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「じょうきゅうあくりょうさん」

episode6

「じょうきゅうあくりょうさん」



「・・・・・。」

僕も

「・・・・・。」

花子さんも

「・・・・・。」

どろどろも動かない。

暗い図書室を包む静寂。

それをかき消したのは

下卑た嗚咽を孕む声だった。

「んがぬ゛あばああ゛あ!」

どろどろが花子さんを睨む。

「よく゛もや゛ってくれたなあ゛ああ!」

「・・・・・やっぱりね」

花子さんが構え、どろどろに話す。

「あんた、上級とは行かないけど中級程度の実力でしょ。魂を食い強くなったのね。」

どろどろも2本の腕を構える。

「ぐがごごぬ゛」

――もしかすると


まさか


昔は貸し出されている本が多かったり人気な本は読めなかったりしたが、最近みんな忙しいのか図書室には僕1人しか来なくなった。

まぁ他人事なのでどうでもいい。


「まさかお前・・・・・、図書室の常連を・・・・・。」

僕が怯えながら言うと

「あー、そういうこと。なるほどね」

花子さんは合点がいったようだった。

「あんたは図書室の教師に取り付き、普段女の子と喋る機会が無いような子を誘惑で二人きりにして魂を貪っていたのね。」


「そして、その子の次はこの子だった・・・・・。違う?」


「げひぐ・・・・・、そうだよお゛!ひとはばかだらけ゛だ!うそひと゛つもみぬ゛けない!」


「たま゛しいを゛くいまくった゛えい゛きょうか、こえ゛はおか゛しくなっちま゛ったがなあ!」


「魂は食えば食うほど死んだ者の恨みを体に入れるのよ。声も態度も昔とは別霊のようになっているでしょうね。」


僕は吐きそうだった。

恐ろしい。

もう少しでこいつの糧となっていたなんて。

僕の方を見て花子さんは言う。

「――あと確かにそうね、人は成長しないし、馬鹿だし、欺瞞だらけよ。」

「でも、それでも強さを追い求め魂を貪る貴方の方が醜いわ」

「ゆ゛って゛ろ!」

バッ

どろどろが花子さんに向かって突進する。

「ええ、言わせてもらうわ」

花子さんはそれを軽くいなし、

ドッ!

どろどろの顔に拳を当てる。

「がばお゛う゛う!」

どろどろが顔を抑え、俯く。

そこを花子さんは逃さなかった。

「せいっ」

メギョッ!

花子さんが手を刀のように使い、どろどろの腕を切り落とす。

「がぬあ゛あ゛ああ!」

どろどろが叫ぶ。

「な゛んでそ゛んな゛につよい゛んだ!さては゛おまえも゛たまし゛いを゛く゛った゛な!」

どろどろは花子さんを睨むが

「そんなわけないでしょ」

花子さんにまるでサッカーボールのように蹴りを入れられていた。

「ん゛んぐばぬ゛うう゛う!」

のたうち回るどろどろを他所に花子さんは子どもに諭すように話し始めた。

「あんた、知ってる?霊ってのは生前の恨み辛みで妖気の強さが決まるの。」

「あんたに何があったか知らないけど私の方がこの世を恨んでるのよ。」



「上級悪霊としてね。」



「なんだとお!?お゛まえ゛ごとき゛がじょうきゅ゛」

バゴッ!

花子さんが再度拳を入れる。

「が・・・・・あ゛・・・・・。」

「・・・・・で、降参する?」


「わ、わ゛かっ゛た、こう゛さんしよ゛う」

花子さんはどろどろに背中を向けて

「そう。じゃあ後は適当に成仏でもするのね。」

と言い、僕の方に歩いて向かってくる。


しかし


「があ゛っ!」


どろどろは諦めていなかった。

腕を槍のように変化させ、花子さんを突こうと振りかぶる。


「花子さん!危ない!」


ズバァッ!




「ぐぬ゛あ゛」



「あなたは馬鹿ね、」


「嘘1つも見抜けない。」


花子さんは知っていた。

攻撃が来ることを。

それに合わせ、カウンターでどろどろの体を手刀で真っ二つにしたのだ。


「な゛・・・・・んで・・・・・、そん゛・・・・・な・・・・・。」


どろどろの体が煙のように消えていく。


「い゛や゛だ」


消えていく。


「い゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だい゛や゛だ」


消えていく。


「いや゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


ボシュウ・・・・・


どろどろは完全に消えた。

涙の跡がくっきりと残っている僕の頭に手を置き、花子さんは言った。


「依頼完了よ。またいつでも来なさい。」

これが僕と花子さんとの奇妙な関係の始まりだった。

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