28 あのひとは、いま──(前編)
もう十五年も前のこと。
当時、筆者にはとても面白い友人がいた。
ヤツの名は徐々子(仮名)。
彼女の何が面白いかというと、とある特殊な思想を掲げる団体に所属していて、その影響で発言や行動がぶっ飛んでいたのだ。
一言で言えばトンデモさんである。
なおその団体の詳細な情報はここでは伏せるが、筆者はその団体の本を持っており、それによると著者(主宰?)は当時「高知大学理学部自然環境科学教室教授」であったことだけは記しておこう。
さて。ではまず件の彼女──徐々子(仮)自身について。
出身地は秋田県。ただし魂はシリウス産で、しかも古代ムー帝国の末裔。
シリウスでムー帝国ってアンタ……などと突っ込んではいけない。この程度でイチイチ突っ込んでいると身が持たない。
ここからがスゴイ。
特技①、十数ヶ星の言語を自在に操ることができる。
彼女に「宇宙語による講習を録音した音源」を聞かせて貰ったことがあるが、ノイズかデス・メタルのごときシロモノで、筆者にはそれが言語であることすら分からなかった。
彼女がそれを聞きながら時おり「うんうん」とか「ブチ殺ス」と呟く姿は恐怖以外の何物でもない。ちなみに宇宙公用語はないらしい。
特技②、UFO召喚。
喚べばいつでもやって来る。というか、わざわざ喚ばんでもそこら中にうようよいるらしい。うようよである。わっさわさである。
ただしそれは三次元の存在ではなく、人類の持つ観測技術では捉えることができず、視える人にしか視えないらしい。
徐々子によれば筆者にも視える素質があるらしいが……うーむ、視えると面白いのに。残念。
特技③、霊視。
上と被るが、UFOの他にも土地神とか生霊とかが視えるらしい。
特技④、エクトプラズムだか生霊飛ばし。
飛ばしてどーするか? 戦うのである。
では何と戦うのか──は後編に譲るとして、「ん、これって……?」と思った人の為に敢えて言おう。
彼女のそれは、掟やぶりの「遠距離パワー型」である。
特技⑤、呪殺。
おいおい……。
それとブチ殺ス(ちなみにアクセントは“ブ”にある。つまり“縁”と同じイントネーション)って連呼するのはやめれ。怖いから。
そんな徐々子なので、例えば筆者は常時八コの霊を背負っているとか、朝から犬の生霊と戦ってきたとか、
シャレにならん高齢のじーちゃんに「三ヶ月以内に死ぬ」と言ったりとか
(ちなみにそのじーちゃんも彼女の性質を知っていたので、呵呵と笑って「あんたがわしを呪い殺すんとちゃうやろな」と言っていた。さすがだ)、
面白いエピソードに事欠かない。
後編では、その中からいくつか紹介しようと思う。
というわけで、震えて待て、次回!




