「ぎじゅつしゃさん」
episode11
「ぎじゅつしゃさん」
「・・・・・・・・・・は?」
「・・・・・・・・・・え?」
花子さんの口は開いたままだった。
いや、僕の口も開いたままだったが。
場を包む静寂に耐えかねたのか
「い、いやいや、なんで真也なのよ、どういうこと?そもそも幽霊じゃないし。」
花子さんが翠先生に詰め寄り、説明を求める。
もっともな疑問だ。
幽霊じゃない僕に、幽霊の技術を使えるとは思えない。
翠先生は静かに説明を始めた。
「妖気も生気も紙一重だよ。使えない事はない。あと、僕のこの技術は繊細じゃないと使えな」
バシイッ!
「私が繊細じゃない、って言いたいの?」
花子さんが話をしていた翠先生を殴ってはじき飛ばす。
翠先生は風切り音と共に飛んでいき、壁にぶち当たり、埃が舞い散る。
「え、ちょ、花子さん!?」
「ん?あぁ、ちょっとムカついたからね」
ムカついたとかいう次元じゃないのは誰の目から見ても明らかだ。
恐らくどろどろの時よりも力を入れていただろう。
しかし
「あー、ごめんごめん花子。そういうわけじゃないんだ」
翠先生は壁から体を離し、すたすたと着ていたスーツのネクタイを直しながらこちらへと向かって来る。
僕はわなわなと体を震わせながら花子さんに聞く。
「ど、どういうことですか!?だだだだってどろどろの時より力入れてましたよね!?なんで無事なんですか!?」
花子さんは興奮する僕に
「先生がその技術とやらを使ったからじゃないの?」
と、バッサリ言い捨てた。
「こんな力を防げる技術・・・・・!?」
驚きを隠せない僕に翠先生が
「どう?僕の技術、覚えてみたいかい?」
と言ったのを
今でも僕は覚えている。