泥棒編
『立てこもり強盗犯に告ぐ。お前は完全に包囲されている。大人しく出てきなさい。そうすれば正式に裁判を受ける権利を与えよう』
「ケッ、誰が大人しく出て行くかってんだ。捕まったら終いじゃねーか。めぼしいのは全部かっさらったな。人質はこのままにしておいて、こっそり裏口から出て行けば……」
『強盗犯、君の母親を連れてきた。大人しく話を聞きなさい』
「な、なに? か、母さん連れてきただと? くそっ、身元がもうバレたのか。早すぎるだろ」
『タカシ、あんたなんてことしてるの! 私はそんな子に育てた覚えはないわよ!』
「……ああ、そうだな。俺はあんたに育てられた覚えはないよ。出稼ぎばっかりで家になんて碌に帰って来なかったじゃないか……」
『……確かに、私は良い母親じゃなかったね。ずっと仕事、仕事ばかりで。でも私はお前が一番大切なのよ』
「……知ってるよ。母さんがどれだけ大変な想いをしてたかくらい。だからせめて都会に出て金稼いで楽させてやりたかったのに、なんで俺はこんな……」
『お前は優しい子だ。お母さん自慢の、最高の息子だ。だから、もう泥棒なんてやめなさい。一緒に警察やお店の人に謝ってあげるから、ね?』
「お母さん、俺は……俺は……!」
「犯人が建物から出てきた! 取り押さえ……」
「やめてください! あの子は私の息子です! ……もうちゃんと反省してるのだから、そのまま一人で歩かせてやってください……」
「……わかりました、命令解除! 逃走の可能性だけは警戒しつつ現状維持!」
「お母さん、ごめん、ごめんよぉ……。俺、金を稼ぐことが目的になっちゃって、気付いたらこんなことにまで手を染めちゃって……」
「いいのよ、タカシ。あんたに都会の風は辛かったんだろうね。さ、警察に謝って、罰を受けたら一緒に否かに帰りましょう? あんたの好きなカレー作って待ってるから」
「うん、うん、ありがとう。お母さん……!」
「で、あんたはいったい何をどれだけ盗んだの? 宝石を中心に泥棒してたって聞いたけど、一体何点盗んだんだい?」
「お母さん、ごめんなさい。100点取っちゃった」
最後、「取っちゃった」にしようか「盗っちゃった」にしようか死ぬほど悩みましたが、お題重視で書きました。




