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青春編

この話だけちょっと長いです。ご注意くださいm(_ _)m

 急に幼馴染の男の子に告白された。私は、どれだけビックリしたことか。言葉にできない。


「俺、お前のこと好きなんだ。初めて会ったときから、ずっと。付き合ってくれ」


 私は、嬉しくないわけではなかった。だけど、思わず断ってしまった。


「え、えっと、ありがとう。だけど、その、そんなこと急に言われても、私……」


「ううん、わかってるよ。お前、そういうの苦手だもんな。わかってるよ、長い付き合いだもんな。答えが決まったらいつでも教えてくれ。俺、待ってるから」


 そういうと幼馴染の彼は先に教室から出て行った。一人取り残された私は夕日の中、顔を真っ赤にして呆然と立ちすくんでいた。

 私はぐるぐる空回りする思考の中で、どうするべきか、どうしたらいいのか、ずっと悩んでいた。




 彼とは、もう本当に長い付き合いだ。

 最初に会ったのは幼稚園の頃だったはずだ。その頃から家が近かった私たちは、ずっと一緒に遊んでいた。

 女の子らしい遊びよりサッカーや鬼ごっこみたいな体を動かす遊びが好きだった。だからなのだろう、彼とは幼稚園の頃も、小学生の頃も、ずっと仲良しだった。

 中学生で性に目覚め始めた時期、他の友達は男と女で別に行動しはじめた。でも、私と彼はなぜかずっと一緒につるんでいた。異性として意識するまでもなく、兄弟より仲が良い親友として暇さえあればいつも一緒にいた。もう体の半身のようなものだった。

 付き合ってるんじゃないかと噂されるけれど、そんなこと欠片もなかった。ただの友達でただの相棒だった。


 それが今更、付き合ってくれだなんて。私はどうしたらいいのか、本当にわからなかった。


「……ねぇ、お母さん。お母さんはこういうとき、どうするべきだと思う? どうしたらいいと思う?」


 私は自分の悩みを母に相談していた。

 未だに色恋沙汰は苦手な私は、当然のように自分のことではなく、友達から相談された悩みと嘘をついて自分の悩みを相談していた。

 しかし、母はあっさり見破っているようだった。料理の手を止めて、私の前に座り穏やかな笑みを浮かべる。


「そうねぇ。その友達は結局、その幼馴染の男の子のことが好きなのよね? どれくらい好きなの?」


「ど、どれくらいって?」


「友達として一緒にいたいくらい? それとも恋人になりたいくらい? ずっと一緒にいられたらそれで十分に満足するくらい?」


 私は少し悩んでから答える。正直に言うと、彼とは身近過ぎてどのくらい好きなのか自分の気持ちがわからない。


「その、友達でいいし、もちろん一緒にずっといられたら、その、嬉しいかなってくらい……だと思う! そう友達が言ってたから!」


「そう? ずっと一緒にいられたらそれで良くて、友達のままならそれでいいのね? 間違いない?」


 母は苦笑しながらそう確認する。母の言葉の意図がわからず、うんと軽い気持ちで頷く。

 母は続けた。


「ということは、友達として一緒にいられるなら、それでいいのよね? もし彼に恋人がいても、一緒に遊べればそれでいいのよね? 恋人とのデートの報告を聞きながら、笑っていられるかしら? その恋人と、もし結婚して赤ちゃんができたとして、あなたは今まで通り笑って一緒にいられる?」


 私は、母親の言葉を聞いて、呆然とした。そしてその全てを想像して、信じられないくらい心が大いに乱れた。

 自分とは違う女の子と腕を繋いで嬉しそうな顔をしている彼。自分とは違う女の子との写真を見せびらかしてきて楽しい思い出を報告してくる彼。自分とは違う女の子とタキシードで格好よくキメてたくさんの友達から祝福を受ける彼。


 私のいないところで、幸せそうにしている彼。


 母は私の頬を拭ってくれた。


「泣かないで。泣いちゃダメ。女の子が泣いていいのは、好きな男の子の前だけよ。そして泣くほど辛いのなら、自分の気持ちに素直にならなくちゃ、ダメ。きっと凄く後悔しちゃうから」


「でも、でもお母さん。私、よくわからない。彼のこともちろん好きだけど、恋人としては見られない。でも、他に恋人ができちゃったら、私、私……」


「うんうん、わかったわ。あなたはまだ、自分の気持ちを持て余しているのよね。私もあなたと同じくらいのとき、凄く大変だったもの。だから、ね? こういうのはどう?」


 お母さんはお茶目な笑顔を浮かべると、素敵な提案をしてくれた。私は「なるほど」と納得して、その提案を受け入れた。

 そうして私は、彼に連絡して、ある提案をした。




 私も幼馴染の彼も、体を動かすことが好きだった。

 でも、ある日から彼に敵わなくなった。小学生高学年くらいから負けがこんできて、中学生になってからは完全に足手まといだった。


 それがとても、本当にとても悔しかった。


 だから、せめて彼に勝てる部分がほしくて勉強を頑張った。

 とはいえ、私も彼と同じくらいもともと頭が悪い。たくさん勉強しても、彼よりほんのちょっと成績が良いくらいだった。それでも良かった。


 彼が「うあー、また負けた! やべぇ、次赤点取ったら補習だよー」と嘆くと、私は心から喜んで、でも表情には出さずに「全く仕方ないわねぇ、私が教えてあげるわよ」とその後の予定を合わせた。


 そう、彼より私の方が勉強できるのだ。だから私は、母の提案通りに彼に挑戦状を突きつけた。


「今度のテストで、あなたが私より良い点取ったら付き合ってあげる。ダメだったら、その、ダメ!」


 彼はその挑戦状を聞いて、むしろ嬉しそうに顔を綻ばせた。


「わかった。今度は絶対にお前より良い点取ってやる。そしたら約束通り、付き合ってくれよな!」


「お、おう。わかったわ。手加減しないからね!」


 そう言って、私たちはテスト勝負をすることになった。彼が勝ったら恋人同士、私が勝ったら友達同士のまま。

 私は、正直勝っても負けてもどうでも良かった。友達同士のままでも良いし、恋人になったら、少し嬉しいかもしれないけれど、きっと今とあまり変わらないだろう。

 ただ、彼とは昔から良く勝負をしていた。サッカーしかり、かけっこしかり、鬼ごっこしかり。いつも本気で勝負をしていた。だからこそ今回のテスト勝負も、手を抜くわけにはいかなかった。私はいつも以上に勉強に励んだ。


 テスト当日。私は本気でテストを解いた。彼も、今まで見た事ないくらい真剣な顔でテストを受けていた。初めて見るその表情に、私は初めて胸を高鳴らせた。

 おそらく、これが「ときめいた」という奴なのかもしれない。顔が赤くなる。


 そしてテスト返却。私より先に彼がテストを受け取っていた。

 教壇の前で教師から直接テストを受け取り、自分の用紙を見た瞬間彼はガッツポーズをした。「よっしゃあああああ!」と大声を出す。クラス中の同級生が呆気に取られ、教師も「今回は良く頑張ったな」と手放しで褒めていた。

 恐らくとてもいい点数だったのだろう。彼は本気で努力したのだ。私は、凄く嬉しくなった。


 私の番になる。私はドキドキしていた。彼の点数はまだわからない。でも私のテストは何点とったか。彼より上なのか、それとも下なのか。

 私は彼と恋人になるのか、それとも友達のままなのか。私はどっちが嬉しいのか、それとも期待しているのか。もう、自分の気持ちもわからなかった。


 教師からテストを受け取る。恐る恐るテストの点数を見た。教師が「今回はお前も良く頑張ったな」と褒めてくれたようだが、一切耳に入らない。私は目を見開く。


 私は思わず片手で目を覆った。なんて空気が読めないんだ、私は。天を仰いでここにはいない母親に謝罪した。


「お母さん、ごめんなさい。100点取っちゃった」

【思いついちゃったので蛇足つけてみた】


「おい、テストの点数どうだった? 俺、絶対勝てる自信あるぜ!」


 幼馴染の男の子に呼び出されて、今私たちは屋上にいた。二人っきりである。

 よほど勝てる自信があるのだろう、明るい調子でそう言ってきた。しかし、私の表情は暗い。


 その自信満々の表情から見て、彼は相当勉強頑張ったのだろう。勉強は苦手だといつも言っていた彼が、私のために。

 だが、彼は私には勝てないのだ。絶対に……。


 この答案の点数を見せることは、つまり、彼とは付き合いたくないという自己証明に他ならない。

 こちらから勝負を仕掛けた以上見せるべきだ、でも見せたくない。


 彼は私の様子を不審に思ったようだったが、すぐに何か察したのか、物凄く驚いた表情になった。

 そしてなぜか先程より嬉しそうな表情になって自分のテストの点数を先に見せてくれた。


 私は驚いた。


「なあ、この点数なら俺は絶対に負けないだろ? 意味分かるか?」


 私はあまりの衝撃に口元を押さえた。テスト用紙が落ちる。しかし今はそんなことどうでもいい。彼のテストに埋め尽くされた丸を見て感動してしまった。

 勉強苦手な彼が、どれだけ本気で勉強をしていたのかがわかった。そして彼がどれだけ私と付き合いと思っていたのか、どれだけ私のことを想ってくれていたのかが、その点数によってはっきりした。


 彼は私のテストを拾い上げてテストの点数を確認する。そしてニヤリと笑うと、抑えきれない喜びを滲ませながら挑発してきた。いつものように。


「なあ、この場合どうするか決めてなかったよな? 二人とも勝ったってことにする? それとも負けたことにするか?」


 私の返答は決まっていた。

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