スリング
どんな身近なものだっていい。
片方の手に持って、投げる。
投げる。
投げる。
目標ははるか向こう。
届かない。
届かない。
どこまでも遠く。
届かない。
言葉を刻む。
一文字ずつ。
一文字ずつ。
爪がはがれても。
刻むのをやめない。
指先が削れても。
投げるのをやめない。
人の力なんて、たかが知れてる。
それでも、みんな、投げることをやめない。
ずっと、ずっと、投げ続けている。
ずっと、ずっと、投げつけている。
誰に対して。
何に対して。
もう、身近なものがなくなったとしても。
それでも、その血を投げつけている。
片方の手に結ばれたスリング。
赤く染まったスリング。
どこに続いているとも知らない布。
その布だけは、今まで投げた物を、数えていると信じて。
今日も、投げる。
どうしてこんなに、投げることにみんな興味を持つのかと。
ほら、ここだって、投げてるじゃないか。
目的と目標と理由を見失ったって、投げることは、とりあえずできる。