52 腐ったコーヒーを飲んだ
腐った缶コーヒーを飲んでしまった。
いきさつは以下の通り。
日曜日の午前、筆者はバジルのプランターの様子を見るために庭へ出た。手には頂き物のボトルコーヒー。好きな銘柄ではないので、ひと口飲んだだけでキャップをして作業開始。そのまま忘れて放置。
二日後に発見、何も考えずに冷蔵庫へ。
翌日、朝食のパンを食べながら、そいつを飲む。
不味い。昔、不味い喫茶店で注文したブラジル(コーヒーの種類)に似ている。
(※注 ブラジルが不味いのではなく、その店が悪い)
あれ、こんなに酸味が強かったっけ……などと呑気に構えたまま、口の中にパンがない状態で、もうひと口。
しゅわ、とでも表現しようか。
微炭酸的な発泡感があったような気がした。
頭に疑問符を浮かべて、もうひと口。
今度はじっくりと確認する。やはり、わずかだがピリピリした刺激がある。
これってもしかして?
而して、ことここに至り、ついに筆者は認識する。
「――こいつは、腐っている! うわーい、半分くらい飲んじゃったよ!」
とまあ、改めて文章に起こしてみると、かなり早い段階からツッコミ祭に突入していて、我ながらアホである。健康被害が心配だ。
しかしちょっと言い訳させて欲しい。
確かに筆者はえーかげんな性格をしているが、不味い喫茶店でそっくりな味のものを飲んだことがあるのだ。ゆえに、すぐには「アカン味」だと思えなかったのである。
それにしても、いま思えばあの不味い店。
どうやったらこんなに不味く淹れられるのかと疑問だったが、特にコーヒー好きが客層だというわけでもなさそうな店で、比較的マイナーなブラジルという豆、ということを考慮に入れると――、古くなって酸化した豆だったのかも知れない。
もちろん「酸化」と「(食品の)腐敗」は違う現象だが、味はとてもよく似ていた。
もしかすると今回筆者が飲んだのは、酸化しただけで腐ってはいなかったのではなかろうか?
というわけで、試しに我が家の戸棚の奥で二年間放置されていたコーヒー豆(未開封)を挽いて飲んでみた。
同じ味がした。
感想としては、嫌な酸味、これに尽きる。酸味と言うか本当に酸化しているのだから当たり前である。
しかし、だ。
味そのものは似たようなものだが、例の缶コーヒーを飲んだときのような発泡感はない。
ではやはり、アレは腐っていたのか……?
いやまて、そもそも本当に発泡感があったのか?
酸味のキツさゆえにそう感じたのではないか?
よし、ではただちに検証……は、さすがに今回ばかりはしたくない。
違和感を持ちながらも、そうと気付かずに傷んだオレンジジュースを飲んで、とんでもない下痢になった友人がいるからである。
食あたりこわい。
追記:その後どうなったかは言えません。




