登録〜これで依頼を受けれるな
街についたら人の多さでごった返しだ。前に進むのに一苦労。
イタリア、ドイツ、フランス。
それらのような西洋の町並みが広がっていた。
石畳の道路。家屋は木造とレンガ造り。
セルディア。街の名前だ。
森を出てからセルディアの道中は平原であった。
草木がのびのびとしていて、空気が美味しかったなぁ。
「着いた」
オレが平原の景色を思い出していたら、アルティナが建物を指差していた。
白い大理石のようなもので出来ている。小さなお城みたいだ。
どのようなところなのだろう。
アルティナとオレは入り口を通る。扉がないことに驚いた。
入る前から声が聞こえると思った通りにうるさい。汗の臭いが近くから。筋肉が盛り上がった人が近くにたくさん。
アルティナは素早く通っていく。オレは肩と腕が人に当たってしまい、謝りっぱなしだ。
気づいたらアルティナとはぐれた。とりあえず前に進もう。
ある程度歩いたら、アルティナと女性が会話をしているのを見つけた。アルティナが草を渡し女性が受け取ったところでオレは彼女たちにたどりつく。
「薬草の納品いつもありがとう。これ、報酬」
「いつもの黒パンセット」
「了解。銅貨五枚ね」
アルティナが通貨らしきものを渡し、代わりに木の札をもらう。そして振りかえり、オレと目が合う。
よくも置いてきぼりにしたな。
「そういえば着いてきていた」
「忘れていたのかよ」
「ごめん。お腹がすいてたから」
「わざとじゃないみたいだな。次は気を付けてほしいところだ」
「そちらの人は初めて見かけるけど、アルティナさんのお連れで?」
女性が手をあげて聞いてきた。会話に割り込んできたので高い声が自信なさげである。
茶色のショートヘアー。青い服装。スーツみたいにボディラインがくっきりだ。
顔つきは、整っていて美人さんだ。
「森で出会った」
「森ね。カカマロの森でしょ? 確か今朝、流星が落ちた付近よね。見た?」
「見た」
オレがふってきたのをアルティナが見つけただもんな。
「この隣の人。ユウが落ちてた」
「簡単に言っちゃたよ!?」
流星をどうするか聞いていないから、内緒のすべきだろうにオレのことは。
ダリオはオレの体全体をじっくり眺めている。
黒髪。細い体。笑えばかわいいって言われたフツメン。ですけどなにかある?
「人がふってくるのは信じがたいわ」
それもそうだ。
「一応、報告はしたから」
「森のどの辺りか教えるかしら。明日、偵察隊を向かわせるのよ」
「カカマロの森右半分の下辺り。そこの薬草畑から北西、かも」
「情報をありがとう。これお礼金」
アルティナは受け取り、机が並んでいるところへ歩いていった。オレも行こうかな。
「あなたは冒険者かしら? どこの街とか村から来たの?珍しい格好ね」
前世のシャツとジーパンだもんな。
「格好は、まぁどう言えばいいかわからない。冒険者登録みたいなことはしてない。それに森からきた」
「へぇ……わかったわ。登録自体が無量だし、とりあえずしてみる? いろいろお得だし」
「わかった」
いろいろの部分が聞きたい。けど登録はしたほうがいいのは確実だろう。
ここが冒険者ギルドみたいだし。
「こちらの羊皮紙に名前を書いてね。はい、筆」
文字が縦に並んでいる。不思議なことに文字の形が雑で整っていない。
筆をもらい、日本語で名前を書いて羊皮紙を女性にかえす。
「珍しい字の形ねぇ。わたし初めてみたわ」
「やっべ」
言葉が通じていたから文字も伝わるだろうって意識してなかった。
日本語なんて意味が伝わるわけないよな。
女性は羊皮紙に食いついていて、にらんでいる。
「オレの字を読めたりするのかな?」
「読めないわ。あとで解析魔法で読んでもらうわ」
なんだ魔法か。なんでもありだな。
「その筆は解析魔法が付与していてね。書いた本人の字、意味を込めるものなの。あとは情報を取り出すだけ、驚かせて悪いわね」
「よくあることなのか?」
「遠い人たちの文字がわかるのかって驚くのはよくあることみたい」
「すごいな。この筆」
女性に素早く筆を返す。きっと高価なものだろこれ。
「これでギルド登録は終わり。依頼を受けるときは受け付けに言ってちょうだい。あなたに合った依頼をなるべく紹介するから」
「依頼を受けるときは受け付けに、だな。わかった」
「登録記念に魔法板をあげるわ。なくしたらダメよ」
「ただの石ころ? にしてはキレイだ」
「あとで、四角い枠に指先をつけてみたらその石の正体がわかるわ」
魔法板と呼ぶものをオレのポケットに入れる。
「初心者はまず薬草採取と体を鍛えることを薦めるわ。目指すはパーティーを組んで魔物討伐よ」
「了解。ありがとうな。さて、パーティーか……」
話を終わったとみて、オレはアルティナを探す。
まずはアルティナとパーティーを組んでみよう。支援使いが、いるかいないかも聞きたい。
オレが転生した理由は支援使いの役に立つこと。スキルのバフエヴァケイションは支援魔法を受けると効果が数倍に膨れ上がる。まさしく支援使いのためにあるものだ。合流をはやくしてみたいものだ。
にしても人が机に集まっているけどアルティナが見当たらない。まん中の騒がしい場所にいないからもっと端のほうだろうか。
「アルティナさんとパーティーを組んでいないのですよね?」
背中を引っ張られ、質問してきたのでオレだとわかった。
後ろを見れば、目についたのは茶色の頭である。
「え? あぁ、さっきの受け付けさん?」
「ダリオっていうの。業務中ではないので気軽に呼んでね」
「わかった、オレはユウ。で、パーティーは組んでない。今から話を持ちかけよう思っている」
ダリオはため息をつく。
「なんでだよ」
「もし仮定としてパーティーを組んで、将来を考えてみたら?」
お互い様に利益がでるようにしたい。もし組んだときに問題があり、将来的にパーティーが解散する可能性があるなら組まない。
アルティナの性格は正直者。さっぱりしているから、波長が合う合わない人で別れそうだ。
オレはアルティナに苛立ちを覚えたってないから、オレがアルティナと組むのは問題ない。
アルティナに悪い部分があるのだろうか?
「申し訳ないのだけど、アルティナさんとパーティーを組むのはオススメできないのよ」
眉と肩をダリオは落とす。
「アルティナさん支援使いだからね」
「支援使いだって?」
「そう。アルティナさんは悪くないけど、支援使いだからパーティーにいても扱いにくい。だから初めからパーティーに誘わないように教えてあげようかなってわたしは思ったの」
「そうだったのか……」
「気を悪くしたのならごめんなさいね。ユウさんの恩人だろうから……」
「逆に好都合!」
「え? あれ?」
ダリオが目を見開く。
驚かせて悪いな。
にしても運命的だ。森に落ちたさきに出会った人が支援使いだったとは驚いたぞ。
支援使いの役に立つ。オレの目的の第一歩を達成できるぞ。
「悪いなダリオ。オレ、アルティナのとこに行くわ!」
「あ! ちょっと待ってーー」
オレはアルティナを急ぎ足であてもなく探す。
ギルドのすみっこのイスに腰かける金髪の女の子がいた。見つけた、おそらくアルティナだろう。
こんな皆から離れた寂しい場所で食べているとは思わなかった。
「ようアルティナ。探したぞ」
「ユウ。なにしていたの?」
「ギルド登録だな。オレを放置していくのはさすがにひどいだろ」
「ごめん。お腹すいてたの」
「それ、さっきも言ったよな」
「お腹すいてたってしか言いようがないのだもの」
「あっさりしてるな……次からどこにいるか教えてくれよな」
「次があるの?」
首をかしげる。
「突然なんだけどアルティナ、オレとパーティーを組もうぜ。支援魔法がオレに必要なんだ」
アルティナはガタンと席から立つ。
驚きすぎじゃないか?
「支援使いと知っていてなおわたしと組みたいの? 信じがたい……」
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