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38 よみがえれ、お肌

 我が家の水回り付近の壁をちょいと破壊してしまったので、補修用ジェットセメントで修理した。


 ご存知の方も多かろうと思われるが、セメントというモノは、強アルカリ性だわ水と反応して高温を発するわで、大変危険である。

 具体的には素肌に直接触れると、皮膚が溶けたり火傷を負ったりするのである。


 もし読者諸兄が何かの機会で扱うことがあれば、必ず軍手をした上でコテなどの道具を用いるか、手でやるときはゴム手袋を装着していただきたい。


 で、ひとに注意しておいて何だが。

 筆者、素手でコネてしまいました。


 補修箇所がほんのちょっぴりなので五分もすれば終わりそうだったし、ゴム手袋を探すのが面倒だったからである。


 しかしいざ始めてみると、より完璧を求めたり、ついでにここも、ここもとやっているうちに、気づけば二十分ほど経過していた。素手で捏ねた手を洗いもせずに、である。


 作業終了後、これはちょっとヤバいかなー? と思いながら大量の水で念入りに洗い流したが、やはり手のひらに少しぬるぬるが残った。


 ――そう、我々はこのぬるぬるの正体を知っているッ!


 はい、冒頭で説明しましたね。

 ズバリ、溶けた皮膚である。


 まあやっちまったものはしょーがないと、それでも呑気に構えていた筆者だが、洗った手が乾いたときには、さすがにドン引いた。


 肌が、ぱりっぱりに乾いて、ぼろっっぼろになってて、文字通りぼろぼろぼろぼろ剥がれて、指紋が消えかかってて、ちょっとピリピリするのだ。


 セメントさん、噂に違わぬ仕事っぷりですね(嘘である。症状としてはかなりマシな部類に入る)。


 病院に行けと言う妻を宥めすかし、とりあえず大嫌いなハンドクリームを塗って誤魔化した。


 それから二日、三日。


 自然治癒力で治るだろうと思っていたが、全く治る気配すら見えない。

 マズい。一週間経っても治らなければ病院に行く約束だ。やだやだやだ、面倒くさい!


「うーん、治らんなー」、困った顔で言うと、

「化粧水でも塗ってみる?」と妻。


 飲み、塗りに関わらず薬嫌いの筆者だが、これならまあよろしかろうと、風呂上がりに振りかけてもらう。


「しっかりすり込みなさい」

「はい」

「ついでやから美容クリームも塗っとこ。けっこうええやつやで」

「これ、ぬるぬるする。気持ち悪い」

「しっかりすり込みなさい。病院行かすで」

「はい。ごめんなさい」

「最後にハンドクリームも塗っとき」

「……はい」


 というわけで己れの浅はかさを悔やみつつ、次の日の朝。

 ちょっとでもマシになってたらラッキー、くらいに思っていた筆者は度肝を抜かれた。


 びっくりするくらい良くなってました。

 そしてさらに次の日には完治しました。


「うわあ、治ったでオイ。なにこの威力。世の中の女の人は、毎日こんなもん塗りたくってんのか」


 筆者は感動のあまり、思わず一部不適切な表現を含んだ感想と、わざわざ言わなくていい豆知識を披露した。


 ……何と言ったかはまあいいとして、代わりにふと頭をよぎったコピーを披露して、今回のシメにしようと思う。


「お肌の曲がり角を強行突破! 私は、曲がりません」


 化粧品メーカー各社様、どうですか?

 一行百万円でお売りしますよ。

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