「とらんすさん」
episode9
「とらんすさん」
空を舞う粉塵
元は何だったのか
今はもうわからない。
「ど、どこ!どこに行ったの!?」
冥さんが叫んだ途端、倉庫の荷物は全て消し飛び、窓は割れ、壁には穴が空いた。
おそらくこれがトランス状態なのだろう。
「またなの?冥。」
口が開いたままの僕をよそに、
花子さんは顔色1つ変えず対応する。
冥さんはまだ慌てたままだ。
「ちゃ、ちゃんと古名さんに蜘蛛は入れるなって言ったんですか!?」
花子さんはまるでいつもの事のように頭を掻きながら応対する。
「あー、ちゃんと言ったんだけどね・・・・・。ちょっと聞くけど、蜘蛛はどこにいたの?」
「ま、窓の外にいました!」
「中にはいなかったのね?流石にそれは古名に言っても無理よ」
「そ、そんなぁ・・・・・」
冥さんががっくりと肩を落とすと、周りの床が剥がれ、空中へと分離していく。
僕は死ぬ可能性を危惧し、花子さんの後ろに下がる。
そんな僕を見かねて花子さんが少し僕の前に出る。
「冥、まだ収まらない?」
「や、やっぱり1回開放しちゃうとなかなか・・・・・」
「私は構わないけどこの子・・・・・、いや、真也は困ってるみたいよ」
初めて名前で呼んでもらった
ちょっと嬉しい。
と、同時に自分の主張を口にする。
「先程のを見るとさすがに怖じ気付いてしまいますよ・・・・・。僕は生身の人間ですし」
「そうよね、とりあえず古名には後で連絡を入れて壁とかもろもろ直してもらうわ」
そういえば・・・・・。
「すみません、古名さん?とはどなたの事ですか?」
「あぁ、まぁ知らないわよね。七不思議メンバーの1人よ。紹介しようか?」
好奇心で返事が出そうになる。
が、目の前の惨状を見ても紹介を受ける気にはならない。
「いえ、遠慮しておきます。」
「そう?残念。」
そんな話をしている最中にも
空中にはまだ剥がれた床や
元は壁だったであろうコンクリートが浮遊していた。
花子さんはため息をつきながら、
「仕方ないわ。翠先生に力を借りるわよ。冥、そこで待ってなさい。行くわよ、真也。」
そう言って花子さんはドアを開け、廊下に出ていった。
「あ、待ってくださいよ!」
また蜘蛛が入ってきたら・・・・・
想像するだけでも恐ろしい。
僕は転びそうになりながらも花子さんの後を追った。
次回投稿は来週の火曜となります。




