリート上でしばらくの間戯れていた。
──後日談
俺が見つけた変質者は住民の目撃情報の特徴と一致していたため後日改めて逮捕されたようです。
「変質者がいまーす!」
すると周りにいた人達が一斉に振り返る。
そしてそれを見るや否や叫び出す。
「キャー!変質者よ!」
「誰か捕まえてー!」
「見て!おまわりさんが来たわ!」
「おまわりさん変質者がそこにいます!」
俺は助かったと思い立ちどまり、吉乃を降ろす。
束の間の安息──
ガチャリ。
突然、俺の手元で金属音が鳴る。
「ん?」
「変質者逮捕ー!」
「えっーーーー!違いますよ俺じゃなくてアイツですよ!」
「ウソつけー!」
「お前、こんな幼い子を抱えて走ってたじゃねーか! 何が違うんだ!?」
「ち、ちが、妹なんですー!」
「そうなのか?君」
「は、はい。一応私の兄です。迷惑かけてすみません」
「紛らわしーわ!」
そう言っておまわりさんにバチコーンと頭を叩かれるとおまわりさんは急いで逃げた男を追いかけてった。
「全く災難だったぜ」
「それはこっちのセリフよ!」
やれやれアピールをすると吉乃の声とともに鉄拳が腹へと飛んでくる。
「デジャビュ!?」
それをモロに受けると日に焼けてアッツアツのコンクリート上でしばらくの間戯れていた。
──後日談
俺が見つけた変質者は住民の目撃情報の特徴と一致していたため後日改めて逮捕されたようです。
また同じような終わり方になってしまった・・・
次は吉乃視点で書こうと思います。( ̄▽ ̄)