06 センチメンタル・ガイ
先日、呑み会をしているとき、東京へ出張中の友人Kさんからメールが来た。
Kさんは、例えば皆で旨いモンを食いに行ったときに急用で欠席したヤツがいたりすると、ほぼ確実に<絶品>等のメッセージを添えて写メを送りつけるという、なかなかのナイス害である。
どーせまたそのテのメールだと思った筆者は、「あ、Kさんからや」などとお気楽に開いたのだが……。
<ここで撮影したんだ。一人で暇だから来てしまった>
メールには夜の東京タワーの写真が添付されていた。
──なんだコレ?
なぜ標準語? なぜ東京タワー?
これが(今はもうないけど)フランク・ザッパのロウ人形とか寄生虫の写真だったなら分かる。どうとでもツッコめる。
しかしこんなメールに、どう対応しろとゆーのだ。
何があったんだKさん。
こんなモノはオンナに送れよKさん。
側頭葉でもカユいのかKさん!!
彼に比肩するナイス害と評判の筆者は、すかさずその場にいた友人たちにお披露目した。
すると隣に座っていた年中泥酔女(仮名)が言った。
「うわ、めっちゃ綺麗やなあ」
「いやいや、食いつきドコロが違うやろ」
「他のとこは触れたらあかん気がして。Kさん疲れてんのかなあ。ちゃんと返したりぃや」
「……おいおい」
そんな深刻な内容なのかコレ?
困った筆者は、ひとまず無難なコメントで返信。
当然の様にすぐさま返ってくるメール。
<タワー下に王将も串かつ屋もなかったけどな。あー新世界で呑みたい>
なんだ、そーゆー事か。やっぱりオチ(?)があるんじゃないか。
後に確認したことだが、二週間に渡る出張で東京の肴に飽きてしまい、何となく東京タワーに行ってみたら通天閣=新世界を思い出した、と、ただそれだけの話だったのである。
ちなみに関西在住ではない諸兄には新世界をご存知ない方も多かろうと思われるので説明すると――
新世界とは大阪の通天閣をほぼ中心にした繁華街であり、その昔は日本でも有数の怪しさ爆発&アホ・スポットであった。
特筆すべきは、今では町中にレプリカが安置されているものの、かつては通天閣の展望台に上らなければ拝むことができなかった神像、「ビリケンさん」である。
世にも奇っ怪な御姿を持つこの神像、布瑠部流に表現するならば「中年になって大人のいやらしさが笑顔に滲み出るようになってしまったキューピー人形」である。必見。
……などと、どーでもいー豆知識を披露しとる場合ではない。
懺悔します。
ごめんよKさん、実はぼくも、一瞬あなたの精神状態を疑っちゃったんだ。
そしてあなたはいま、仲間内で「悪ぶってるけど、実はちょっぴりおセンチなひと」と言われているんだ。
なぜって、それはぼくがオチの部分を誰にも見せてないからなんだぁ。
ごめんよぅKさん。
くけけ。