44 今日から俺は女性ボーカル(後編)
筆者の声を女性化するにあたって、どのような紆余曲折を経たか、音楽用語を並べて説明してもつまらないのでカットして、最終的に辿り着いた結果だけを記そう。
機械的な操作はピッチ(音程)の変更のみで、あとは歌い手、つまり筆者の発声をコントロールすることで、かなり自然に聞こえるようになった。
大雑把に言えば、柔らかく歌えばよい。息も多目の方がいいだろう。高音部ではファルセット(いわゆる普通の裏声)も使う。もちろん微調整は必要。
被験者が筆者のみで、しかも歌下手なので確かなことは言えないが、こうすれば誰でもそれらしくなるのではないかと予想する。
恐らくミドルボイスを使える人なら、わりと簡単にできるのではなかろうか。
……と、ここまで書いて、(本当にいま)気付いた。要するに平井堅のマネをして、そこから調整すればいいのだ。
一番始めに思い付きを得た時点で、既に答えはそこにあったというのに、なんたる不覚。
ともあれ何とかなりそうなので、ついでにコーラスもつけて編集してみた。
曲は、森口博子の『ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~』。
どうしてこの曲を選んだかと言うと、とある悪友が好きだと言っていたから。
有り体に言えば嫌がらせのためである。
さて試作1号として完成したそれは、ちゃんとした音源として聴けるものではない。
歌唱力は棚に上げてしまうにしても、環境音は盛大に入っているし、各種ノイズもてんこ盛り、おまけにまだ研究途中かつ練習不足なので所どころ声質が変わっている。
しかし今後の参考にすることを前提とするなら、粗が目立つ方が試作品としては便利なのだ。
(※ あとがきにYouTubeのURLを添付)
というわけで筆者はさっそく、妻に聴いてみてもらった。
完全版を作ってから致命的なツッコミをされてしまうと目も当てられないし、何より他者の耳でも女性の声に聴こえるか、不安だったからである。
自己評価としては、そこいらのボイスチェンジャーよりも女性っぽいのだが、果たして。
「聞こえることは聞こえる」
よし! わははは、これで色々と遊べるぞ。例えば一人デュエットとか。
「でもボカロみたいだったりオカマっぽかったりする」
ぐぬ。でもまあ試作1号だし。今後の課題にしよう。
「そもそもこれ、何のためにやってんの?」
……た、例えば女性ボーカルの曲を作ったときに、元キーでデモ音源を渡せる、とか?(ちなみにもうずいぶん長いこと作曲なんてしていない)
「楽しい?」
た、楽しいぞ。面白がれなきゃやらんだろ、こんなこと!
「一人ぼっちでやってて、寂しくならない?」
ぐぬぬぬ……。
ボロッカスである。
というか、寂しいとか言わないでほしい。我に返って本当に寂しくなったらどうしてくれる。
しかし筆者は、まとわりつく哀愁を振り払い、あえて声を大にして宣言する。
今日から俺は女性ボーカル!
女性ボーカルったら女性ボーカルなの!
つまりこのエッセイは、オトナゲなく意地になった筆者の暴走、ただそれだけのモノなのであった。
vc試作02―エターナルウィンド
https://m.youtube.com/watch?v=NGhuDb6RJ9g




