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16 大きくなれよ ──明日をイーグル・グリップ

珍しく真面目な話です

 早いもので、今年もツバメが舞う季節となりました。

 今回はツバメにまつわる数年前の体験談です。



 友人とさびれた裏道を歩いていると、ツバメのヒナの死骸が落ちていた。

 確か一時間前までは、なかったハズだ。見上げると、潰れた(?)店の軒に巣があった。高さは五メートルといったところか。


 その時、筆者は何を考えたか?


「このまま放っておけば、遠からず何かに喰われるか車に轢き潰されるだろうから、どこか土のあるところで埋葬してやろう」


 ……などとは思わない。似たよーな状況で思ったこともない。間違っても思わない。

 思わないが、なぜかその時は間違ってしまった。


 そっと拾い上げ、……筆者は少し後悔した。

 ピクリとも動かなかったヒナが、元気に暴れだしたのである。


 羽や脚に異常がないことを確認しながら、筆者は改めて「さあ、厄介な事になった」と思った。


 何が厄介って、小っちゃくて熱いカタマリが必死にバタバタもがいて、何を勘違いしたかぴーぴー鳴いてエサを要求なんかされた日にゃ、あんた。


 思いっきり情が移って、なんとしても巣に戻してやらねばナラヌ、とゆー気分になってしまうではないか。


「ぬおおお、ヒナぁっ! わしが、わしが必ず巣に帰してやるからなああっ。命を、明日を、お前のその手でイーグル・グリップ(ワシ掴み)するのだッ!」


 悲壮感すら漂わせて上を見る。

 目指す巣は、はるか五メートルの彼方だ。なんでこんな高いトコに屋根がついてんだこの店は?


 さてどーしたものか。そして僕は途方にくれる……。



 と、盛り上げておいてアッサリと顛末を語ってしまうと、四苦八苦しながらも何とか巣に帰す事ができたのだが。


 ただ、五メートルの高さから落ちたのにどうして怪我がなかったのかとか、ホントに怪我がなかったのかとか、素手で触って人の匂いをつけてしまってよかったのかとか、いくつかの疑問や不思議さは残った。


 なにより、普段なら絶対にしない事をたまたまやったら、なんだか一つの命を救えてしまったという偶然が、とても不思議だ。



 運命なんて言葉はキライだが、良し悪しに関わらず、運の強いヤツってのは確かに存在する。


 しかし問題とすべきは、巡ってきたツキをいかに活かす事ができるか、なのだ。



 このヒナも、生きてはいても元気に暴れずに瀕死だと誤解されていれば、あっけなくその短い生涯を終えていただろう。


 その点、きっとこのヒナはビッグなヤツになるぞう。

 それはもう、軽く十メートルは越えるに違いない。

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