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オレに支援魔法をかけてくれ!  作者: デンチュウ
7/8

エルフの買うなら銅貨十五枚~重てぇよ。笑えない冗談だ~



 ある冒険者一行がいた。

 戦士、騎士、僧侶、魔法使い、支援使い。

 五人は幼なじみで、仲良しパーティーであった。

 彼らは地道に戦績を地元から、地域へ。そして王国へ有名を轟かしていた。

 王国は冒険者一行に目をつけ、お抱えの騎士にと王宮に仕官させる。

 一行は名誉なことだと大層喜んだ。

 これ世に名を残せる、大金が手にはいると。

 冒険者一行は仕官したあと、王国に尽くさんと身を粉にして働いた。

 市民からは名誉を褒められ、貴族からはお金を寄与された。

 冒険者一行は有頂天だ。一人一人の接点が薄れていくのを知らずに。


 数年後、事件が起こった。王国の存亡の危機である。

 王国南西の森にドラゴンが現れたのだ。

 王国は対処に、冒険者一行を中心とした師団をまとめ、ドラゴンを討伐する勅命をだす。

 結局、ドラゴンは冒険者一行の活躍で撃退できた。

 仕留め損ねた。師団は壊滅。

 冒険者一行は、うつむきながら王国へ帰り、国民から歓待を受ける。

 英雄だ、我らが英雄だと。


 冒険者は帰ってきた日に、王と共に会食した。宴である。

 和やかな食事であったという。

 一人ずつ武功を自慢するのだ。

 ドラゴンの目を斬った。ドラゴンの爪を受け止めた。ドラゴンの翼を爆裂魔法で吹き飛ばした。ドラゴンを回復した。

 冗談と誇張を、余興とみな楽しんだ。

 しかし、一人。最後の支援使いが言う。わたしはみんなを支援した、と。

 王はうなずく。が、他は眉をつり上げた。

 おまえは、なにもしていない。


 他の冒険者が支援使いをなじりはじめたのだ。

 自分の力だ、おまえの力を借りていない。

 王は支援使いが役に立たないと理解した。

 そう、いままで冒険者一行に費やした大金は、国民を養う金である。

 王は支援使いを放逐し、お触れをだす。

 支援使いは、我らの金を騙し受けとっていたのだと。

 国民は支援使いの武勇伝が、みんなを支援した、ぐらいしか知らないので真に受けた。

 支援使いが泣きはらしながら去るのを、国民は見ているだけだった。



 ☆



「その王国は滅んだ?」


「知らないわよ」


「おとぎ話を聞いて第一声が過激すぎる」


 泣いてしまう。

 目立たないながらに、パーティーを支える支援使いが評価されない。

 他の冒険者一行が、支援のありがたさを忘れやがって。

 やるせねぇよ、この物語。とくに最後の支援使いは悪口をいうのでもなく、泣きはらしていたとか。

 皿に残っていた最後の菓子を食べる。せんべいみたいな食感だが、味気ない。

 斜めに座っているアルティナが手を伸ばしていたが、最後の残りはオレが食べてしまった。

 たくさん食べていただろう、おまえ。


「うがぁぁぁぁああ!」


 頭をかかえ、身もだえる。

 悲しいよな、支援使い。裏方で支え続けてたのにな。


「感情移入してるわね。うふふ、語り手としてうれしい限りよ」

「支援使いの境遇がオレの心をうった」

「どこが?」


 邪気のない顔でアルティナは首をかしげる。


「最初からずっお最後まで、支援使いはなにをしていたの? わたし、そこが疑問」

「冒険者一行の英雄譜を称える話なのだけど、確かに支援使いはなにをしてるのかしらね」

「ステータスを強化していたんだろ」

「なにを、どうしたか、明記してないよ?」


 アルティナは指で口をなぞり、左上を眺める。

 支援使いは物語の踏み台か。

 オレの感動の興奮が冷めてしまった。


「ふぁ……眠いわ。今は何時だろう」


 ダリオは目をこすり、前をむく。

 とたんに目開く。


「なにかあった? 変人なら前にいるよ?」

「オレを見るな」

「最後のマロットを食べた恨みは大きい」

「根に持っていたのかよっ!」


 アルティナはオレを見上げ、にらむ。

 若干、涙目である。


「夜が明けてしまったわ……」

「本当だな。日が差してきているぞ。結構話が熱中していたからな」


 五枚ある片方の窓から太陽光が差している。

 ギルド内は、かがり火が照らしていたので、時間の経過があいまいだった。


「朝ごはん、食べよ」

「アルティナって大食いなのな」

「毎日、黒パンと夜のまかないだけが、わたしの人生」

「ノーコメントで」

「なら詳しく教えてあげる」


 貧しい展開しか頭に浮かばねぇ。


「アルティナさん、そこまでにしてあげなよ。見ていてむなしいわ」

「どきついコメントだな、おい!」

「わたしの食費、一日銅貨五枚。そして朝ごはんは昨日の黒パンの残り」

「……オレもそうなるよな」

「ちなみにわたしは銅貨十枚以上ね」

「……ユウ、わたしの支援魔法を価値を高くして……っ」

「おう、任せろ」


 アルティナをパーティーに誘うとき、食べ物で釣ったらよかったかもな。

 悔しそうに手を握りしめている。まじか、血が出てるぞ。


「支援使いなのよ? 無理があるわ」

「もうやめろよ……っ! 悪気がないって罪だっ!」

「実は前から一日、朝の稼ぎが銅貨五枚から六枚になるのが目標なの」


 いきなり話題が飛んだな。


「え? いつからだ」

「冒険者登録してから五十年ぐらい」

「パーティー組んだら、報酬が山分けなのがつらいわ」


 オレはしゃべりたくない。

 だから二人とも、オレの目を見てくるな。


「六枚になるよう、誠心誠意、励みたい」

「ユウさん……」


 なんでダリオが困った顔をしている。

 そもそもの原因はお前だろ。

 ていうか、なにこの空気、誰も口をあけなくなった。


「そろそろわたし、おいとまするわ。あとで出勤だから、寝たいし」


 去ろうとする肩をつかむ。

 おいおい待てよ。


「大丈夫かよ。徹夜だろ? 無理せずに、ここで寝たら?」

「あらあら、ユウさん。寝顔をここでさらせってことかしら」

「違う。逃げるなコノヤロー、ずるいぞ」

「態度がだんだん遠慮がなくなってきたわね」

「昨日、モルモットにこきつかわせたこと、オレは忘れてないからな」

「でもユウのおかげで夜は五枚から七枚になってわたし、うれしい」

「ダリオ、行け。もう、解散しよう」

「ええ。おやすみ」


 すぐにいなくなるダリオ。どんだけ空気に重みを感じていたのやら。

 アルティナの発言がさっきから悲痛だったからか。

 五枚から七枚になったよって、

 ていうか、アルティナ、一日の銅貨の稼ぎはいくらだよ。

 朝と夜っていいわけている。聞くのは地雷かも。だが、気になる。


「一日いくら?」

「わたしは安くないの」

「ごめん。言葉が足らなかった」

「買うなら銅貨十五枚、それがわたしの一日の収入」

「オレもその収入になるから、アルティナを買えないよ」


 毎日の十枚の貯蓄、いつか大きなことに使うのだ、だろうな。


「ま、五枚しか使わないから、二日で二十枚は貯まる。アルティナを買えるぞ?」

「十枚は宿代、だから残らないよ?」

「今日からオレたち二人だし、少し無理できる程度で、銅貨七枚の任務に行こうぜ」

「わたしを買うためにだなんて、いやらしい……」


 体を抱き締め、アルティナは後ずさる。

 今までの話の流れで、買収の意味で受けとめたか。


「いやらしいのはアルティナの格好だろう」


 露出しまくってるのだものな。男を誘ってるだろ、特にお腹をさらしてるのな。


「薬草の森に行こう。そろそろ、いつもの時間だし」

「自覚してたのか」

「ユウの視線がね、ねちっこいから」


 バレてたのか。次からはこっそり見よう。

 受け付けに向かうアルティナを、オレは追いかける。

 支援使い、アルティナ。絶対とパーティーを組もう。

 七日間以内に支援魔法の認識を、良い方向に変えよう。

 気にくわない支援使いの歴史、逆転させてやる。

読了ありがとうございます!

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