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30 修行が足りん!

 去年の梅雨明け頃、お伊勢詣りに行ってきた。

 夫婦共に、生まれて初めてのお伊勢さんである。


 ちなみに筆者は(色んな)宗教好きだが信心はカケラもなく、妻はけっこう縁起を担ぐタイプである。

 平成二十五年の伊勢神宮といえば、式年遷宮に行ってきたのかと思われるかも知れないが、違う。


 神事は好きだが人混みは嫌いなので式典のある秋を避け、ついでに伊勢志摩のテーマパーク「パルケ・エスパーニャ」でも混雑を避けるべく選んだタイミングであった。


 さて旅と言えば、食(と酒)。


 そして伊勢と言えば伊勢エビ──だが、アレは冬のモノなので、今回の狙いはアワビである。

 ちょっぴり旬より早いが、ホテルのディナーに黒アワビが出るのだ。


 人生初の黒アワビ!

 別に松阪牛とかでも良かったのだが、それは外の店でいくらでも食えるし、何より筆者は分かりやすい脂の美味しさよりも、海のものの繊細な旨さが好きなのだ。


 ちなみに値段はお一人様一万五千円くらいだったか(よく覚えていない)。

 メシ一回が三万円とかアホやろ爆ぜろ!

 と思ったが、なにしろ人生初で、そして恐らく人生最後の黒アワビである。


 で、その黒アワビコース、和と洋どちらかを選択するようになっていて、いつもなら迷わず和食と言うところだが、せっかくなので洋食(スペイン料理)の方を選んでみた。


 さてどんな感じで出てくるのか……と思ったら、テーブルにナイフやフォークがズラリと並ぶパターンのやつでした。


 なので、当然出される料理も「ナントカ魚とぽんぽこぴーのぺろぺろぷー、へもへもソース掛け、アッチョンブリケを添えて」とか「仔牛のアレをナニしたソレ」みたいな名前のモノばかりで、はっきり言って説明された一分後には完璧に忘却の彼方。


「美味しいけど……そんな大騒ぎするほどでもないよな。ところでこれって何の肉だっけ」

「忘れた」


 などとコソコソと言い合う残念夫婦。

 庶民である。


 そんなこんなで食事は進み、いよいよ大ボスの黒アワビ登場。

 例によって色々と説明されたが、早い話がステーキだった。

 食べてみる。


「…………???」

 不思議そうな顔をする筆者を見て、妻が「美味しくなかった?」と聞いてきた。

「いや、旨いんなぁ旨いけど……これ、肝のソースの旨味やな。ちょっと待って、アワビだけ食ってみる」


 ……………………おお。

「どう?」

「うん、分からん。……ぜんっぜん、分からん! 本体の味はどこ行った? お前分かる?」


「歯応えがいいのは分かる」

「いやそれも大事な要素やけど! 本体の味は?」


「よく分からん」

「ですよね。なにこれ。え、こーゆーもんなの? ブルジョアどもはこの下味とかソースを掻い潜って本体の味を探り当ててんの?」


「うん、たぶん。修行が足らない私たちには早かったね」

「ンな馬鹿高い金出して修行なんかできるかあ! しまった、やっぱり和食にしとけば良かった! 刺身が食いてえええ!」


 などと後悔しても後の祭。

 メシ一回に馬鹿高い金を出して、しかも味が分からないアホがそこにいた。


 ちなみにこの旅行中で一番旨いと思ったのは、次の日に食べたリーズナブルな牛丼(松阪牛の端切れを使用)である。


 ええ、分かりやすい脂の旨味が素敵でしたよ。

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