転生〜いきなり危機直面か?
大幅に改稿しました。話の流れを変更しました。
「ああぁぁぁぁああ!」
はるか上空からオレは高速で落ちていく。体を見ると白く輝いている。
おそらく転生したからオレは空にいるのだろう。
じわりじわりと迫る大地。
み、緑が多いなぁ柔らかそうだ、なんつって。オレのクッションになってくれるかな?
「助けてぇぇっぇええええ!」
緑のあいまいな景色から木の先端までがはっきりと見えた瞬間に、オレは確実に死ぬんだって悟った。
目を強くつむったとき、顔面に物がぶつかる感覚がひろがった。ついでなにかがへし折られていく音が後ろから聞こえる。体全体が固いものに打ち付けれてからようやく止まる。
何回、転んで飛んだのだろう。
「うおぉえぇ。頭がグラグラするぅ」
景色が横に伸びる感じでひどく歪む。
横から仰向けに体をゆっくり動く。
あぁ空が青いなぁ。自然の香りは……あれ美味しいと聞くけど、苦い?
まぁいい。アリア、オレを転生させる場所を間違えたのか?
起き上がり、オレが落ちてきた方向を見る。
地面が真っ直ぐにえぐられ、へし折られている木が複数あるのが前にあった。
普通だったら確実に死んだな。しっかりしてくれよアリア……
服についた土ぼこりを払い、立ち上がる。
せっかくのシャツとジーパンが茶色くなったな。
さてここからどうしよう。行き先わからない異世界で、しかも周りは森である。もしかしたら近くに肉食動物、あるいは魔物がいる可能性があるだろう。
絶望的から地獄になったぞ。助けを呼ぼうにも叫んだら、余計な生き物がくるかもしれない。どうすることもできない、最悪だ。
そのとき葉が擦れる音が聞こえた。
人か? まさか助けがきた。やった、助かる。
茶色と毛のようなものが見えた。
ですよね。森に運よく人がいるなんて都合が良すぎる! 逃げようか、でも木しかないから隠れるか。
後ろから足音。終わる葉こすれ。
万事休す。
オレはガチガチになりながらも振り返る。耳が長く、脚が肌色で、毛をあしらった胸あてを着た女の子がいた。金色の長い髪。藍色の瞳。もしやエルフって種族なのか。
魔物とかではなくてよかったぁ。
にしても露出の多い服装だな。胸と首元を隠す。丸みえな下乳と健康的なお腹である。極みつけは股に食い込む下着っぽいもの。ブルマみたい。ズボンも履いていて、ブルマを隠すように透明な生地がある。
色白な肌が際立つぐあいに、服の下が黒で上が赤紫か。
「助かった。人だぁ」
絶句しているようで女の子は固まっていた。
「大丈夫ですか?」
「流星だと思った。けど人の形をしている?」
女の子は足を折り、武器を構える。
あれクロスボウだよ!? 銃みたいに射出するやつだ。
鋭い目付きで躊躇なく弦を引き絞った。
「待った待った撃つなよっ! オレは怪しくない、です!」
すかさず手をあげる。
敵じゃないよ。
女の子は構えを解かない。警戒をしているのかな? おねがい、武器が恐いからおろして。
「叫びが聞こえたと思って来てみたけども。人間は空から落ちてこない」
「ごもっとも。オレも空から人はないなぁと思い、ます」
「ならば流星?」
「無機物じゃない……です。宇宙人でもない」
「うちゅう、じん? もしかして竜人のこと?」
女の子はクロスボウを下げる。
問答無用で射殺なんて状況は免れたようだ。
異世界に宇宙人って言葉はないのかも。それで疑問を返したわけだろう。
オレも竜人ってわからないのだけども、返答にいかがしよう。
適当なことを言ったとすれば額を撃ち抜かれそうなんだよな。
よし。まずは自己紹介からして時間をかせごう。
「あ、あのさ。まずはお互いに名前を言わない? オレは赤城ユウ」
「アルティナ。問うけどいい?」
「ど、どうぞ」
「アカシロって名字?」
「そうだ。なにかあるの?」
「そう、空から竜人。伝承の英雄と同じ存在かと思ったけど、貴族なのね」
「あのぉ、自分だけで納得されたら困るんですけど。いまいち状況が理解できないので」
額を揉む女の子は悩ましげに息をはく。
「あ、ついでにオレは貴族じゃない、ので!?」
耳の横にいきなり矢が通りすぎる。
時間をかせぐどころじゃない。
アルティナは弓を補充しだす。次は心臓だぞ。オレからはそう見えるほかない。
しまった、デスアンサーだったというのか。
「貴族の名を騙る族とみた。貴族がここに居るはずがない」
「ウソじゃない。名字をもっているのは断じてウソではない!」
「なら証明して」
アルティナって遠慮なく言ってくるよな。
淡々とした態度で、表情がくらい。
「ない。今の持ち合わせているもので名字があるなんて証明できない」
「だったら死んで」
弦が弾かれるのと刺さる音が響いた。
ゆっくりとまぶたを上げればアルティナの足元の横に、地面に刺さる矢があった。
「貴族でないなら名字を捨てること。街でなら問題が起きる」
「わ、わかった。教えてくれてありがとう……ございます」
心臓がうるさい。手のひらは汗がびっしょりだ。
それにしても死んでと言っていたのに、オレは生きているのだろうか。
「オレを殺さない理由を教えてほしいのですけど、死んでってはったりですか?」
「貴族の証を騙る賊なのに貴族でないと言い張る。だったら試してみた」
「度胸を、ですかね」
「有り体に言えばそういう。賊なら怒るか命乞いをするかなって思った。でもあなたは、しない」
唾をごくりと飲み込む。彼女の視線で一番冷たいものを感じたからだ。
「ユウを殺そうとしたわたしが言うのもなんだけど」
「名字を名乗ったのが悪かったのですよね。タブーをしでかしたのなら怒れないです」
もうちょっと穏便にできなかったかと思うけどな。
「怒れない? 怒っても仕方ないことをわたしはした」
「自覚はあったのですか」
「わたしは手っ取り早く物事を進めるだけ」
横暴だろう。
恐い人だよ。いや、怪しいやつの会話に付き合ってくれるのだ。まだ恐いって決めちゃいけないよな。
「ユウはなにもの」
「え? なにものってどんなやつかってこと?」
「どこから来たの?」
「オレは……オレ、は……」
異世界人。転生者だって言うべきか。
世迷い言だって笑われるのかもしれない。でもここで転生者だって言うほかにない。
真正面からアルティナをみる。視線を外さないでいるアルティナ。
「オレはアリアっていう女の子に頼まれて異世界からこの世界に転生をしました。異なる次元というか文化が違うところから、ここに来たのです」
「……不思議な人」
「信じていないのですか。まぁ、信じてもら少しはおうって思えないですがね。転生自体がウソっぽいですから自分で言っていて」
「でも真っ直ぐな感じが伝わった。それにユウは空から落ちてきたのは事実だから転生云々もほんとうかも」
オレが落ちてきた方向にアルティナは指をさす。
えぐれた地面とか、人が落ちてきたには現実的でない。
「あ、お昼がちかい」
アルティナはクロスボウを背中に回す。
あれ、ここから去るつもりなのか。いなくなったらオレは森で飢え死ぬ。ここで詰むかもしれない。
「わたしは街に帰るからユウはどうする」
「オレも着いていっていいですか?ここがどこかわからないので」
「異世界人って言ってたからか。うん。わたしに着いてきて」
よっしゃ! 街に行ける。
なんとか次に繋がったぞ。アリア、支援使いを助ける前に遭難しかけたぞ。街とか安全な場所へ転生してくれよ。次に会ったら、落としことに関して文句を言わせてもらうからな。
拳を握りしめて、前を見て気づいた。
誰もいない。葉っぱがガサガサと鳴らす存在がアルティナだろう。
待ってくれよ。この不思議な出会いを無視して帰るアルティナの考えが知りたい。
はぐれまいと足の限界までオレは走った。
読了ありがとうございました!