36 さよならリンドバーグ(後編)
というわけで、さっそく工作用電池モーターを買ってきた。
そして筆者は自らの甘さを痛感する。
重いのだ。
モーターはともかく、電池(単3)が。
これではよほどの速度を出さなければ、滞空できないのではないかと思われた。
竹ひご飛行機電動化計画、いきなり頓挫!
……とはならない。させない!
半ば意地になっているので、機体そのものの大改造計画を敢行する。
具体的には各パーツを薄く削り、主翼を長大化し、合わせてモーターと電池の重さを加味した機体重量バランスを取るための主翼位置の調整、出力が犠牲になるが軽量化のため単三電池を単四電池に変更、などである。
仕上げに何かのオマケについていた、擬人化された動物キャラのシールをモーターに貼り付けた。
シールの彼にはリンドバーグと名付けた。
(※チャールズ・リンドバーグ:世界初の大西洋単独無着陸飛行に成功した、偉大なる冒険者)
これで細工は流流、仕上げを御覧じろ。いざ出陣!
……の直前になって、気付いた。
もし上手く飛ばせることが出来たら、それはそれである意味制御不能なわけで、かなり広い場所で飛ばすにしても、車道に飛び出したりしたらヤバくないか、これ?
なので、急遽タコ糸をつないだ。
何だかな、という感じだが仕方あるまい。
そして運命の時。
初速と高度を稼ぐために、ランディングギアを流用したフックでゆるくゴムカタパルトを使用し、発進!
飛びました。
やったぜリンドバーグ君!
「飛んだでオイ、すげえ!」
大興奮しながら眺めていると、我らがリンドバーグ君の遥か上空を、小型のラジコンヘリコプターがぷろぷろと通過していった。
我々の視線はラジコンヘリに釘付けになった。
「うお。何やあれ! ラジコンヘリってめっさ難しいんちゃうん。最近はあんなん売ってんのか!」
などと騒いでいるうちに、リンドバーグ君はいつの間にか墜落していた。
どうやらタコ糸が風にあおられて、その重みに耐えきれなくなったらしい。
「……なんか、ものすご負けた気分やな」
「そうやな。よし、もっかい飛ばそう。今度はカタパルト全力で」
この飛行機は、ゴムカタパルトのような強力な加速を想定していないが、しかしあんなものを見せられては、対抗しないわけにはいかぬではないか。
行け、リンドバーグ君!
お前の真価を見せてみろ!
仰角30度、ゴムカタパルト全力射出!
空中分解しました。
やはり剛性が足りなかったらしく、射出と同時に主翼が折れて、切りもみながら機首から地面に激突、大破しました。
…………。
えーと……。
さよならリンドバーグ君。
爆笑してごめんよ。
君にはマンテル大尉の諡を捧げよう。
(※マンテル大尉:UFOを追跡中に墜落しちゃった米国の戦闘機乗り)
追記:後日、なんとなくネットで竹ひご飛行機を検索してみたら、なんとゴム動力のまま、あるいは電動化したもの共に、さらにラジオコントロール化している人がたくさんいた。
ものすご負けた気分、いや完全に負けである。
上には上がいるものだ。




