26 音に聞こえし、その名も高き
とあるハンバーグ屋さんで友人たちと話していたときのこと。
アニメ「キテレツ大百科」における、ドラえもんでいう静ちゃんポジションの女の子の名前は何か、が話題になったことがあります。
どれだけ頑張っても誰も思い出せず、困った友人の一人が、何を思ったかウェイトレスの女の子をつかまえて質問しました。
「お前、誰に聞いてんねん!」
残りの連中が非難するなか、それでも女の子は真面目に考えてくれましたがやはり思い出せず、「仕事中にごめんね」といって解放しました。
数分後いよいよ手詰まりになった我々が、悔しいが検索しようかと相談していたら、先程の彼女が小走りに駆けてきて、嬉しそうに言いました。
「分かりました、みよちゃんです!」
盛り上がる一堂。
「うわー! そうや、みよちゃんや! もしかして調べてくれたん?」
「はい、なんか私も気になって仕方ないので、あちこち聞いて回ったら、キッチンの○○さんって先輩が覚えてました」
いや先輩の名前まで挙げんでも。
「そうかあ。その先輩にもお礼言うといて。ありがとうね」
「いえ、私が聞いて回ったせいでみんな気になっちゃって、仕事にならへんところでしたから。嬉しくなってこっちにも来てしまいました。それじゃ私、戻りますね」
「うん、ほんまにありがとう。仕事頑張ってねー!」
「はーい!」
こうして我々は、空腹を満たすだけでは得られない大きな満足感をもって、店を後にしました。
そしてこの日、とある大手ハンバーグチェーン店は、少なくとも四人のヘビーユーザーを獲得しましたとさ。
非常識でごめんね、ありがとう。




