「とうちゃくさん」
episode15
「とうちゃくさん」
何分歩いただろう。
光と闇が混じったような奇妙な通路。
ここを通れば目的地の「シュルテント」に行けるらしい。
いつもならこんな平坦な道、いくら運動オンチの僕といえども走って行く。
ハァ・・・・・ハァ・・・・・
だが不可解な事にそうはいかなかった。
何故か足が重い。
先を歩いている翠先生にも疲れが見える。
頭もくらくらしてきた。
「ふぅ・・・・・、大丈夫かい?ここは妖気が強いからね、もし辛かったら頼ってくれて構わないんだよ?」
翠先生が僕の前で立ち止まり、手を差しのべてくる。
ありがたい事だが冥さんが心配になり、断る。
「大丈夫です、この程度・・・・・・・・・」
翠先生はくるりと向き直り、
「そうかい、気づかないうちに倒れて霊体が消滅するのだけはよしてくれよ?」
と言う。
また、歩きだす。
歩く。歩く。
ひたすら歩く。
景色も雰囲気も臭いも変わらない通路を、
ただ、ひたすらに。
ふと、翠先生が足を止める。
先はまだ見えるのに、休憩かな?
そんな事を考えていると、翠先生はおもむろにポケットから鍵のような物を取り出し、何かの呪文を唱える。
すると、鍵が空間に溶ると同時にめきめきと音を立てて目の前の空間が裂ける。
裂け目の中は、これまた混沌としていたが、怒号や、喧騒みたいな音が聞こえてくる事に僕は気づいた。
「翠先生、ここが・・・・・」
「あぁ、ここがシュルテントだ」
僕は翠先生にぐいっと引っ張られてシュルテントに飛び入った。
しばらくぶりの投稿。
失踪はしません。
完結はさせます。