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雪に笑えば

作者: Riyu

冬を題材にしたとても短い短編です。私の妄想が多分に含まれていますので、甘すぎご都合主義かもしれませんのでご注意を。


   ***



 空から零れる雪に、曇る窓ガラスをじっと見る。


 暖かな部屋との気温差、張り付いた淡い氷の粒たちが瞬く間に溶け落ちて、ただの水へと成り下がる。


 雪として生まれ、雪として消えることのなかったことへの悲しみか。


 泣いているように、涙を零すみたいにみたいにして。


 いくつも、いくつも。


 消えては流れ、また凍る。窓の淵、見えない場所で凍りゆく。


 それは泣くほどに冷たく、誰かさんの頬と同じように。


 ただ、濡れては消えて。


「……馬鹿」


 そんな呟きもまた、雪の夜の静寂に掻き消えてゆき。


「帰ってこれないなら、最初から約束なんかするなし……」


 ――いまはただ遠く離れた君、想う。


 破れた約束、消えた逢瀬をただ想う。


 世界は輝く、クリスマス。踊るように誰もが浮かれるそんな夜に。


 カタカナ五文字の、特別な日に。


「……寂しくなった、だけじゃんか」


 たった独り、孤独を味わう。


 凍えるように、凍えたままで。


 私は独り、夜を過ごす。


 ――せめて今日は一緒にいると、約束した。


 普段が遠く、当たり前になりつつあるから。


 手を伸ばしても届くこともなく、喉が裂けるほど叫ぼうが聞こえない場所の君だから。


 せめて、と君が言ったから。


 せめてを君に、期待したから。


 二十四時間の長くも短い、たった一日を。


 世界のどんな記念日よりも期待した。


 けれど。


「……あと、五分」


 残り時間は、あとわずか。


 雪が染めたこの日が終わる、五分前。


 儚く終わる、五分前。


 どんな記念日だって、『仕事』と言われて過ぎて終わればただの日常でしかなく――間に合うわけも、あるはずもなく。


「あと、四分」


 カウントダウンは、誰にでもなく。


「あと、三分だよ」


 過ぎる時の無情さは、容赦もなく。


「……二分」


 早鐘のように迫る鼓動は、知られるはずもなく。


「……」


 そして、口にすることもできなくなった言葉も。止まることのない針の歩みも。


 なにもかも、すべてが。


「――もしかして、泣いてるのかい」


「っ!?」


 窓に現れた、手のひらサイズの小さな君が。


 まん丸な頭と体に拾った小石と枯れ木で作られた、崩れたような顔をした不出来な君が。


「……寂しかった?」


「……誰のせいよ」


 君の声が。


 なにもかも、悲しさも孤独も冷たさも、積もる寂しさすらもあっけなく吹き飛ばしてしまって。


「……でもギリギリ、間に合った?」


「ギリギリ、すぎ」


「うん、ほんと、」


 ごめんな、なんて言うから。


 弾んだ息で、肩を揺らして。


 頭にいっぱいの雪を乗せて。


 小さな君に隠れるみたいに、ひょっこり顔を覗かせて。


「でも、間に合った」


 安心したみたいに笑って、釣られて私も笑って。そして。


「メリークリスマス、プレゼントはいかがかな?」


「……なに、くれるの?」


 問いかけた私に、君はもっと、もっと笑いかけて。


 窓から身を乗り出した、吐いた息の白さも、凍えた体の冷たさも。


 すべて忘れる、暖かさで。抱きしめて。


「俺の一生を、君にプレゼントしにきたんだ」


 愛してる。


 たったそれだけで、残り五秒も笑顔で埋まる――そんなクリスマス。

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― 新着の感想 ―
[一言]  どろどろしているよりも、純粋な方が好きです。
2017/01/19 11:39 退会済み
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