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少女は物心ついた頃から並はずれて聡明だった。
また、時に未来予知ともいえる能力を見せた。
それゆえ周囲からは変わり者扱いされ、使用人もどこか少女を避けるように振る舞っていた。
父親は事業で家を空けることが多く、
ただ一人、母親だけが少女をいつも傍において愛した。
少女も母親が大好きだった。
そんなある日、ふとした誤解から少女は「母さまなんて死んじゃえ!」と言ってしまう。
頭を撫でてくれようとする手も払いのけた。
母親はやさしい顔でほほえみ、夫の事業を助けるため財界人が集まるパーティーに出かけた。
直後、少女には未来が視えた。
避けようがない自動車事故のイメージ。
大破した車の窓から力なく垂れ下がる、あのやさしい人の白い手が見えた。
――はたして未来は現実のものとなった。
それまで娘の能力に半信半疑だった父親は、
肉親の死まで見通してしまう少女に戦慄した。
今まで以上に娘と距離を置くようになり、
代わりに休眠会社の経営権を一つ与えた。
これであり余る時間と才能を消費しろと言うのだ。
何かに没頭したかった少女はそれを受け入れ、
とてつもないスピードで会社を成長させた。
少女は今でも時おり未来が視える。
この異能はこれからも彼女を勝利者とするだろう。
この異能はこれからも彼女を縛り続けるのだろう。




